「朝鮮学校と共に歩む中国・四国・九州ネットワーク」が発足!
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朝鮮学校を支援する活動を行っている中四国・九州の日本市民らが交流・連帯するための新たな組織「朝鮮学校と共に歩む中国・四国・九州ネットワーク」が5月12日に発足した。1ヵ月以上も経ってしまったが、元気が出るニュースと詳細なレポートが届いたので紹介したい(以下、呼びかけ人である「民族教育の未来を考える・ネットワーク広島」代表・村上敏さんのレポートを編集し引用)。
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〈発足の経緯〉
約4ヵ月前、広島朝鮮初中高級学校で「第20回日朝教育シンポジウム」が開催された。シンポジウムは分科会方式で行われ、山口、四国、岡山、新潟など全国から参加した団体から取り組み報告がされた。
終了後、これを機に中国・四国の支援団体が集まれればいいのに!という声が上がった。というのも、朝鮮学校を支援する団体による全国交流集会は東京で年にいちど開かれるものの、中国・四国・九州からの参加は数団体で、支援団体が一堂に会することはこれまでになかった。中・四国が会場なら集まれるのではないか! 暖かくなったら会いましょう!という言葉がきっかけになった。
〈集会の呼びかけ〉
「民族教育の未来を考える・ネットワーク広島」ははじめに、中国・四国で活動する朝鮮学校の友好団体が交流を深めると同時に、情報を共有して各地の運動を発展させていくことを目的に、「朝鮮学校と共に歩む中国・四国交流集会(仮称)」を呼びかけた。すると、九州と連携している地域もあるので、九州にも呼びかけて欲しいという声が上がり、「朝鮮学校と共に歩む中国・四国・九州交流集会」をすることに。さらに各地域でそれぞれが関係団体へ呼びかけを広げ、予定より多くの団体が参加する集会となった。
〈趣旨の確認〉
集会には各地から多くの団体が集まり、約50名の参加者で熱気に包まれた。午前の部は、山﨑貴文さん(民族教育の未来を考える・ネットワーク広島事務局次長)の司会で始まった。
その後、参加者たちは広島初中高オモニ会の朴陽子さんの案内で校内を見学。同校では幼稚園から高校まで140名の子どもたちが学んでいる。昨年5月に開設された保健室やICT機器の整った教室などを見て回り、18年度の高級部3年生が製作した祖国訪問のドキュメンタリー映像を鑑賞するなど、朝鮮学校の魅力に触れた。
午後の部では、本交流集会の趣旨について改めて提案があった。
・朝鮮学校の権利を日本政府や社会に正当に認めさせ、差別をなくすための活動を行っている中国・四国・九州各地の仲間が交流する。
・各地域の特色ある活動に触れ、それぞれの地域の運動に活かす。
・各地域の日常的な情報を共有し、連携を取り合う。
・朝鮮学校を除外・弾圧する動きに抗して連携して共に闘う。
・報告・交流の場を持つ。
新たな組織の名称については、正式に「朝鮮学校と共に歩む中国・四国・九州ネットワーク」とした。ネットワークには、「民族教育の未来を考える・ネットワーク広島」「広島無償化裁判を支援する会」「日朝友好広島県民の会」「広島無償化裁判弁護団」「日本と南北朝鮮との友好を進める会(岡山)」「山陰学美実行委員会(鳥取・島根)」「朝鮮学校を支援する山口県ネットワーク」「徳島県教職員組合」「四国朝鮮学校の子どもたちへの教育への権利実現・市民基金」「福岡地区朝鮮学校を支援する会」「朝鮮学校を支える会(北九州)」「大分県高教組」、中国・四国・九州地方の朝鮮学校など16団体が名を連ねた。
続いて、各地域から20名の報告と意見発表があった。
高校無償化裁判への取り組み、補助金カット阻止あるいは再開を求める取り組み、「学美展」や「へいわ子ども展」の取り組み、日常的な行事・イベントの取り組み、朝鮮学校を財政的に支えるために金剛山歌劇団公演の収益金・市民基金を募る取り組み、差別事件への取り組み、保健室の開設の取り組みなど多岐にわたった。
