ともにすすむ
広告
紹介が遅れてしまいましたが、10月26日に東京で「朝鮮学園を支える全国ネットワーク」の2017年総会が行われました。日本各地にある、朝鮮学校を支援する市民たちの団体を網羅した全国ネットが結成されたのは2012年です。
開会のあいさつをした藤本泰成事務局長は、「遠い道のりかもしれないが、草の根から行動を起こしていくしかない。社会の底辺から議論を積み上げ、大きな世論にしていこう」と、全国ネットの意義について呼びかけました。
総会には、韓国の市民団体「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」から孫美姫共同代表も参加。「私たちの同胞を守って下さり、また子どもたちといつも一緒にいて下さり、ありがとうございます。これからもっと強く連帯していきましょう!」と胸の熱くなる呼びかけをしていました。
その後、田中宏・一橋大学名誉教授が「子どもたちに民族教育の権利を―朝鮮学校の歴史性を直視せよ」と題して基調講演を、在日本朝鮮人人権協会の朴金優綺さんが活動報告をしました。
人権協会は、国内外の制度や法律を活用して在日同胞の権利と生活をサポートしている団体です。朴金優綺さんは去る10月のはじめ、国連のUPRというシステムを活用するためジュネーブへ向かいました。UPRとは「Universal Periodic Review(普遍的定期審査)」というもので、日本ではまだほとんど知られていないシステムだそう。
▼5年ごとに開かれ、▼国連加盟国すべての人権状況を審査できる、▼3つの文書を基礎に審査、▼審査対象国は他の国々から勧告を受ける、▼審査対象国は勧告を受け入れるか、留保するかを決める、▼受け入れた勧告は次回の審査までに履行せねばならない―というのが概要です。今年が第3回目の開催です。
UPRの特徴は、条約機関(人種差別撤廃委員会など)による審査と違い、国連に加盟しているすべての国が審査対象になること(条約機関の審査の場合、その条約の締約国のみが審査対象となる)。そして審査も、個人の専門家ではなく国家が互いに行い、勧告を出すことができます。
しかし、だからといって条約機関の審査と完全に無関係な訳ではなく、各条約機関から過去に出された勧告などがUPRの審査における基礎情報になります。人権協会はこれまで人種差別撤廃委員会や社会権規約委員会から、朝鮮学校の高校無償化や補助金の問題を改善するよう日本政府に求める勧告を引き出してきました。それをさらに活かすため、UPRというシステムを利用してみようと思ったそうです。
実はいま、まさにUPRの各国審査が行われています(10月に行われたのは事前セッション)。明日はついに日本審査があり、16日には審査報告書が採択されます。英語のページですが、以下でUPRについて詳しく知ることができます。興味のある方はチェックしてみて下さい。
●UPR→https://www.upr-info.org/en/webcast
朴金優綺さんの報告を聞いて、運動を積み重ね次につなげていくことの大切さを強く感じました。
その後、広島、東京、愛知、福岡から裁判支援の報告が、茨城、千葉、長野、山口、兵庫、埼玉などからはこの間の活動報告がなされました。その
地域ごとに根付いた取り組み、経験、携わっている人々の気持ちを知ることのできる内容で、学ぶこと、感じることがたくさんありました。
特に印象的だったのは、山口県から参加した中井淳さんによる報告。山口では、韓国の市民団体「モンダンヨンピル」を招待してチャリティコンサートを開催しました。ここでは日本の方々が主力となって実行委員会を組み、行事を成功に導きました。中井さんは、この経験が「自分たち日本人と在日朝鮮人の人たちの関係性を変える起爆剤になった」と話していました。「それまで日本人は、どこか外側で支援している感じだった。でもコンサートを機に『ともに何かを作っていく』関係になった」。
中井さんは、コンサートの後日談も紹介してくれました。モンダンヨンピルが韓国に帰ったあと、山口朝鮮初中級学校に子どもを送る一人の保護者から手紙をもらいました。そこには「モンダンヨンピルは帰っちゃうけど、日本の皆さんがいるから寂しくない」と書かれていたそうです。
私もこれまで取材などを通してたくさんの日本の方々にお会いしてきましたが、本当にその通りだと改めて気づかされました。
私たちは在日朝鮮人を取り巻くさまざまな運動に携わっている日本の方々に、いつも「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えます。すると皆さん「自分たち日本人の問題だから」と異口同音に答えます。
また、私たちは言いなれたままつい「支援者」という呼び方もしてしまいます。もちろん、物心両面で朝鮮学校を支援して下さっているのは事実ですが、気持ちの面ではすでに、ともに進んでいる同行者、友人なんだと、励ましと安心感を得ることができました。(理)