川崎市でヘイトスピーチに罰則付きの条例制定へ、市長が明言
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ヘイトスピーチを根絶し、あらゆる差別を禁止する条例の制定を目指している神奈川県川崎市で6月19日、福田紀彦市長は実効性の確保に向けて条例に罰則規定を設ける意向を明らかにした。
川崎市は今後、条例の素案を策定し、市民の意見を募るパブリックコメントを経て12月の市議会での成立を目指している。条例が成立すれば日本で初めてヘイトスピーチ(差別扇動表現)に罰則規定が設けられた条例になる。
19日に川崎市内で行われた記者会見には、「ヘイトスピーチを許さない市民ネットワーク」(市民ネット)の関係者、川崎市在住の崔江以子(川崎市ふれあい館)さん、神原元弁護士、立憲民主党の有田芳生参議院議員が参加した。
神原弁護士は「ヘイトスピーチの根絶に踏み込むには、刑事罰が必須。今回の市長の表明は、ヘイト根絶の見地からすれば歴史的に極めて重要な一歩を記すものである」と指摘。また、「刑事罰は、刑事訴訟法の手続きに従って行われる。すなわち警察の捜査権限が入り、最終的に司法判断が下されることが予想される。何がヘイトなのか、最終的な結論を司法判断によってつけることができる。司法判断のメリットは、行政委員会などに比べて第三者性、公明性、正大性が確保されることにある」と説明した。
崔さんは、「胸がいっぱいです」と声をつまらせながらも、「ヘイトスピーチは表現の自由の範疇ではない。罰則規定が盛り込まれることで言論社会は守られ、私たちも同じ人間だと認められる社会が実現できる」と話した。崔さんは条例が成立すれば「ヘイトスピーチ規制の実効性は確保され、日本一の条例になる。日本中で被害にあっている人たちへの希望の灯火になる条例の成立過程をしっかりと見守って応援していきたい」と決意を新たにした。
有田議員は、「ヘイトスピーチは許さないと一人ひとりが路上に集まり、抗議する。日本各地でこうした動きが続いてきた。この気高い努力の大きな成果の一つが今日の市長の発言に表れている」と指摘した。
「市民ネット」は、これまでヘイトスピーチの根絶を目指して市民啓発、法務局や警察への被害申告、ヘイトデモに対する仮処分申請などを行ってきた。19年6月5日には、川崎市議会の山崎直史議長に実効性ある条例を求める「意見書」を手渡し、市が制定を進める「(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」に制裁規定を盛り込むなどを求めた。
「市民ネット」は、7月4日に市民集会の開催を予定しており、条例の成立まで市民参加の条例作りに参画していくとしている。(全)