関東大震災時の朝鮮人虐殺から95年―小池都知事は今年も…
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東京都の小池百合子知事が、毎年9月1日に横網町公園(東京都墨田区)で営まれる関東大震災時に虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼する式典に、昨年に引き続いて今年も追悼文を送らない方針だという。
これまで式典には歴代の東京都知事が追悼文を寄せていたが、小池知事は昨年、「すべての犠牲者に哀悼の意を示しており、個別の形での追悼文は控える」として送付を取りやめた。今年も同じ理由で追悼文は送らないという。
これに対して、式典を主催する日朝協会などの市民団体メンバーが昨日、東京都庁を訪れ、小池知事に対して今年の追悼式への追悼文送付を求める署名を提出した。
「都知事としてすべての震災犠牲者に哀悼の意を示しているのだから、朝鮮人犠牲者に対してだけ別途追悼文を送ることはしない」ということなのだが、これが日本の首都・東京都のトップたる知事の認識なのかと昨年に続いて暗澹たる気持ちになる。
「震災の犠牲者と、人の手で虐殺された死は違う。その事実を認めず、埋没させるのは負の歴史を反省せず、現代において民族排外主義やヘイトスピーチの容認にもつながる」(日朝協会都連合会の赤石英夫さん)。8月2日付東京新聞に掲載された記事中のコメントがこの件の本質を言い当てているので、ここに引用する。
昨年、小池知事のこの方針が伝えられると、多方面から批判が噴出した。小池知事は関東大震災時の朝鮮人虐殺の事実関係をめぐる自身の認識を問われると、「さまざまな見方がある」「歴史家がひもとくもの」などとのべて、最後まで虐殺の事実を認めず、自らの見解も明らかにしなかった。当時、知事のこの発言に接して憤りとともに恐ろしさも感じたが、それは今も変わっていない。
関東大震災から95年になる今年9月1日を前に、朝鮮人虐殺に関連した行事が東京の各地で開かれている。新宿区・新大久保にある高麗博物館では7月4日から「朝鮮人虐殺と社会的弱者―記憶・記録・報道」というタイトルで企画展が開催されている(12月2日まで)。
7月21日から8月5日まで世田谷区にある劇場「ザ・スズナリ」では「九月、東京の路上で」が上演された。加藤直樹さんの同名の本をもとに劇団「燐光群」を主宰する坂手洋二さんが作・演出したものだ。
朝鮮人虐殺について文化人や市井の人々が残した記録をまとめた『証言集 関東大震災の直後 朝鮮人と日本人』(筑摩書房)も出た。編者の西崎雅夫さんは30年以上にわたって関東大震災時の朝鮮人虐殺事件を記録し、追悼する活動を続けてきた。一昨年には『関東大震災朝鮮人虐殺の記録: 東京地区別1100の証言』を出されている。これは500ページ以上で価格も1万円に迫る大部の本だが、今回の証言集はコンパクトな文庫で手に取りやすい。
9月1日を前に、あらためて歴史の声に耳をかたむける。この国にはびこる歴史修正主義とヘイトスピーチに打ち勝つためにも。(相)