東京無償化裁判控訴審が結審、10月30日に判決
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国側、論理破綻認める
東京無償化裁判控訴審第2回口頭弁論が6月26日、東京高裁101号法廷で行われ、317人が傍聴券を求めて列をなした。開廷時間は30分。2回の弁論を終えたこの日、結審が決まり、10月30日(火)16時から判決が言い渡されることになった。
前回の控訴審第1回口頭弁論を振りかえる。国側は就学支援金不支給の理由として、①ハの削除と、②審査の結果、規程13条に適合すると認めるに至らなかった―という2点を主張していた。これに対し、原告の朝高側は控訴理由書で、東京地裁判決(2017年9月13日)でハ削除の違法性について何も検討しなかったことに意義をとなえ、ハ削除は明らかに政治的外交的理由による違法なものだと主張していた。
前回の弁論で裁判長は、国側の代理人に「規定ハ削除」について「論理的な説明を」との宿題を課していた。
裁判長は国側が、朝高を不指定にした当初(2013年2月20日付けの不指定通知)は、①規定ハの削除、②規程13条に適合すると認めるに至らなかった―という2つの理由を掲げていたにも関わらず、裁判が始まってからは、②を主に主張し、①は念のため通知したと、主張を変えた経緯を振り返りながら、「二つの理由の関係について論理的に述べてほしい」と促していた。
この宿題に対して国側は第1準備書面で回答し、二つの理由の関連性について、あっさりと「論理的に成立しない」と自らの論理破たんを認めた。国の主張はこうだ。
①②の論理的関係について、規定ハが存在しなくなった場合には、下位法令である規定13条は存立の基礎を失うので、「①と②は不指定処分の理由として、論理的に両立しない」。国は論理的に成立しないと言いながらも、省令改悪の前日である2013年2月19日に「不指定処分の通知文書を出す予定である」と朝高にファクスで通知したことを理由に、「省令改正の効力が発生する余地がある」と主張。朝高排除を意図した省令改悪が違法であったと判断される場合でも、規定ハが存在することになるとして、理由②が不指定処分の理由になると述べた。
法廷で、国側の準備書面に対する意見陳述を行った原告側の師岡康子弁護士は、「この主張は、行政庁において、自らが行った省令改正が違法であることを前提とするものだ。これは法の一般原則である禁反言にも反するものであって到底認められない」と喝破。「不指定処分が、規定ハの削除が違法・無効であることを前提してなされたはずがない。②はすでに存在していない法令の適合の有無を論ずるものとして、法律的には無意味であり、…不処分の理由たりえない」と述べた。
国の主張は、「ハの削除が違法であることを前提にした、前代未聞の主張。国の主張は破たんしている」(報告集会での李春熙弁護士の発言)
東京弁護団が提訴当時から主張しているように、政治的外交的な理由でなされた「規定ハ削除」は高校無償化法の趣旨からしても違法であり、国が朝高を排除した理由もこの一点に尽きる。「規程13条に認めるに至らなかった」とする国側の主張は、とってつけたものであり、ここにきて国の論理破たんはますます明らかになっている。
この日の弁論で原告側は石井拓児・名古屋大准教授の意見書を含む3種類の準備書面と証拠調べの必要性に関する意見書を提出した。
また裁判所は、双方から出された省令改正後の様々な証拠を却下。「規定ハ削除の違法性」に論点が定まった印象を受けた。
しかし、予断は許さない。広島、東京、愛知における無償化裁判は、地裁で敗訴しており、国側の意向を汲んだ判決が続く可能性は否定できないのだ。
4ヵ月後の判決までの課題
判決まで4ヵ月。報告集会で、「高校無償化からの朝鮮学校排除に反対する連絡会」の長谷川和男代表は、「裁判の行方は国の世論がどのような動向に傾いているのかで、大きな影響がでる。新しい朝鮮半島をめぐる状況が生み出されている、今の状況を引き寄せ、主張を大きく展開し、朝鮮学校を来たことない人に知らせよう。ともに全力を尽くしていこう」と呼びかけていた。
報告集会は、会場に立ち見が出るほどの満席。東京朝高の舞踊部キャプテン、申英鉉東京中高オモニ会会長らが発言し、東京朝高の3年生全員が合唱「民族教育の誇りたかく」を披露し、場内を盛りあげた。
申会長は、昨年9月の一審判決に「怒りと、深い悲しみ、国を相手に闘う難しさ感じた」と吐露しつつ、「私たちは、ひるむことなく闘い続ける。こんなことで負けない。ともに闘ったすべての人と抱き合える日までともにがんばりましょう。日本政府には、朝鮮と和解し、就学支援金の訴求適用と補助金支給の見直し、生徒たちの学ぶ権利保障するよう強く求めます」と熱い気持ちを伝えていた。(瑛)