参院文教科学委員会で高校無償化除外問題について質問
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前回(3月26日)のエントリで、3月19日の参議院文教科学委員会で高校授業料無償化・就学支援金支給制度からの朝鮮学校除外問題についての質問が行われたと書いた。前回は動画のURLを貼り付けただけだったが、今回は、具体的にどのようなやり取りがあったのか、インターネットの国会会議録検索システムを使って当該部分の質疑応答を全文引用する(3月19日の参議院文教科学委員会の会議録の全文は以下のURLから確認できる)。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/198/0061/19803190061003a.html
3月14日の福岡地裁小倉支部での原告敗訴の判決で日本全国5ヵ所で係争中の朝鮮学校高校無償化裁判の判決が地裁段階で出そろった直後に行われた国会での質問だということもあり、この問題に関する現政権のスタンスを知るうえでの参考になると思い、取り上げた次第だ。
質問に立った立憲民主党の神本美恵子議員は、朝鮮高級学校10校が高校授業料無償化・就学支援金支給制度の対象になっていない状況についてどう思うのか、柴山昌彦文部科学大臣に問うた。大臣は、「朝鮮学校が朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、法令に基づく適正な学校運営が行われているとの十分な確証が得られなかったため(筆者注:規程13条適合性問題)、審査当時の規定に基づき不指定処分とした」と回答。「法令に基づく適正な学校運営が行われているという確証が得られれば指定されるということか」という質問に対しても、「現在は、朝鮮学校が就学支援金の受給申請を行った根拠規定(筆者注:規定ハ)そのものが廃止されていることから、法令に基づく適正な学校運営に関する確証の有無にかかわらず指定されることはない」とのべた。
神本議員は、先の東京無償化裁判でも原告側が主張した不指定処分の2つの理由(規定ハ削除と規程13条)の関連性(原告側弁護団は、この二つの理由は論理的に両立し得ない、不指定の真の理由は政治・外交的理由による規定ハ削除であると主張)についても問いただしたが、文科大臣は「訴訟係属中の案件なので詳細なコメントは差し控えたい」と回答を避けた。
規定ハの削除について政府参考人の永山賀久・文科省局長は、「日本在住の外国人を対象とする各種学校については、教育課程や教育内容についての制度的担保がない、外国の学校教育制度において制度的に位置付けられたものであることが大使館などを通じて確認されたもの(イ)、または文科大臣が指定する団体の認定を受けたもの(ロ)を制度の対象とするというのが原則であり、ハはあくまでも例外的な規定である」「イ、ロ以外の教育施設が法令に適合していることについて文科省に立入調査の権限がない、などの理由から審査に限界があるといった問題が生じたために削除した」というむちゃくちゃな答弁を行っている。文科省は2014年8月の国連人種差別撤廃委員会で朝鮮民主主義人民共和国との国交が回復すれば朝鮮学校は現行制度で審査の対象となり得ると答弁しているが、神本議員がもし国交が回復されればどうなるのかと質問すると、文科大臣は(文科省自らが仮定の話を出したにもかかわらず)「仮定の質問については回答を差し控えたい」とのべた。
ほかにも腹立たしさを抑えられない質疑応答が続くのだが、詳細は以下に引用するやり取りの全文を参照。(相)
○神本美恵子君 立憲民主党の神本美恵子でございます。
今、大学の無償化というお話もありましたけれども、これが本当に無償化なのかどうかということは今日ここで議論はいたしませんけれども、二〇一〇年四月、高校の、いわゆる後期中等教育の授業料不徴収と就学支援金の支給法が成立をいたしました。実質的に九八%が高校に通っているという現状の中で、社会全体でこの子供たちの後期中等教育を支えようということでこの法律が成立をし、現在に至っているわけですけれども、現在は残念ながら一部所得制限が掛かって、全ての希望する子供がこの授業料不徴収と就学支援という形になっていないところはありますけれども。
現在、朝鮮学校十校がこの高校無償化、実質無償化の対象になっていないという状況について大臣はどのようにお考えなのか、幾つかお尋ねをしながら御意見聞きたいと思うんですけれども、毎週金曜日の夕方、文科省前で無償化の適用を求める活動が行われていることを御存じかどうかということが一つです。
