最高裁決定に抗議、「金曜行動」に600人
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怒りと覚悟に満ちた1時間だった。
不意打ちのような最高裁決定で東京、大阪の無償化裁判の敗訴が確定された(8月27日)3日後の8月30日、小雨降る文部科学省前の「金曜行動」には東京朝鮮中高級学校の300人の生徒を見守るかのように、関東一円、大阪から保護者や同胞、日本市民らが集まった(生徒含め約600人が参加)。
この日の「金曜行動」は、急きょ、抗議集会と記者会見の場に変更された。
金順彦・東京朝鮮学園理事長は、同学園、東京中高、東京朝鮮学校オモニ会連絡会の連名の抗議声明を発表し、
「人権の最後の砦である最高裁判所の役割を放棄して、文部科学省の不当な差別を是認した。生徒たちは制度から除外されたまま、涙と心の傷を癒やすことなく無念さを胸に抱きながらも、近い将来、不当な差別が是正されるものと信じて卒業していった。決定は生徒たちや保護者の気持ちを踏みにじるもの、決して容認できない」と怒りをぶつけた。
東京中高オモニ会会長の韓和美さんは、嗚咽をおさえながら、語り続けた。
「高3の生徒たちは、高1の時に東京地裁での不当判決、高2の時は高裁での不当判決、高3の今、最高裁の不当判決を受け、高校の3年間、敗訴という差別を感じながら不安な日々を強いられ、過ごしてきました。
高校生が路上に立ち差別を訴え叫び続ける辛さがわかりますか? 心が大きく傷つけられています。法の秩序や正しさ、良心を取り戻してください。すべての子どもたちに学ぶ権利を保障してください。ウリオモニたちも『負けて勝つ』の意気込みで皆さんと頑張っていきます」
無償化連絡会共同代表の長谷川和男さんは、「名古屋、福岡、広島高裁の判決が出る前のタイミングでの最高裁決定は、各高裁に示唆を与え、原告敗訴の流れを決定づける目的があるとしか思えない。最高裁裁判官の5人の中には行政法の大家もいると聞くが、全員一致の決定で、少数意見すら書くことができない。知性、勇気、矜持をもった最高裁裁判官がいないことは、日本にとっても不幸で敗北だ」と主張。
安倍政権が自らの政治的野望を実現するため、政治的、外交的な理由で超法規的に朝鮮学校を無償化制度の対象から外したことを「違法、無効」とした大阪地裁判決こそが、本来の裁判のあり方だと主張し、「裁判官が自らの良心のみに従うことを求める」「政治と一体化した司法を糾弾する」と抗議の声をあげた。
大阪から急きょ上京した、「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」の藤永壮さんは、大阪府オモニ連絡会がまとめあげた抗議声明を代読しながら、補助金裁判、無償化裁判ともに敗訴となったものの、大阪の民族教育を守っていく決意を披歴した。
ソウルから合流したモンダンヨンピルの金明俊監督も怒りに震えながら、最高裁決定を批判。「安倍政権は子どもに手を出した。これは日本国内の問題にとどまらないだろう。世界と連帯し闘っていく」と連帯を表明した。
会場には、高校時代、勇気と覚悟をふりしぼり法廷闘争を決意し、今日まで闘いぬいた原告や原告保護者たちの姿もあった。
原告の男性(23)は、「朝鮮人として生きていくことをけなすような判決は許せない。朝鮮人として生きることが正義だと思っている。最後まで闘う決心だ」と変わらぬ思いを確認した。
原告の訴えを受け止め、法廷で闘ってきた弁護団の金舜植弁護士は、「朝高を不指定とした国の二つの理由は論理的に矛盾する。最高裁には、どちらの理由が法理論的に正しいのかを説明する義務があった。判決にもならなかったことに憤りを感じる。不当だ」と語る。
朝大生の一人が金曜行動のテーマソング「声よ集まれ 歌となれ」の合唱を促すなか、600人の歌声が文科省周辺に響いていく。
「不当決定に失望していない。新しい勝利を勝ちとれるという意気込みを感じている。7年間続けてきた金曜行動を通じて、すべての世代が繋がることができるという教訓を得た。教訓を武器に勝利を勝ちとるまで闘っていく」(朝大生の殷成暉さん、4年)
無償化世代の力強い言葉だった。(瑛)