最後に、広島初中高の金英雄校長が閉会の挨拶に立った。
〈今後の活動と課題〉
授業料無償化からの排除・補助金の不支給など朝鮮学校への攻撃は厳しさを増している。10月には幼稚園の無償化が始まるが、朝鮮学校が排除される可能性がある。集会で確認された趣旨のもと、朝鮮学校の児童・生徒の学習権をどのように保障していくことが出来るか、「朝鮮学校と共に歩む中国・四国・九州ネットワーク」の活動が問われている。
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また、以下は各地域からの報告をまとめたもの。日本とコリアを結ぶ会・下関の代表を務める鍬野保雄さんによるものだ。一部を編集し紹介する。
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○「四国朝鮮学校の子どもたちの教育への権利実現・市民基金」(会員134名、賛助団体9団体)は2012年9月に発足した。半年に一回、通信『ムグンファ』を発行。毎回600部前後を刷り、運動会をはじめとする学校行事や、愛媛での市民運動関係の会合で配布・宣伝している。郵送は現在311名分。
また毎年1回「四国朝鮮学校交流フェスタ」を開催し、午前中は公開授業、午後は演劇、歌、踊り、運動場での炭火焼肉を催す。宣伝のため、学校の周り約6000戸を対象に配布されるタウン情報誌へのチラシ折り込み作業もしている。同校の李一烈校長は「市民の連帯、地域の理解と協力があって、7人の子どもたちがスクスク伸びている」と話した。市民基金の運動が大きな支えになっていると思った。
○福岡地区朝鮮学校を支援する会(団体会員21団体、個人会員300人〈2019年4月末現在〉)。18年5月22日の第4回総会には122名が参加し、「会員拡大と青年層の組織化」「朝鮮学校との交流と支援の強化」「民族教育の権利擁護」を18年の基本方針とした。
また、(1)無償化裁判勝利のための運動と各地支援する会との連帯強化、(2)福岡朝鮮学校附属幼稚園創設55周年記念「金剛山歌劇団公演」成功、(3)支援する会「青年部」の発足―を重点目標として活動に取り組んだ。
〇民族教育の未来を考える・ネットワーク広島は、教職員組合、総聯や女性同盟、解放同盟など12団体によって2002年に結成された。軸には、日本人の教職員が自身の差別性に気づき向き合うことで、差別解消のために取り組もうとの思いがある。活動自体は多岐にわたる。
―広島初中高での実践(“あってよかった”保健室を目指して)
広島初中高では、2018年5月に保健室が開室。毎週1回、木曜日に運営している。公立中学校の養護教諭をした先生と保健師兼保護者の権載淑さんが担当。13年ぶりの開室となった。先生たちは張り切っているが、子どもたちは慣れていないのか、まだあまり活用されていない。しかし、保健室があることで子どもたちも先生もきっと安心を感じていると思えた。
〇金英雄校長(閉会挨拶)
「こんなに厳しい時代は過去40年間の教員生活の中でもなかった。フラワーフェスティバルや国体開会式にブラスバンドなどで協力してきた。広島県が補助金をカットすれば、市はすぐ翌日に追随した。これまで市長とは何回か会ったが県知事は一度も会えていない。けれど落ち込まない。先生、そして生徒たちは他校に負けない元気がある。そのエネルギーは定期券などの差別を一つひとつ乗り越え、国公立大学も受験できるようになった。差別をエネルギーにしてきた。自分が朝鮮人だと言える社会にしたい。民族教育の権利保障について、これまでは義務だけ果たしてきたが、控訴審で勝利しましょう」と決意を語られた。
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レポートを読みながら、現地の人々の朝鮮学校に対する愛着と熱気を感じた。また、自分たちの近くから差別をなくしていこうという責任感とこれまでの地道な取り組み、新たな意気込みにも力をもらった。(理)