そこでのある学生の発言を御紹介します。文科省の皆さん、僕はサッカーを通じて多くの日本の友人、日本の人と友達になり、理解と協力を得ています、しかし、あなた方は平気で差別します、恥ずかしくないですか、私たちは同じ人間に見えますか、差別するのは同じ人間に見えないからではないでしょうか、朝鮮学校を無償化から除外する日本政府の政策が、日本社会にある朝鮮人へのヘイトスピーチを扇動、助長しているのです、誰かが誰かを嫌悪し排除することから争いは生まれ、互いに苦しみます、そんなことはもうやめませんかという、この声は、恐らく歴史的経緯の中で日本で生まれ育ち、今や三世、四世の世代になっている若者の一人の声ではないかというふうに私は受け止めておりますけれども、こういった若者が、朝鮮学校で学んでいるがゆえに、授業料の不徴収、いわゆる実質無償化の対象になっていない、排除、除外されているということについて、まず、大臣、どのように受け止められますか。
○国務大臣(柴山昌彦君) 抗議活動等については私も承知をしております。
その上で、朝鮮学校への高等学校等就学支援金制度に係る不指定処分については、いろいろと訴訟等も係属しておりますけれども、私どもといたしましては、朝鮮学校が朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、法令に基づく適正な学校運営が行われているとの十分な確証が得られなかったため、審査当時の規定に基づき不指定処分としたものであります。
なお、現在は、朝鮮学校が就学支援金の受給申請を行った根拠規定そのものが廃止をされていることから、法令に基づく適正な学校運営に関する確証の有無にかかわらず、指定されることはありません。
○神本美恵子君 朝鮮高校が無償化の対象から外された経緯について大臣が今御答弁されましたけれども、皆さんのお手元に資料をお配りしております。朝鮮学校無償化排除に関わる流れということで、文科省の施行規則等を基にして大まかに流れを概観してみました。
まず、一九七九年に社会権規約を批准して、日本はその批准のときに高等教育の漸進的無償化条項は留保しておりました。しかし、二〇一〇年四月、先ほど言いましたこの実質無償化法案が成立をいたしまして、同じ年に社会権規約の留保を撤回しておりますので、高等教育まで漸進的に無償化をこの国は進めていくということを国際的に約束をしたわけです。
その高校実質無償化の法成立に伴って施行規則が決められて、その第一条の二項をそこに挙げておりますけれども、専門学校や各種学校についての規定が書かれております。この無償化は公立、私立を問わず全ての高等学校ですが、各種学校や専門学校等については次のような規定でやるということで、施行規則が定められております。
その各種学校の中で、我が国に居住する外国人を専ら対象とするもののうちということで、イ、ロ、ハが挙げてあります。イは、主に大使館等が日本に置かれていて、交流が、国交がある国に関する外国人学校であります。ロは、いわゆる国際機関が認定をしたインターナショナルスクール等を含むものであります。ハが、このイにもロにも属さない、文科大臣が定めるところにより、高校の課程に類する課程を置くと認められるものとして文科大臣が指定したもの、いわゆる朝鮮学校というのは、国交もありませんので、インターナショナルスクールでもないということで、このハに属するということであります。
このハに属する規程を、認定基準を作らなければ大臣が指定できないということで、資料二に、次のページに掲げておりますが、この高等学校の課程に類する課程を置く外国人学校の指定に関する基準ということで検討会議が設けられて、どのように認定をしていくのか、その基準、認定の手順等がここで議論をされております。そして、一部だけ抜粋しておりますけれども、三ページのところに、先ほどのイ、ロ、ハに当たるところが少し詳しく書かれていると思って書いておりますが、もう分かりますね、今申し上げたとおり、ハ、このほか、文科大臣が定めるところにより、高等学校の課程に類する課程を置くものと認められるものということで、ハが朝鮮学校を認めるか認めないか、その審査するに当たっての基準がこの後にずっと書かれているところであります。
ところが、この朝鮮学校が無償化の対象から外された理由について、国連の人種差別撤廃委員会、二〇一四年に開かれた委員会において問われた日本政府が答弁を次のようにしております。
今申し上げましたハ、ハの規定に基づく指定に関する規程十三条、これに基づく規程がまたあります。あちこち行きますが、一枚目にその十三条を書いておりますので御覧いただきたいのですが、ハの規定に関する規程を決定、二〇一〇年八月、十三条、前条に規定するほか、指定教育施設は、高等学校等就学支援金の授業料に係る債権の弁済への確実な充当など法令に基づく学校の運営を適切に行わなければならないというような、この規程に基づいて審査が行われる。朝鮮学校はこの申請を期限内に行っております。
