「埼玉やきとり物語」、1月28日に上演
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2018年が明けました。読者の皆さん、クヮセアンニョンハシムニカ!
今年、イオは創刊22年目、現在260号目を作成です。初出勤日ですが、2月号の完成に向けて7人の編集部員が執筆、デザインに追われています。
新年、読者の皆さんはどんな願いを掛けられましたか?
私は祖父の墓参り、義家の祭祀、そして、3日の夜には満天の星を見ることができ、翌日はウグイスのつがいにも遭遇。今年は何かいいことがたくさん起きるような気がしています。
さて、新年初の日刊イオでは、総勢130人の同胞たちが出演するビックイベント! 1月28日に行われるミュージカル「埼玉やきとり物語」(同実行委員会主催、埼玉ハッキョチャリティー公演)をご紹介したいと思います。
街にネオンが煌くクリスマスイブの17年12月24日。埼玉朝鮮初中級学校(さいたま市)は、朝10時から演技に朝鮮舞踊、歌、楽器の練習に打ち込む人々の熱気にあふれていました。差し入れを持って練習を応援する人たち、出演者の赤ちゃんを子守りする人たちのまなざしが温かく、会場は一体感にあふれていました。
本番まで1ヵ月を切った年末の練習は、予定時間を1時半過ぎて終了。楽団でサックスを吹いていた実行委員長の朱弘文さん(63)は、「私たちの前に立ちはだかる壁を突き破り、希望をつかんでみせる―。舞台では、埼玉同胞たちが秘めるこの『強い意思』を伝えたい」と静かに語ってくれました。
「埼玉やきとり物語」は、焼鳥屋を営みながら、一人娘を育てあげたある女性の物語です。
舞台は1997年。焼鳥屋に嫁いだポンスンは、娘が5歳の時に夫を亡くして以来、店の切り盛りと子育てを一人で担うことに。「東松山の焼鳥」といえば、カシラと呼ばれる豚の頬とこめかみを串に刺した名物。当時カシラ肉は、ホルモンと同様に食肉として使われていなかったものの、なんと、新鮮なカシラ肉を手に入れ、商売を始めた1世がいたのです。トウガラシ、ニンニクを使った「秘伝のタレ」を習いにくる日本人も広く受け入れ、働き続けた1世。原案・作詞は金正守さん、脚本・演出に文玉仙さん。「埼玉」を舞台に在日の100年史が繰り広げられます。
主人公ポンスン役を演じる廉民華さん(51)の歌声に引き込まれます。
金剛山歌劇団で民謡歌手として活躍し、この舞台のために朝鮮でボイストレーニングも積んだとのこと。ポンスンは、娘ヨンフィを家から1間半以上離れた民族学校に通わせることにしましたが、ある日起きた「事故」を前に、気持ちが揺れ動きます。
埼玉では2006年から愛好家たちが集う「オルサ」が2~3年に一度のペースでコンサートを開いてきました。今回の舞台もその延長線上にあり、コンサートとは違う「何か」をしたいという思いが結実したとのこと。一日の仕事を終えた後に、集い、ひとつの舞台を作り上げていく出演者たちの胸には、この舞台を通じて、「埼玉の地域社会を元気づけたい」という思いがあふれていました。
出演者が元プロから愛好家と、幅広い層であることにも驚きました。
俳優として出演する鄭蓮姫さん(70)は女性で最高齢。「日本の高校を卒業し、ウリマルに自信があるわけでもない。けれど、一生懸命に練習しています。なぜなら、日本社会で自分のルーツを明かせずに暮らす同胞たちを元気づけたいから。私たちが歩んできた道が間違っていなかったことを伝えたい」と笑顔で話してくれました。
構想から2年。ミュージカルソングは全15曲で、すべてオリジナルです。練習を積む中で、作曲者の一人・金慶和さん(金剛山歌劇団)が亡くなる悲しい出来事もありました。金さんの同級生で事務局長を務める黄鎭成さんは、同級生との別れに涙しながら、この舞台を必ず成功させたいと話してくれました。
舞台を通じて、トンポたちに元気を―。出演者の切実な思いが印象的でした。
1月28日の日曜日は埼玉に集合です!(瑛)
●同胞歌劇「埼玉やきとり物語」
日時:2018年1月 28日(日) 15時半~(15時開場)
場所: 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(JR「与野本町」駅徒歩9分)
チケット:3000円(当日券3500円)
問合せ:℡ 048-822-5111(実行委員会)
※舞台は朝鮮語で上演されますが、日本語の字幕がつきます。