幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外、「現場見ずに判断しないで」—東京、埼玉、神奈川の朝鮮幼稚園保護者らが関係府省に要請、大臣宛の要請文提出
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きたる10月から施行される幼保無償化の対象から朝鮮幼稚園が除外されようとしている。この問題と関連して9月20日、東京、神奈川、埼玉の朝鮮学校附属幼稚園の保護者らが参議院議員会館で厚生労働省、文部科学省、内閣府の担当者に対し、朝鮮幼稚園が無償化の対象施設として認められ、また保育料無償化のための財政的措置が取られるよう要請した。
この日、保護者らは衛藤晟一・内閣府特命担当大臣、萩生田光一・文部科学大臣、加藤勝信・厚生労働大臣宛の要請文を各府省の担当者に手渡した。(要請文全文)
各府省の担当者らは、朝鮮幼稚園をはじめとする各種学校認可を持つ外国人幼児教育施設を無償化の対象外としたことについて、昨年12月28日の関係閣僚会議で合意された方針―各種学校は①幼児教育を含む個別の教育に関する基準はなく、多種多様な教育を行っており、②児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しないため、無償化の対象とはならない―に考えが示されている、という説明の一点張り。
朝鮮幼稚園の保護者たちは各府省の担当職員らを前に、涙ながらに、憤りを込めて自らの思いを伝えた。以下、保護者たちの訴えの一部をまとめた。
「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」代表の宋恵淑さん:最初は認可施設が無償化の対象とされていたが、子を認可施設に入れたくても入れられず、仕方なしに認可外施設に入れたという保護者たちの声を受けて、対象施設を広げる検討会を開いた。その際に認可外保育施設やベビーホテル、幼稚園類似施設など対象外となっているさまざまな施設の関係者たちが呼ばれてヒアリングも行われた。しかし、なぜ各種学校が運営する幼児教育施設の関係者は呼ばれなかったのか。そもそも各種学校は無償化の対象として検討すらされなかったということが保護者として非常に悔しいし悲しい。
文科省の方で朝鮮学校やインターナショナルスクールのような各種学校が幼稚部を持っているということは当然把握しているはず。であれば、せめて実態調査なり当事者へのヒアリングは行ってしかるべきだった。しかし、それすらもなされなかった。私たちの声が一つも反映されないまま、制度の対象外とされたことに非常に憤りを感じている。
私も子どもが3人いるが、認可施設に入れられなかったので、2歳までは親元に預け、その後は朝鮮幼稚班に送っている。朝鮮幼稚園にも保育の受け皿としての実態がある。実態を見てほしいし、私たちの声を聞いてほしい。
東京都内の朝鮮幼稚園に通う児童の保護者:子どもが3人いる。子どもを家の近くの日本の保育施設に入れる選択肢もあったが、朝鮮幼稚園に入れている。私自身が幼稚園から大学まで朝鮮学校に通い、卒業後は朝鮮学校の教壇にも立った。子どもたちには朝鮮人としての誇りを持ちながら生きてほしいと願い、幼保無償化の財源が消費税ということもあり、私たちの子どもたちももっといい環境で教育を受けさせられるチャンスが来たと思っていた。でも、朝鮮幼稚園が除外される流れだということを知って、悔しいし、夜も眠れない、なぜいつも私たちは差別されるのか。
先日、同じ幼稚園の保護者たちと役所を訪ねて担当者と話をしたが、私たちの声を聞こうとする気持ちが感じられなかった。保育の実態があるか定かではないというなら、ぜひいつでも見に来てくれと伝えた。制度施行の10月1日が迫っている。国で無償化するのがむずかしいなら地方自治体でどうにかしてほしい。
埼玉県内の朝鮮幼稚園に通う児童の保護者:3人の娘のうち、上の2人が朝鮮幼稚園に通っている。私は在日朝鮮人として生まれて、子どもたちにもこれから日本社会で朝鮮人としてのアイデンティティをしっかり持って自分を隠さずに生きていってもらいたいので、民族の言葉や風習を学べる朝鮮幼稚園に送っている。
今回、朝鮮幼稚園を無償化の対象から外す、こんなに悲しくて悔しいことはない。私たちは納税義務もしっかり果たしている。いつになったら差別のない日本社会になるのか。
ぜひ一度、朝鮮幼稚園に足を運んで、その姿を見ていただきたい。子どもたちを差別しないで。私たちの朝鮮幼稚園にも日本の幼稚園と同じく無償化が適用されることを強く願います。
「各種学校全体で見ると、いろいろな学校がある。インターナショナルスクールもあれば絵画教室やそろばん教室もあり…」
そんな文科省職員の言葉に対して、出席者たちからは、「一度も現場に足を運ばずに、『朝鮮幼稚園は除外します、でも消費税は10%払いなさい』、これはあまりにもひどい。各種学校のカテゴリーが広いというなら、朝鮮幼稚園を実際に見て判断してほしい」といった声が上がった。
「『関係閣僚会議で決まったことが法である。これが正しい。いろいろな意見があるが、もう決まったことなので、あなたたちの子どもたちには配慮しません』。そんなことを言っているあなたたちはみな子どものための仕事をしている。
私たちも消費税を払っているし、これからも払う。では、外国人だけ消費税を払わなくてもいいのか。あなた方が言うように、各種学校の中にはそろばん教室や体操教室もある、でも幼稚園と同じ形態でやっているところもある。あなたたちも、そろばん学校と幼稚園の形態を持っている施設が違うということはわかっているはず。
こんな小さな子どもたちを差別して、あなたたちは平気なのか。子どもたちのためと思うのであれば、私たちの声を政治家たちに伝えてほしい。私たちは外国人であるが、都民であり、府民であり、市民であり、日本の住民だ。『閣僚が決めたから間違っていない』、私たちはそんな説明を聞きにきたわけではない。あなたたちの良心に訴えたい。子どもたちが等しくこの政策の恩恵を受けられるようにしてほしい」
翌21日の中央オモニ大会に参加するため上京した大阪府在住女性の訴えに、要請の場となった会議室は静まり返った。
21日の中央オモニ大会でも、内閣府特命担当大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣にあてた「幼児教育・保育無償化」を求める要請文が中央オモニ大会参加者一同の名前で採択された。
幼保無償化関連アクションは今後も続く。26日には東京と大阪でそれぞれ集会が開かれる。東京では、集会に先立ち、21日の中央オモニ大会に参加した日本各地からの代表が参議院議員会館で上記の要請文を持って要請活動を行う。
【集会詳細】
東京
◎朝鮮幼稚園への「幼保無償化」適用を求める同胞緊急集会
日時:2019年9月26日 18時開場、18時半開演
場所:連合会館(JR御茶ノ水駅徒歩5分)
主催:同実行委員会
※11月2日(土)には日比谷公会堂で集会開催の予定
大阪
◎幼保無償化実現を求める、9・26御堂筋ウォーク
日時:2019年9月26日(木) 18:00~
場所:中之島水上ステージ(市役所東側)※西梅田広場まで歩く予定
主催:同実行委員会、朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪
(相)