『クリムト展』に行ってきた
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先日、東京・上野にある東京都美術館で開かれていた『クリムト展 ウィーンと日本 1900』(4月23日~7月10日)に足を運んだ。
グスタフ・クリムト(1862-1918)は19世紀末のウィーンを代表する画家で、日本でも以前から人気が高いが、今回の展示は過去最大級ということで開催前から各所で話題になっていた。
4年前に旅行でウィーンを訪れた際、限られたスケジュールの中でどこを回ろうか思案した結果、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館(世界で最大のクリムト作品の収蔵を誇る)を断念した経験があったので、代表作をまとめて見られる今回の機会はありがたかった。なかなか時間をとれず、開催期間終盤での鑑賞となったが、『ユディトI』『ヌーダ・ヴェリタス』『女の三世代』など写真や映像でしか接したことのなかった有名な作品を実際にこの目で見ることができたので満足だった(この機会を逃すと、作品を所蔵する海外の美術館に行かない限り、二度と実物を見ることができないかもしれないので)。
内外の美術館を訪れるたびに思うことを一つ。海外では著作権が切れている作品については来館者に自由に写真撮影させる美術館が多いという。前述のウィーン訪問時の話だが、欧州を代表する美術館の一つであるウィーン美術史美術館でブリューゲルやルーベンス、フェルメールのような有名な画家の作品の写真撮影が許されていたのをみて、「この名画の撮影もOKなのか」と驚いたことを覚えている。当時は、海外の美術館では撮影がOKなのに日本の美術館では撮影禁止なのはなぜなのか? と疑問に思っていたのだが、これは誤解だった。海外でも日本でも撮影OKのところもあれば、NGのところもある。おおざっぱにいうと、その館が所有している展示作品は撮影OKだが、ほかの美術館から借りた作品を集めて開く企画展ではNGのようだ(もちろん例外はあって、常設作品でも撮影NGのところはある)。今回のクリムト展も展示作品をほかの美術館から借りてきたものなので、写真撮影は禁止されていた。(日本と比べると欧米の美術館のほうが写真撮影OKが一般的だとか)。もちろん、撮影OKといっても作品保護のためにフラッシュ撮影は禁止、三脚などの機材の使用も禁止となっているケースがほとんどで、写真の営利目的の利用も厳禁だ。
スマートフォンとSNSの普及によって、美術館で作品を鑑賞するスタイルにも変化が起こっている。展示物の撮影が状況に応じて許可され、SNSを通じた画像の拡散、共有も盛んだ。カメラのシャッター音を不快に感じたり、鑑賞者の通行の妨げになったり、混雑の原因となったりといった撮影にともなうデメリットが解消されれば、さまざまな楽しみ方が許されるのはいいことだと個人的には思っている。(相)