司法が下した「政治判決」―愛知無償化裁判控訴審判決・原告側が敗訴
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愛知無償化裁判控訴審の判決言い渡しが10月3日、名古屋高等裁判所で行われた。結果は原告側敗訴。言い渡し後、日本各地や南から駆けつけた約300人の同胞、日本市民らが裁判所前で強く抗議した。その後、記者会見と報告集会が行われた。
同裁判は、高校生としての学びの権利が政治外交上の理由によって侵害されていることに対して、国の行為の違憲性(憲法13条の人格権侵害、14条の平等権侵害、26条の学習権侵害)と違法性(高校無償化法違反、行政手続法違反)を問う国家賠償請求裁判。愛知朝鮮中高級学校の高級部生徒・卒業生らが2013年1月24日に提訴した。
名古屋地裁では、裁判官が教育の内容にまで言及し、国以上に差別性を露わにした不当判決が下された(18年4月27日)。
続く控訴審で、名古屋高裁は弁護団の要求に耳を傾けず早々の結審を決定。その後、支援団体である「朝鮮高校無償化ネット愛知」が弁論再開を求める署名を募り、去る8月5日に9613筆の署名を裁判所に持参したが、受け取りを拒否するなど、進行が問題視されていた。
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「本件控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする」
松並重雄裁判長が主文と要旨を読み上げる間、法廷内からは次々と批判の声が飛んだ。
「政治判決!」「恥ずかしくないのかね」「子どもをいじめないで!」「学校に一回来て! 見てから言ってよ!」「司法はどこ見てんのよ!」「最悪」「お粗末」「ちゃんとやれ!」―
裁判長は淡々と要旨を読み上げ、法廷を後にした。
結果が伝えられると、裁判所前にはしばし重苦しい沈黙が流れた。
青年同盟や留学同が先頭で不当判決に抗議するシュプレヒコールを始め、同胞、日本市民たちも声を重ねる。泣きじゃくる愛知朝高生たちを励ますように「声よ集まれ 歌となれ」の合唱が広がっていった。
「울지 마!(泣くんじゃない!)」。人垣の中から女性の声が上がり、日本市民たちが連帯の言葉を叫んだ。
その後、愛知県弁護士会館で記者会見が開かれた。
愛知中高の趙京煥校長は、「高校無償化法は、すべての高校生の学びを支援するという趣旨で始まったもの。そこから朝鮮学校の高校生だけが外され、いまもまだこの状況から抜け出せていないことに怒りを覚える。この不正常な状態を一日も早く解消してほしいと裁判に臨んだが、残念ながら私たちの主張は認められなかった。これからも長い闘いが続いていくだろう」と話した。
「朝鮮人として生まれ育って学び、生きてきたことを今日の裁判で全否定された気持ちになった。朝鮮学校への差別に、司法が加担した判決だったと思う。この6年間、卒業生たちは誰もが『自分たちの力が足りなかった』と悔やみ、その重い荷物を後輩たちに手渡してきた。親として胸が痛い。多文化共生社会を目指している日本で、朝鮮学校の子どもたちを差別している。そのことを恥じてほしい。この判決を受け入れることができない」。愛知中高オモニ会の姜順恵会長は、声を詰まらせながらも強い意志をのべた。
朝鮮高校無償化ネット愛知の山本かほり事務局長は、「約10年間、朝鮮学校で子どもたちのそばにいながら、朝鮮人として生きることを全肯定する場が朝鮮学校だと感じてきた。この判決はそれをすべて否定した判決だと、非常に悔しいというか、怒りというか、虚しい、そんな気持ちが渦巻いている」と心情を伝えた。
続いて、弁護団が判決について言及。
内河惠一弁護団長は、「朝鮮高校の子どもたちの生活、成長、教育、そういうものをまったく顧みない判決になった。なぜ日本の政治も社会も司法も、朝鮮高校の子どもたちの人権や成長、生きる権利をないがしろに、粉々に壊してしまうのかと大変残念な思いだ。法的手続きとしてはさらに上告という手段を取らざるを得ない。同時に、この問題は司法に任せていられないというような、国民としてこの問題をしっかり受け止めながら、植民地支配、戦争責任、戦後の朝鮮学校に対する過酷な政策について改めて目を向けていかなければとしみじみ考えている」と話した。
弁護団の裵明玉事務局長が判決の内容を解説した。
東京の控訴審や九州の一審と同じように、愛知でも重要な争点となったのは、国が朝鮮高校を不指定にした二つの理由【1.省令ハの削除、2.省令ハに基づく指定基準である規程13条(適正な学校運営を求めるもの)に適合すると認めるに至らなかった】-が相互に矛盾するという点だ。
弁護団は、不指定処分の通知が愛知朝鮮学園に到達し、効力を生じたのは省令ハ削除の後であり、省令ハの削除とともに規程13条もなくなっていたのだから、不指定処分の理由は【1.省令ハの削除】のみだと主張。今回の名古屋高裁判決では、初めてこの点が認められた。
しかし名古屋高裁は、(以下、判決文より)「本件不指定処分の前、愛知朝鮮高校は本件省令ハによる支給対象校の指定を受けていたものではなく、控訴人らも就学支援金の支給を受けていたものではないから、控訴人らは、本件不指定処分を含む本件一連の行為によって既存の就学支援金の支給を受ける権利等を侵害されたものではなく…すなわち、同校が同指定を受けるための実体的要件を充足しており、控訴人らが就学支援金の支給を受けることができたことが認められなければならない」と、省令ハ削除と不指定処分の違法性を問うことを回避。
さらには、「同校が同指定を受けられる地位になく、控訴人らが就学支援金の支給を受けられる地位になければ、本件省令ハの削除等により自己の心情ないし民族的感情を害されたとし、不快の念を抱いたとしても、これを被侵害利益として損害賠償を求めることはできないものと解される」とまで書いている。
そもそも国が「不当な支配を受けている疑惑」を持ち出して審査の場を別途設け、朝鮮学校が対象となるかどうかの判断を長引かせた上に中途半端に打ち切った経緯があるなか、「支給対象校の指定を受けていたものではなく」とするのは判断の順序的にどうなのか。
また、朝高生たちの痛みについて言及するようでいて結局は門前払いするような判決文に、弁護団は改めて怒りを表していた。また一つ、司法自らが新しい差別を生んだ判決だったというように感じた。
裵明玉事務局長も、上告への強い意志を明らかにした。
報告集会での各発言については、のちほどまたアップしたい。(理)
昨日の取材お疲れ様でした。
裁判長が「全て棄却」と言った時、
これだけ正論を主張しても受け入れてもらえないのかと
国と在日の間に目の前でシャッターをガラガラ閉ざされたようでした。
傍聴した朝高生、
男女問わず泣きながら裁判所から出てきてすぐクホを叫び合唱していました。
この21世紀、令和に生きる10代の子供が未だに「朝鮮人をばかにするな!」と叫ばなければいけない在日の現実は昔と何も変わっておらず、普段生活する中で皆忘れがちです。
11月に四日市ハッキョで伊藤孝司さんの講演会と愛知無償化裁判の吉田弁護士をお招きします。
毎日日本のマスコミに触れ、正しい情報や認識を持ちづらい我々ですが、
知識を武器に明るい同胞社会、ウリハッキョのために微量ながら出来ることから頑張ります。