神戸朝高生のお土産押収事件、根本には犯罪的な日本の対朝鮮「制裁措置」
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6月28日に神戸朝鮮高級学校の生徒たちが修学旅行で朝鮮を訪問し日本に戻ってきたとき、関西空港での税関検査で、朝鮮の親戚などからもらったお土産を押収されるという事件が起こった。このことは、翌日のSNSなどで拡散され、在日同胞社会はもちろん、韓国社会でも問題となり、7月3日、韓国の日本大使館前で250余団体の賛同のもと抗議の記者会見を行ったと伝えられている。総聯中央は、6月29日夕方に記者会見を開き日本当局を糾弾している。総聯中央の記者会見(写真)の模様は(理)さんがこのブログで報告している。https://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/025f5e9bf8ab5bdd7a1845aa4b2ef178 朝鮮新報の記事はこちら。http://chosonsinbo.com/jp/2018/06/0030/
朝鮮を訪問した在日同胞がお土産を日本の税関で押収されるということは、これまで何度も繰り返されてきた。イオ編集部にいた(里)さんも同じように押収されたことを12年5月の日刊イオで綴っている。「みんな取り上げられました。」https://blog.goo.ne.jp/gekkan-io/e/2a3cf6938270f73cc33d5f97b5c433f2
今回、朝鮮高校の生徒が修学旅行での朝鮮訪問でこのような事件が起きたことで注目が集まったともいえるが、学生であれ成人であれ、お土産を押収するということ自体が差別的で非人道的な許されない行為である。
日本当局がこのようなことをするのは、朝鮮を敵視しているからに他ならない。そして、朝鮮に対して独自の「制裁措置」を続けているからである。「制裁措置」がスタートしたのが06年。もう12年も続いていることになる。最初は半年だった「制裁期間」も09年から1年となり、13年からは2年となっている。
ここでは月刊イオ2015年6月号に掲載された「人権蹂躙、生活へのダメージ 日本による「制裁」がもたらすもの」という記事をもとに日本の「制裁措置」について見てみたい。
日本は06年7月の朝鮮のミサイル発射訓練を口実に、万景峰92号の入港禁止措置などを実施、日本単独での「制裁措置」に踏み出した。さらに、06年10月の朝鮮の核実験を口実に「制裁」を強化。その後も、09年5月、13年2月の核実験のたびに強化されてきた。「制裁」は、朝鮮→日本、日本→朝鮮のヒト、モノ、カネを遮断しようというものだ。
日本による「制裁」は、「外国為替及び外国貿易法」と「特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法」に基づくものである。この二つは、拉致問題以降、日本が朝鮮に対する独自の「制裁」を目的として、それぞれ04年2月と6月に改定、成立させたものだ。「制裁」が事前に準備されていたことがわかる。
日本による「制裁」は、今回の「お土産の押収」だけでなく、在日同胞の生活に大きなダメージを与えてきた。朝鮮と日本をつなぐ船・万景峰92号が入港禁止になったことにより、高齢者や障害者、病弱な人たちは飛行機での移動が困難なため、実質的に祖国との往来の道を閉ざされてしまった。朝鮮高校生徒の祖国訪問も、飛行機便への変更により一人当たり約15万円も負担額が増えた。朝鮮に粉ミルク支援を行っている日本の団体も船がストップしたことにより支援に支障をきたしている。
朝鮮との輸出入が全面的にできなくなったことにより、朝鮮との貿易業を営んでいた人たちはすべて窮地に追い込まれた。朝鮮へ中古車などを輸出していた愛知の同胞企業は09年に貿易業を廃業した。朝鮮の書籍を売るコリア・ブックセンターも朝鮮からの書籍が入ってこないし、06年7月以降に出版された朝鮮の本の販売が禁止されている。
06年の「制裁」開始直後、日本社会の中で在日朝鮮人に対する民族差別、迫害行為が多発した。06年10月末の段階で、朝鮮学校生徒らに対する暴行やいやがらせが169件、総聯機関に対する放火や破壊行為、脅迫などが200件を超えている。拉致問題以降、日本社会に形成された「反北朝鮮・反総聯」の風潮が、「制裁」によって増幅され在日朝鮮人に直接の暴力が向けられた。
07年1月の大阪府警による滋賀朝鮮初級学校に対する不当な強制捜索をはじめ、日本の公権力による総聯各機関への弾圧、「無償化」排除や各自治体の補助金支給停止など日本政府をはじめとする朝鮮学校への露骨な差別も、「制裁」がそれを許す一つの支えになっている。さらに日本社会全体の中で在特会などによるヘイト・クライムを助長してきた。
日本が独自で行ってきた主な「制裁措置」には次のようなものがある。
●「朝鮮民主主義人民共和国」籍者の原則入国禁止
●すべての朝鮮籍船の入港禁止
●在日朝鮮人の最高人民会議議員などの朝鮮を渡航先とした再入国の不許可
●日本の国家公務員の朝鮮への渡航の原則見合わせ。日本国からの朝鮮への渡航自粛
●日本と朝鮮間の航空チャーター便の日本への乗入れ不許可
●朝鮮を仕向地とするすべての貨物の輸出を禁止
●朝鮮を原産地または船積地域とするすべての貨物の輸入を禁止
●朝鮮と第三国との間の移動を伴う貨物の売買、貸借又は贈与に関する取引(仲介貿易取引)を禁止
●輸入承認を受けずに行う、原産地又は船積地域が朝鮮である貨物の輸入代金の支払の禁止
●携帯輸出の届出を要する額を100万円超から30万円超へ引下げる措置及び支払報告を要する額を3000万円超から1000万円超へ引下げ
最後に、在日本朝鮮人人権協会が出している「在日朝鮮人の人権を侵害する制裁措置の廃止を求める意見書」(2017年10月30日)を紹介する。http://k-jinken.net/?page_id=341
意見の趣旨として次の二つをあげている。
1 日本政府が、朝鮮民主主義人民共和国に対して発動している経済制裁は、国際法・人道法上の制約を逸脱して在日朝鮮人の人権を侵害しているから、ただちに廃止すべきである。
2 経済制裁と並行して、日本政府や地方自治体によって、高校無償化制度からの朝鮮学校の排除や補助金の停止・削減など在日朝鮮人を標的とした権利侵害が多発している。これらは朝鮮民主主義人民共和国への事実上の「制裁」として行使されているところ、本国政府に対して政治・外交上の圧力を加えることを目的として日本国内の永住市民の人権を侵害するものであって違法・不当であるから、そのような権利侵害行為はただちに停止されるべきである。
「日本独自の制裁措置」の非人道的かつ違法・不当性について次の4つをあげている。
1 一般市民への影響を考慮しない全面的禁輸措置・支払禁止措置である点で非人道的であり、
2 制裁目的との合理的関連性を欠くものであって、国際法の一般的理論からは正当化されず、
3 制裁発動国に在住する旧植民地出身者の永住市民を対象とする異例の措置であって、不必要・不相当であり、
4 制裁目的が達成されないまま時間的制限なく継続しており、異常である。
北南首脳会談、朝米首脳会談が実現し、朝鮮半島をとりまく情勢は急激に好転している。そのなかで、日本も日朝会談について言及するようになった。こんな犯罪的な「制裁措置」をそのままにして在日朝鮮人を人質のように弾圧しいじめておいて、本当に朝鮮との関係改善をするというのだろうか? 今回の神戸朝高生のお土産押収事件で、その根本となる日本の朝鮮に対する「制裁措置」の犯罪性について知ってもらいたい。(k)