その結果なんですけれども、規程十三条において、今も読み上げたようなことを当時の国際課の調査係長が人種差別撤廃委員会において答弁しているんですけれども、学校の運営が法令に基づき適正に行われていることを要件としており、具体的には教育基本法、学校教育法、私立学校法などの関係法令の遵守が求められます、教育基本法十六条一項で禁じる不当な支配に当たらないこと等について十分な確証を得ることができず、法令に基づく学校の適正な運営という指定の基準に適合すると認めるに至りませんでしたので不指定処分としましたというふうに答弁しております。つまり、不当な支配に当たらないこと等について十分な確証を得ることができなかった、ハの規定に基づく規程十三条ですね。
お尋ねしますが、この確証がもし得られれば、先ほどちょっと言いました審査基準に従って確証が得られれば指定されるということになるのでしょうか。
○政府参考人(永山賀久君) 朝鮮学校への高等学校等就学支援金制度に係る不指定処分でございますけれども、朝鮮学校が朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、法令に基づく適正な学校運営が行われているなどの十分な確証が得られなかったためということにつきましては、今御指摘のあったとおりでございます。
現在は、朝鮮学校が就学支援金の受給申請を行った根拠規定が、先ほども御紹介ありましたけれども、廃止をされていることから、法令に基づく適正な学校運営に関する確証の有無にかかわらず指定されることはないと考えております。
○神本美恵子君 今答弁がありましたように、朝鮮学校が申請をするその根拠規定がもう削除されてしまっているんですね。ですから、幾ら学校運営適正にやっていますということになっても、もう今の状態では指定が受けられないということになっております。
二〇一三年の二月二十日に処分通知が出されました。その処分通知には、今言いましたハの規定を削除したことが理由の一、及び規程十三条に適合すると認めるに至らなかったことが理由の二として挙げられています。しかし、同じ二月二十日に文科省は省令を改正してハを削除しているんですね。だから、同じ日にハを削除して、そして処分通知を出して認められませんというふうに、どうも、これは何を根拠に、じゃ認められないということを判断したのかということがとても納得できない。
これは裁判にもなっておりまして、二〇一八年、昨年十月三十日、東京高裁で判決が出された中の一つに、この二つの理由は論理的には両立し得ないことは、被控訴人、つまり国側においても自認するところであるというふうに言われているようなことなんですが、この二つが両立し得ないとすれば、どちらが正式な処分理由になるんですか。ハの規定なのか、規定に基づく十三条なのか。
○国務大臣(柴山昌彦君) 今御指摘になられたとおり、このハ規定を削除した日とそれから不指定処分が同日であるということから、今御指摘にあった、審査基準に適合すると認めるに至らなかったということとそれからこのハ規定を削除したということがどういう関係にあるのかということが問題とされているかということだと思います。
ただ、本件は訴訟係属中の案件でありますので、詳細なコメントは差し控えたいと考えております。
○神本美恵子君 昨日レクの中では、どちらかと聞いたら十三条だというふうにお答えになったんですけれども、今は係争中だということでお答えはありませんでした。
文科省は、同じくこの先ほど言いました二〇一四年の国連の委員会の中で、北朝鮮との国交が回復すれば現行制度で審査の対象となり得ますというふうに答弁をしているんですね。
そこでお尋ねしたいんですけれども、その場合、国交を回復した場合、昨年から朝鮮半島をめぐる対話の動きがありまして、今ちょっとまたアメリカとの関係もあって止まっているようですけれども、安倍首相は、日朝平壌宣言を踏まえ、金委員長との対話についても前向きにという発言もされている現状でございますが、もしそのようになった場合、削除したハを復活するのか、朝鮮学校の扱いは、それともイの、国交が回復すればイロハのイに戻る、どっちになるんでしょうかというのが一つと、それから、そもそもなぜハを削除したのかということについてお伺いしたいと思います。
○政府参考人(永山賀久君) まず、一点目の御質問でございます。
朝鮮学校を高等学校等就学支援金の対象外とした件につきまして、御指摘いただきました二〇一四年八月の国連人種差別撤廃委員会における委員の質問に対する答弁、回答でございますけれども、日本政府代表団としての回答でございますが、この趣旨は、一般論として、外交関係のある国の教育機関であれば御指摘のイの規定ですね、イの規定に基づいて支給対象となり得る旨を述べたものと承知いたしております。
ハの規定は、先ほど来お話ありますとおり、既に廃止をされているということで、現時点でこれを復活をするということについて考えていないというところでございます。
