横浜で朝鮮学校ツアー開催!
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2月10日(土)、神奈川朝鮮中高級学校と横浜朝鮮初級学校(ともに横浜市神奈川区)を一般開放して「かながわの朝鮮学校ツアー マンナミョ ペウミョ トブロ in YOKOHAMA」が行われ、近隣住民や一般市民など約230人が参加しました。
同ツアーは、マンナミョ ペウミョ トブロ(만나며 배우며 더불어)=「出会う、学ぶ、ともに」を合言葉に、去年初めて開催されたイベントです。第1回目の会場は南武朝鮮初級学校(川崎市高津区)でした。
当日10時。神奈川中高を訪れると、すでにたくさんの人が受付を済ませて授業参観をしていました。国語、日本語、算数、理科、音楽、社会、英語…。参加者は自由に校内を行き来しながら、児童・生徒たちが学ぶようすを楽しそうに眺めていました。
中級部1年生の日本語の授業にお邪魔すると、生徒たちがなにやら発表していました。6つのグループに分かれて、神奈川中高の学校案内パンフレット作りをしたそうです。それぞれ、「学校の歴史」「学校生活」「授業の内容」「クラブ活動」「学校行事」「差別問題と日本市民との交流」をテーマに調査とまとめをし、特色あるパンフレットを作っていました。
発表の準備を通して、自分たちが通う学校をよりよく知り、大切に思う気持ちを持つことができたという中1の生徒たち。同時に、初めて同校を訪れたツアー参加者にとっても素敵なアピールになりました。
授業が終わって、参加者たちは体育館へ。ツアーのメインプログラムが始まりました。
まず共同代表の関田寛雄さんと神奈川中高の金燦旭校長があいさつし、続いて佐野通夫さんが講演を行いました。
講演に先立って佐野さんが取り出したのは、「兄弟国 朝鮮」という手づくりの紙芝居。朝鮮と日本の関係を、戦前・戦後の歴史を解説しながら分かりやすく伝える作品でした。これは岐阜県の小坂小学校で教員をしていた二村さんという方が1975年に作ったものだそう。
佐野さんが紙芝居を入手したきっかけは、旺文社が主催する全国学芸コンクールで賞をもらった一編の詩でした。
素朴な言葉だけで紡がれた詩。作者の純粋な気持ちが伝わってきます。佐野さんはこの詩に感動して、「よろこびの声」に名前が出ていた二村先生宛てに手紙を書いたそうです。するとお返事の手紙と一緒に送られてきたのが先ほどの紙芝居。とても素敵な先生だったのだなと察します。
紙芝居の紹介のあと、佐野さんは植民地の歴史から始まり、今に連なる在日朝鮮人の歴史を易しく説明されていました。
講演が終わると、高校生によるリレートーク「私たちが私らしく生きるために」が始まりました。朝鮮学校の高級部生と日本の高校生が2人ずつ登壇し、司会の質問に答えながら自身の経験を交えながら意見をのべていました。
「小さい頃から朝鮮学校のことを知っていたので悪いイメージはなかったが、友達と話していて、多くの人は悪い印象を持っていることに驚いた。なんで日本で生まれ育っているのに朝鮮人というだけで差別を受けるのか。文化の違い、他者との違いを理解しようとする姿勢が重要だと思った」(日本の高校1年生)
「生活の中で自分が直接他人から差別を受けたことはあまりなくて、悪い意味で差別慣れしていた。和光高校と1年間の交流をしてみて、『最初は、朝鮮学校と聞いただけで嫌な気持ちになった』という人もいて、初めて悲しい気持ちになった。日本社会の中で自分の学校名を明かすことが言いづらくなったこともあったが、理解を広めるためにも今後はアピールしていきたい」(神奈川中高2年生)
「私の高校には制服がなく、服装も髪の色も自由だが、見た目だけで批判的なことを言われたりすることがある。差別というのは相手を知らないから起きるものだと思う。勝手なイメージや、身の回りの他の物とは違うという意識から生まれるものではないか。そこに日本人の集団意識も絡んでいる。相手を知ろうとすること、そして自分のことを知ってもらおうとする行動が大切だと思う」(日本の高校3年生)
「高校無償化からの排除や補助金の停止といった国からの差別を受けて、実践的に外に出て活動することが増えた。署名運動や『金曜行動』(高校無償化適用のため、毎週金曜日に文科省前で行われているアピール)に参加している。自分たちが自分らしく生きていくためには、まず自分が一生懸命動くことが大切だと思う」(神奈川中高2年生)
