「補助金不支給、悔しい」ー神奈川朝高・高3、1811筆の署名、提出
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神奈川朝鮮中高級学校を3月4日に卒業する高3生徒32人が2月26日、横浜市の県庁を訪ね、昨年11月から10回にかけて街頭で集めてきた署名1811筆を、黒岩祐治・神奈川県知事宛てに提出し、学費補助の支給再開を訴えた。
応対した私学振興課の副課長は、「神奈川朝鮮学園が教科書内容を改訂するまでには支給しない」の一点ばり。学費補助の目的(別項参照)に基づいた説明はなく、朝鮮学校側に責任があるといわんばかりの対応に生徒たちの胸には失望が広がった。
生徒代表は、「3年間訴えてきたが、学費補助が再開されず、悔しく思っている。後輩たちに一日も早く補助が適用されるよう、知事にも伝えてほしい」と署名を手渡した。
この訴えに対し、私学振興課の副課長は、「朝鮮学校の補助金を巡っては賛否両方の意見が寄せられている。議会では学園側が改訂を実現するまでは支給しないというのが大多数の意見。教科書改訂については日本学校では4年に一度、改訂する。15年間も改訂しないことは日本の学校にはないこと」「県としては、差別していると思っていない。皆さんの後輩たちのためにも、できるだけ早く教科書を改訂していただきたい。改訂すれば支給する」と不支給の責任を学園側に転嫁した。
神奈川県では、14年度に外国人学校への財政支援が「学校への経常費補助」から「保護者への補助」に替わり14、15年度には朝鮮学校保護者にも支給された。
しかし外国人学校保護者に平等に支給されるはずの学費補助が、朝鮮学校に関しては、拉致問題を教えることや「教科書改訂」を条件に、16年度から打ち切りとなった。
そもそも各学校の教育内容は当事者が決めることであり、各種学校認可を受けている外国人学校の場合、監督権限を持つ都道府県にすら、教育内容の変更を促す権限はない。
さらに言えば、神奈川朝鮮学園に教科書改訂の権限はない。学園に改訂を求めること自体が理不尽なのだ。
最後列に座っていたソク・スウォンさん(高3)は質問した。
「基本的人権の中には教育を受ける権利もある。お金が工面できず転校した生徒もいた。お金を持っていなければ教育を受けることができない人たちがいて、格差が生まれている。これは差別。県庁の皆さんは、実質的に弱者になっている僕たちについて、弱者という認識はありますか?」
生徒たちが提出した署名は「朝鮮学校に通う子どもたちへの『学費補助』を求める県民会議」が集めた1万8449筆の署名に含め、提出された。
同席した県民会議の高梨晃嘉さん(70)は、「行政は権力。権力行使は公平公正でなければならない。高校の教科書を巡って、それがなぜ小中学校の保護者への補助を止めるまでに波及するのかと聞いているが、県から返事はない」と理不尽な現状を訴えた。
今年1月17日には、県下の朝鮮学校保護者ら118人が、憲法や教育基本法、国際人権諸条約が禁じる差別によって民族教育を受ける権利が侵害されているとして、神奈川県弁護士会に人権救済申し立てを行った。(瑛)
※2014年から始まった外国人学校生徒等支援事業の目的は以下の通り(神奈川県県民局次世代育成部私学振興課)
①外国籍県民の多くが学ぶ外国人学校は、学校教育法第134条に基づく認可を受け、各種学校のひとつとしてその存立を認められている。そこでは、母国・民族の文化、言語、歴史などの教育が実施されている。
②しかし、国際情勢・政治情勢の不安定さが、母国・民族との関連を想起させ、子ども達の教育の機会に影響を与えかねない。外国人学校に通う子ども達であっても、こうした不安定さの影響を受けることなく、安定的に教育を受ける機会を確保する必要がある。
③そこで、外国人学校に通う子ども達が安心して学ぶことができるよう、外国籍県民がくらしやすい環境づくり、多文化共生社会の実現の観点から、経常費補助にかえ、所得区分ごとに学費負担の軽減を図ることを目的とした、子ども達に着目した新たな補助制度を創設する。