二点目でございますけれども、では、そのなぜハを削除したのかということでございます。
我が国に居住する外国人を専ら対象とする各種学校については、教育課程や教育内容についての制度的担保がないわけでございます。外国の学校教育制度において制度的に位置付けられたものであることが大使館等を通じて確認されたもの、これはイですね、イなんですが、又はロとして文部科学大臣が指定する団体、国際バカロレア等の認定を受けたもの、これを対象とするということを原則としておりまして、あくまでこのハというものは例外的な規定だというふうに認識をいたしてございます。
例外的な規定としてハが存在していたわけですけれども、イ及びロ以外の教育施設が法令に適合していることについて、例えば文部科学省に立入調査の権限がない、そういったことなどから審査に限界があるといった問題が生じたために削除したものと認識をいたしております。
○神本美恵子君 ハは例外的な規定なんて、どこにも施行規則書いてありませんよ。何を勝手に解釈しているんですか。どこに書いてありますか。後になって、そんなことを後付けで言うのは本当におかしいと思います。
これは、政権が民主党政権から自民党・公明党政権に替わったときに省令改正が行われました。そのときの文科大臣は、拉致問題の進展も見られず、朝鮮総連と密接な関係があるというようなことをこのハを削除した理由として発言して、理由としてされたかどうか分かりませんが、この削除のことについて説明をされております。
この法律が成立したときに施行規則を作り、その施行規則に基づいてこういう基準、先ほど言いました検討会議を設けて基準を作って、そして、真剣に本当に教育課程としてやっているのかということを見るために基準まで作って審査をするというようなことをやって、なぜそういうふうにやったかというと、これは外交問題ではなくて、この国に生まれ育った全ての子供たちの教育を保障する教育問題であるという観点からこういう基準が作られて審査をしてきたのに、政権が替わった途端に拉致問題と結び付けて、先ほどの国交が回復すればというような発言もそうだと思うんですけれども、やっていることについては、これは本当に差別としか言いようがない、もう断言したいと思います。
そこで、最後に、イによる場合でも、先ほどイに当たるというふうにおっしゃられたと思いますが、国連でも不当な支配に当たらないことについて十分な確証を得られないので不指定にしたと答弁しましたけれども、ここは、例えば国交が回復してイになっても、不当な支配について十分な確証を得られないというふうに不指定の理由をおっしゃっているんですけれども、その問題はどんなふうに解決できるんですか。
○国務大臣(柴山昌彦君) ちょっと、まず神本議員にお答えをする前提として、あたかも何か特定の国の学生さんを我々が差別しているかのような物言いだったんですが、そんなことはないんですよ。ちょっと答弁をよく聞いてほしいと思います。
当該学校、教育機関で行われている教育課程や教育内容について、それが日本においてしっかりと質の担保が図られているかどうかということについて確認するすべがあるかどうかという問題でありまして、先ほど申し上げた、外国の学校教育制度、特に、我々が国交を通じ、大使館などを通じてそれが確認できるということがイであります。
それから、先ほど永山局長からお話があったように、文部科学省が指定される一定のやはり国際バカロレアなどの団体の認定を受けたもの、これも教育課程や教育内容についての制度的担保が見られるということからロということなんですけれども、ハは例外か、もちろん例外的というふうにも申し上げましたけれども、いずれにせよ、やはりこういった内容についての制度的担保、あるいは内容のしっかりとした確認をするための、我々としては例えば立入調査を行い、あるいはそのカリキュラムについて提出をさせる、そういったことを求める必要があるわけなんですけれども、結局我々にそういった立入調査の権限がないため審査に限界がある、そこでこのハの項目を削除したわけでありまして、あたかも特定の国を狙い撃ちにしているかのようなちょっと物言いというのは、私は非常に心外であります。
その上で、今の御質問ですけれども……
○委員長(上野通子君) 大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○国務大臣(柴山昌彦君) 簡潔に。
じゃ、国交が回復をしたら一体どうなるのかということなんですけれども、仮定の質問についてはお答えを差し控えさせていただきます。
○神本美恵子君 まとめます。
差別ではないとおっしゃいましたが、国交のない台湾を含む中華学校はイに入っております。私は納得できません。
以上です。終わります。