川崎・桜本の識字学級で学ぶ女性たちの作文が本に
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神奈川県川崎市の桜本にある識字学級「ウリマダン」で学ぶ在日朝鮮・韓国人女性や日系移民女性たちがつづった文章をまとめた書籍『わたしもじだいのいちぶです―川崎桜本・ハルモニたちがつづった生活史』が1月30日に日本評論社から発行された。
戦前から在日朝鮮人が多く暮らしてきた桜本。識字学級「ウリマダン(旧ウリハッキョ)」は社会福祉法人青丘社が運営するふれあい館で30年近くにわたって開かれてきた。ここで学ぶ女性たちは、日本の植民地支配、戦争、民族差別、貧困、女性であることといったさまざまな理由から高齢になるまで文字を学ぶ機会を奪われた。そして、識字学級で文字を学ぶことで自らの人生について書きつづり、心の奥底の記憶を一つひとつ言葉にしてきた。幼少期の思い出、家族のこと、日々の暮らしの雑感、ヘイトスピーチに対する抗議などなど―。本書には、植民地期に渡日したオールドカマーのみならず、戦後に渡日したニューカマーたちや日系ブラジル人・ペルー人女性などさまざまな背景をもった人たちの文章が収められている。
本書の出版は、識字学級で長年ハルモニたちの学びに寄り添ってきた人々や大学の研究者ら市民有志で構成された刊行委員会が企画した。「ハルモニたちの言葉を一冊の本にまとめて、全国津々浦々に届けたい」と出版資金をクラウドファンディングで募ったところ、目標金額の140万円を大きく上回る180万円が集まった。
さる1月16日、ふれあい館でハルモニたちに本をお披露目する集いがもたれた。
本書の編著者である康潤伊さん(早稲田大学大学院教育学研究科博士課程後期)と、本書の出版元である日本評論社の吉田守伸さん(ともに本書刊行委員会メンバー)が集まったハルモニたちに一人ずつ本を手渡した。
その後、本書に収録された文章を「共同学習者」(ハルモニたちの学習をサポートする人)、刊行委員会メンバーが朗読し、ハルモニたちが感想のべた。自らがつづった文章が本になった喜びを口にし、逆境にくじけず強く生き抜いてきた人生経験を語る言葉が印象的だった。
本書を読んだ感想などは次回以降に書きたい。(相)