愛知無償化裁判、控訴審始まる
広告
高校無償化制度から不当に排除されたことにより、生徒たちの学習権、平等権、人格権が侵害されたとして、愛知朝鮮中高級学校の高級部生徒・卒業生らが2013年1月24日に起こした国家賠償請求裁判(愛知無償化裁判)。
今年4月27日、名古屋地方裁判所で原告全面敗訴の判決が下された同裁判の控訴審第1回口頭弁論が12月12日、名古屋高等裁判所1号法廷で行われた。
裁判所には愛知朝鮮中高級学校の高級部3年生の生徒、同胞、支援者ら133人が85の傍聴席を求めて列をなした。
法廷では、原告側を代表し卒業生が意見陳述を行った。
原告の卒業生は、地裁判決で裁判所が、民族教育を受ける権利や学ぶ権利を侵害していないと述べたことについて、生徒たちが勉強や部活を通じて学力や人間力を育むべき学校生活の時間を削り、差別是正を求める街頭宣伝を行っている現状を裁判所は直視しておらず、地裁判決は裁判所を信じて頑張る後輩たちの姿を否定したものだとのべた。
また、朝鮮総聯からの「不当な支配」があると認定し、このことを理由に朝鮮高校からの無償化排除を正当化した同判決には、朝鮮は「危険な軍事国家」であり朝鮮を祖国とする朝鮮総聯も日本を脅かすような反社会的な団体だという価値観が根底にあるのではないかと指摘した。
最後に原告は、裁判所が愛知朝鮮高校と生徒たちと真摯に向き合い、正義と良心に従った判決を下すことを求めた。
続いて、原告側の裵明玉弁護士が要旨陳述(控訴理由書、準備書面1、準備書面2)を行った。裵弁護士は朝鮮学校を不指定とした国側の処分理由の3点(①省令ハの削除、②愛知朝鮮高校の2012年度の教員数が規程6条の必要教員数に満たないこと、③愛知中高が規程13条に適合すると認めるに至らなかった)を挙げながら、②、③は省令ハに基づく指定の基準を定めた下位法令であり、省令ハの削除とともにその存立の基礎を失うので、省令ハの削除と規程6条および、同13条に関する処分理由は、論理的に両立しえないと指摘。省令ハの削除は高校無償化法による委任の範囲を逸脱する違法な措置だと同地裁判決の不当性鋭く指摘した。
控訴人側は、本件省令ハの削除は朝鮮高校に対する差別感情を助長させる効果を有するものであるため、認めることはできないとして、「省令ハによる人格権侵害」を否定した原判決に対して、高校無償化除外と関連して日本各地で行われ、拡散された大量の在日朝鮮人・朝鮮学校に関するインターネット上のヘイトスピーチを一覧にして控訴理由書の別紙として添付した。
裵弁護士はネット上のヘイトスピーチの一部を例に挙げながら、これらが控訴人らに対する差別感情を助長させることは明らかであり、省令ハの削除は、社会差別を助長させ、朝鮮人である原告らの人格的利益を侵害する効果を有するものだと指摘した。
また、裵弁護士は名古屋大学・石井拓児准教授(教育法学・行政学研究者)の意見書を引用しながら、愛知朝高が教育基本法16条1項の禁ずる「不当な支配」を総聯から受けているなどの疑念があるとして、裁判所が教育内容にまで言及した原判決の判断は、16条1項の解釈を誤り、客観的な事実に反するものだとのべた。
今回、原告側は高校無償化法及び省令ハの趣旨や目的を担当者として熟知していた前川喜平・元文部科学事務次官の証人採用を求めた証拠申出書を裁判所に提出した。
口頭弁論の後、18時から名古屋朝鮮初級学校で報告集会が行われ、生徒、同胞、支援者らをはじめとする100人を超える人々が参加した。
報告集会では内河惠一弁護団長があいさつをのべた後、裵弁護士が控訴審について説明を行い、質疑応答の時間も設けられた。
愛知朝高の高級部3年生の全生徒らはこの日、報告集会にも参加。集会では高3生徒による合唱も披露され、多くの参加者を勇気付けていた。
第2回口頭弁論は2019年1月28日(月)15時から行われる。(全)