気持ちが明るくなるような、希望を感じられる内容でした。「他者を知る、相手を知る、知らなかったことを知っていく、一歩でもいいから行動することの大切さを学んだような気がします。ここにいる子どもたちや在日朝鮮人だけではなく、私たちみなが問われていることだと思います」という司会の呼びかけに、会場からは拍手が送られました。
また、佐野通夫さんは「先ほど朴勇大さんが『まず自分(在日朝鮮人)が行動しないと』と言ったが、日本人がもっと真っ当になればやらなくてもいいことを在日の人たちがやっているということをもっと考えるべき。現代の朝鮮人に対する差別は非常に観念的。マスコミが植えつけていることを聞くだけで知ったような気になって、実際に会ってもいないのに嫌悪感を持つ。すごく怖いこと。もっとたくさんの人が朝鮮学校とそこで学ぶ子どもたちに出会ってほしい」と、さらに力強く語りました。
「今の日本社会に蔓延している在日朝鮮人への差別意識は観念的なもの」という言葉にはハッとさせられ、同時に深く頷きました。
昼食の時間は、学校のオモニ会がスープを作って参加者にふるまいました。他にも教科書の展示や朝鮮の民族打楽器体験など、朝鮮学校や朝鮮民族の文化を紹介するブースも設けられ、参加者は興味津々なようすでした。
児童・生徒による歓迎公演もあり、客席からは「わぁ」「きれいだねえ」と、感動の声が漏れていました。
最後に、参加者らがグループごとに輪になり、この日のツアーを通して感じたことを共有する懇談会が開かれました。
朝鮮学校の教員や学校をよく知る支援者、朝鮮学校の生徒、日本の高校生、そして一般市民たちもごちゃ混ぜになり、自然とさまざまなテーマで話し合いが広がっていきました。差別のこと、在日朝鮮人のこと、朝鮮学校のこと、ヘイトスピーチのこと、日本社会のこと、韓国に留学したことのある日本人が自身の経験を話したり、初めて朝鮮学校に来た人が率直な感想を話したり…。
「今まで『朝鮮』という言葉になぜか分からないけれど抵抗感があった。韓国という言葉にはそんなことないのに。なんでだろう、その理由を知りたくて、勉強しようと思ってここに来た。実際に来てみて、朝鮮高校生たちが修学旅行で行った平壌の写真なども見ることができて、『平壌に入れるの!?』っていう質問もしたり、とても面白かった。今では朝鮮への抵抗も全然なくなった。今までは遠かったのかな、でも今は近づいたのかな、もっと知りたいと思った」
「この前、朝鮮学校の美術部展に行くことがあったんですが、生徒たちが常に作品の横にいてプレゼンしてくれるのがすごく良かった。作品を通して真実を語っていて、どうしてこうも自分をしっかりと表現できるのかな?と感動した。子どもがあんなに自主的になれるなんて。どういう教育をしたらこんな子たちが育つんだろうと感じました」
「人と出会って、そこで自分が感じたもの以上に疑いようのないものはない。来年、ここに自分だけじゃなく他の人も連れてきて、出会いを広げていくことが大事だ」
「自分が高校生の頃にこういう交流があればいいのに、と羨ましくなった」
―老若男女問わずみなが目線を合わせてお互いのことを話す、とても柔らかい空間でした。
神奈川中高の金燦旭校長は、このツアーを実施する目的について「朝鮮学校について知ってもらうというのはもちろん、なによりも楽しんでほしいという気持ちがあった。朝鮮学校の楽しい日常を味わって帰ってほしい。そうすればもっと知りたいと思うだろうし、実際に人と出会うことで、テレビで朝鮮に対する一面的なニュースをやっていても、ちょっと違った視点で見ることができるはず。なにかの行動につながるかもしれない」と話していました。
市民たちが出会う場、それもゆっくりと言葉を交わせる場というのは今まであまり無かったのではないでしょうか。いろいろな可能性が芽生えそうな、素敵な試みだと思いました。ツアーは今年で2回目を迎えましたが、来年以降も続けて、県内の全ての朝鮮学校をまわる予定とのこと。きっと、もっと多くの人が参加してくれることでしょう。
今回のツアーの内容はイオ4月号でも紹介します。(理)