最高裁、国の「違法性」問わず―無償化裁判、東京、大阪の上告退ける
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東京朝鮮中高級学校の61人(提訴時62人)の生徒が国に対し、就学支援金制度への支給を求めた(2014年2月17日)国賠訴訟で最高裁判所第三小法廷(山崎敏充裁判長)は8月27日、原告側の上告を棄却し、上告受理の申立ても受理しないとする決定を下した。
日本政府は、2010年4月から外国人学校の中で朝鮮高校だけを唯一、無償化制度から除外し、第2次安倍政権にいたっては、13年2月20日に朝鮮学校を指定するために作られた決まり―「規定ハ」を突然になくす省令改悪を断行した。最高裁決定により規定ハ削除を「適法」とした二審の東京高裁判決(2018年10月30日)が確定し、原告の敗訴が確定した。
一方、一審で原告・大阪朝鮮学園側の勝訴、二審で逆転敗訴となった大阪無償化裁判でも、最高裁が朝鮮学園側の上告および上告受理申立てを退けた。決定は東京と同じく27日付。
最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は、大阪朝鮮高級学校を高校授業料無償化・就学支援金支給制度の対象としないのは違法だとして、同校を運営する大阪朝鮮学園が国を相手に不指定処分の取り消しおよび指定の義務づけを求めた訴訟で、朝鮮学園側の上告を棄却し、上告受理の申立ても受理しないと決定した。
最高裁は上告棄却の理由について、「民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告の理由は、違憲及び理由の不備・食違いをいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない」とした。また、上告受理申立ての不受理については、「本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない」とした。(東京も同文)
無償化裁判は、就学支援金受給の道を絶たれた日本各地の朝鮮高校生と学校を運営する朝鮮学園が起こしたもので、2013年1月に大阪、愛知で始められ、九州、広島、東京など5ヵ所で行われてきた。
13年1月、大阪朝鮮学園が国を提訴して始まった大阪無償化裁判は、大阪地裁が17年7月28日、大阪朝鮮高級学校を制度の適用対象から外した国の対応は違法、無効と認定し、不指定処分を取り消して同校を対象に指定するよう命じる原告全面勝訴の判決を言い渡した。その後の控訴審では、昨年9月27日、大阪高裁が一審判決を取り消す不当判決を下した。
今回の最高裁決定によって、除外を「適法」と判断した二審判決が確定した。
最高裁で判断が示されるのは初めてで、国、行政、司法が一枚岩となって朝鮮高校を差別し、学ぶ権利を奪う醜態をさらけ出したことになる。
東京無償化弁護団は28 日、「最高裁決定は、下級審の誤りを是正し、法令解釈の統一を図るという最高裁の職責を果たさず、また、行政による違法な行為を是正するという司法府の役割を放棄したものだ」とする抗議声明を発表。「高校無償化法の趣旨・目的にのっとり、一日も早く、朝鮮高校を就学支援金制度の対象とすることを求め」た。
明日30日16時からの文科省前の金曜行動では、抗議集会と記者会見が行われる。
大阪では9月初旬に弁護団、学園などによる記者会見が開かれる予定だ。(瑛、相)
※写真は18年10月30日に下された高裁判決時のもの
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最高裁判所第三小法廷2019年8月27日決定に対する東京朝鮮高校生「高校無償化」国賠訴訟弁護団コメント
2019年8月28日
本件で東京高裁は、行政処分の効力発生時において存在しない法令に基づく行政処分を有効と解しましたが、これは明らかに、最高裁判所の判例に相反し、法令解釈を誤ったものでした。当弁護団はこの点の違法性を明確に主張しました。
しかし、最高裁は、本件について、具体的理由を何ら述べることなく生徒らの主張を退け、判例に明確に相反する東京高裁の判断を放置しました。
本日の最高裁決定は、下級審の誤りを是正し、法令解釈の統一を図るという最高裁の職責を果たさず、また、行政による違法な行為を是正するという司法府の役割を放棄したものです。
弁護団は、本最高裁決定に断固として抗議します。
最高裁の決定が維持した東京高裁判決は、朝鮮学校が指定のための要件を満たさないとの「疑い」があることを理由に朝鮮学校を不指定にした文部科学大臣の判断について、「裁量権の逸脱・濫用はない」としました。しかし一方で、東京高裁判決は、朝鮮学校が指定のための要件を満たしていないと積極的に認定したわけではありません。
本訴訟の審理の過程では、下村文部科学大臣(当時)が、高校無償化法の趣旨・目的に反して、「拉致問題等があり国民の理解が得られない」との政治的外交的理由から、朝鮮学校指定のための根拠規定をあえて削除して、不指定処分を行った事実経過が明らかになりました。
また、下村文部科学大臣が、朝鮮学校指定の可否を教育的観点から議論していた「審査会」の審理を打ち切り、自民党が野党時代から主張していた「朝鮮学校排除」の規定方針にもとづいて不指定処分を行ったことも明確になりました。
私たち弁護団は、改めて、朝鮮学校のみを排除した文部科学大臣の不指定処分に対して抗議の意思を表明します。
高校無償化法は、「家庭の状況にかかわらず、すべての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくる」 ことを目的とするものであり、同法のもとでの就学支援金制度は、各種学校認可を受けた全ての外国人学校を対象とするものです。
私たち弁護団は、高校無償化法の趣旨・目的にのっとり、一日も早く、朝鮮高校を就学支援金制度の対象とすることを求めます。
以上