“朝高生だから、思えること” を表現/神戸朝高美術部展
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少し前になりますが…
2月17、18日に、第15回 神戸朝鮮高級学校美術部が開催していた部展を訪ねました(2/16~19、神戸アートヴィレッジセンター KAVCギャラリー)。部展のタイトルは「思・想」(おもい)。ギャラリーの入り口付近にはこんなメッセージがかけてありました。
「今の私たちのおもいをそのまま伝えよう。
今の朝高生だからおもえることをそのまま伝えよう。
自分たちなりのおもいを伝えよう。
本当のおもいを届けよう。
今を生きる私たちしか伝えることの出来ないおもいがここにある。
今しか伝えられないおもい(思・想)がここにある…」
テーマは毎年、部員たちで話し合いを重ねて決めるそう。今年は、朝高生”だからこそ”、今の環境”だからこそ”、思えること、感じられることを形にしようという全体の大きなテーマを設定し、部員たちが各々に抱く「おもい」を表現しています。
来年度キャプテンを務める元礼奈さん(高2)は、「作品を作っているときはみんな自分に必死。でもこうしてみんなの作品を並べると見えてくるものがある。他の部員や作品を見てくれた人を通して、自分の作品も客観的に見れる」と、会場を見ながら話していました。
テーマどおり、作品には朝高生個人が日々の生活の中で拾った考えや思いが詰まっており、それぞれ違うものを描いています。そして、その「おもい」に辿りつくまでの経験や葛藤なども興味深いものがありました。
無数の人々がそれぞれの色とポーズでのびのびと描かれた「生<き>」の作者、李美奈さん(高2)。
「どれが自分かは、見ている人自身が自由に決められます! 性別も関係ありません! ちなみに私はこれです!」と元気に作品を説明してくれた。
「人生をテーマにしました。中には自分の思いを閉じ込めてしまって苦しむ人がいる。悲しいニュースも多い。でも、自分の色を持って視野を広げれば、見えるものが変わるのではないか。その中で必ず人と出会いつながる。マイナスと思っていたことも視点を変えればプラスになる。学校の中での一個人、日本社会での在日など、色々な場面で考えられると思います」(李さん)。
前述の元礼奈さんの作品「うず」は、丸い大きなキャンバスに一定の間隔で貝殻が並べられ、それが何重もの円を描いています。観ているだけで吸い込まれそうです。
「人は周りのみんなに合わせてしまう。海をイメージして描いたのですが、実際に海岸に行くと、砂浜に埋もれていく貝殻が社会に埋もれていく人間に見えたので、そこで拾った貝殻を作品に使いました」(元さん)。前の床には貝殻の乗っていない2つの丸いキャンバスが置かれています。「渦を抜け出し、誰もいないこっちに飛び込むのは勇気のいること。でも、それができればなんでもできます」。
ワークショップも行われていました。各々の書きたいことを付箋などに自由に書いて、白紙に貼っていきます。足を運んでくれた人たちも巻き込んで、みんなで「おもい」を表現しようと企画されました。
会場では、チャリティをかねたOB・OG小品展も同時開催されていました。さまざまな形で美術活動に関わっている卒業生による展示も、スタイルが多様で独特な雰囲気があります。後輩たちの参考になればと、作者のプロフィールを載せているものもあったりと工夫がされていました。
ギャラリー代や合宿代などの負担を和らげようと、OB、OG会も毎年欠かさずサポートをしており、今回も同部にカンパが手渡されました。
開催期間、卒業生や各地の朝鮮高校美術部員や教員、毎年「学美」を開催している島根からも人が訪れました。作品が並ぶ空間で話に明け暮れ、つながりがさらに広がっていく場所にもなっていたことが印象的でした。朝鮮高校美術部の部展は、各地で毎年行われいています。ぜひ一度足を運んでみてください。(S)