「勝つまでは負けるんだ」―、必ず勝訴判決を
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愛知無償化裁判の判決言い渡し後、夕方から行われた報告集会には、仕事を終えて駆けつける同胞や支援者たちも多かった。
報告集会では、裵明玉弁護士が判決の内容について改めて解説した。以下に箇条書きでまとめる。
●被告はこれまで、朝鮮学校への不指定処分に政治的な理由は全く関係なく、学校の運営が適正であると認めるに至らなかった(就学支援金を流用する恐れがある)ことと、朝鮮学校の運営において教育基本法の中にある「不当な支配」の疑念があること、大きく二つの主張をしてきた。
しかし、17年7月に大阪で学園側の勝訴判決が下された以降、愛知では被告による全く新しい主張が出された。一つは、朝鮮学校の教育内容そのものが、他国の尊重や平和主義を定めた教育基本法に違反するという教育内容に踏み込んだもの、もう一つは、総聯は反社会的団体である可能性があり、そのような団体と密接な関係がある朝鮮学校は就学支援金の支給対象にはできないという暴論だ。
それに対して裁判所も、被告の主張を汲んだ内容の判決を書いた。様々な論点を展開しているが、最終的には「不当な支配」の疑念があり、そのような疑念を文科省が持ったことは合理的で違法ではない、というような判断になっている。
●「省令ハ」の削除については、当時、下村文科大臣が記者会見にて「拉致事件」を理由に判断した旨を話している。それに対して裁判所は、下村文科大臣が「拉致問題」などの政治的な問題を考慮したことが不指定処分の背景にあったと認めている。しかし(政治外交上の理由で判断されてはいけないとなっているにも関わらず)、最終的には朝鮮学校が「不当な支配」を受けているという疑いがあるのだから、どちらにしろ就学支援金をもらう資格がなかったのだという結論に結びつけている。「省令ハ」の削除について弁護団が立証してきたことを、別の論点とすり替えて見ないことにし、削除の事実を軽視するような内容になっている。
●また、判決文は、「…在日朝鮮人である原告らにとって、同胞が共に学ぶ朝鮮高校において民族教育を受け、自己の民族的アイデンティティを確立することが、その人格形成に当たって極めて重要なものであることも充分首肯し得る」と書きながら、以下の文章に続けている。
「しかしながら、本件不指定処分の法的効果は、愛知朝鮮高校で学ぶ生徒に年額11万8800円の就学支援金の受給資格が認められないというものにとどまり、愛知朝鮮高校において民族教育を行う自由を法的に規制する効果を伴うものでも、原告らが愛知朝鮮高校にて学ぶ自由を法的に規制する効果を伴うものでもない」。そうして、この流れで「不当な支配」論に落とし込んでいる。
裵明玉弁護士は、「原告の気持ちに応えるような形を取りながら、年額約12万円というような金額の話ではない、という原告たちの気持ちを結局は踏みにじる判決だった」とのべた。
●判決文に何度も出てくるのは、教育というのは中立であるべきという裁判官の視点と、民族教育が言語や文化、歴史の継承という一般の教育の範囲内であればいいが、「不当な支配」の影響がある以上は保護されなくてもやむを得ないという結論。
裵明玉弁護士は、「自分たちが中立公正な判断をしていると思っているような書き方をしている。そういった無知と偏見に加えて、植民地支配に関する責任にどう答えるのかという関係性の中での内省のなさに憤りを感じる。非常に問題のあるこの判決を認めてはいけない」としながら、最後に「これを朝鮮学校だけの問題だと見過ごせば、日本の教育の自由にも影響を及ぼす由々しき判決。控訴審では、教育内容の介入を認めるような判決が下されたということをしっかりと広め、これに対して声を上げてくれる方々をさらに集めて、力を結集して今回の判決を乗り越えていきたい」と決意を語った。
他の弁護士たちも異口同音に話していたが、一度は弁護団の主張や原告らの気持ちに寄り添う振りをして、結果的にはすべて「不当な支配」を持ち出すことで考えを深めず、短絡的に、暴力的に結論を持ってきていると感じた。
個人的に聞くところによると、福田千恵子裁判長は非常に頭がよく、リベラルな人だという評判だという。しかし、判決を見て解説を聞くと…。専門家でもなんでもない個人が生意気だろうが、想像力を伴わない知性とはなんなのだろう、なんの価値があるのだろうと思えて仕方ない。
弁護団によるあいさつと解説が終わると、壇上でさまざまなアピールがなされた。愛知中高オモニ会をはじめとして、広島、九州、京都オモニ会からも激励と連帯のメッセージが送られた。
日本の方々、韓国の同胞も心強いあいさつをした。
無償化連絡会・大阪の長崎由美子事務局長は、「大阪で与えられた判決は、明らかに愛知に与えられるべきものだった。この愛知が、朝鮮学校が、あなたたちが、愛する祖国が自分たちとつながりのあることがなんの恥じることがあろうと誇りをもって闘った、それに対して下りるべき判決が大阪の判決だったと思う。愛知での闘いがあるからこそ大阪の判決が出たと私は思っている。こうして私を見ている、目をキラキラさせた、私が私であることに誇りを持っている、そしてこれから日本社会の中で、あなた方が必ず架け橋となっていく、そんなハッキョの生徒を私は全国で見てきました。全国のハッキョの学生が誇りを持って生きていける判決が出るその日まで、歴史の勝利は必ず私たちにあると信じて、これからも前を見ていきましょう」と活力に溢れた口調で呼びかけた。
「学生の皆さん、この間、雨の日も暑い日も寒い日も、無償化適用のための行動をしてきた。それは勝利のためにあるもの。間違いなくあなたがたのこの間の闘いは勝利に向けた進軍である。勝つまでは負けるんだ。しかし負けは勝利のためにある。友の会は、皆さんと共に歩みます。共に頑張りましょう!」、静岡朝鮮学校友の会の方々による連帯のあいさつに、会場からは大きな拍手が送られた。
愛知中高の全校生も舞台に上がってアピールをした。
「私は朝鮮人として堂々と生きる道以外に選ぶことはありません。1世、2世、3世同胞たちが私たちに残してくれた誇りを、私たちに託してくれた希望を守り抜き、後輩たちの、朝鮮人としてウリハッキョで学ぶ当たり前の権利、幸せを守るため、私はこれからも勝利だけを見据えて闘い続けます。裵明玉弁護士が記者会見で私たちに申し訳ないと仰いました。そして先生たちも何度も、私たちにまで辛い思いをさせたくなかったと言ってくれました。しかし私は今日まで民族教育を守り、そのためにたくさんの犠牲を払いながら闘って下さった皆さん、共に闘って下さる方々への感謝の気持ちでいっぱいです」
怒りと共に、決してあきらめないという固い決意に満ち溢れた場になった。
最後に、裁判所と日本社会へのメッセージが込められた、無償化ネット愛知の声明文を引用したい。(理)