マトリョーシカへの興味を語る
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※長くなります
久しぶりに新しいマトリョーシカを買った。
数日前、用事があって銀座へ行った帰り、少し道に迷っていると不意に「木の香」という看板が目に入ってきた。
これはまさか…! ネットでのみ存在を知っていたマトリョーシカのお店。行こう行こうと思いつつ、いつか近くまで出かけたときにしようと結局いちども行っていなかった。それがいま目の前にある。入らない理由がない。
マトリョーシカを好きになったのは高校生になってから。札幌の大通公園で毎年開かれているクリスマス市へ遊びに行った。たくさんのお店のなかでひときわ目を引く一角があり、それがマトリョーシカのお店だった(公式サイトによると、今年も変わらず出店されるようだ)。
おそらく人生で初めてマトリョーシカというものを見て、(こりゃ買うしかないな)と手にしたのがこちら。
また後日、オモニと一緒にリサイクルショップへ行ったときのこと。別行動していたオモニがなにやら足早に近づいてきた。「ちょっとこっち来てみな」と連れていかれた先にあったのは10個組のマトリョーシカだった。
前に買ったものより何倍も大きい。クリスマス市では高すぎて手が出せなかったものだ。なぜこんな場所に…(北海道初中高から徒歩10分ほどのリサイクルショップだった)。
「買ってあげようか?」
(え、いいの!?)こんな用途もよく分からないものに興味を持つ娘を自由にしてくれ、さらには面白がって買い与えてくれる。ありがたく受け取りながら、マトリョーシカへの興味が自分の中で急上昇していることを感じた。
神戸にマトリョーシカのお店があると知って出張の合間に足を伸ばしたり、ついには白木(なにも描かれていないまっさらな型)を買って自分で絵付けもした。6年半前にも日刊イオでマトリョーシカのことを書いたが、当時に比べてここまでコレクションが増えた。
前回も書いた、いちばん小さくなったときの、この力の抜けたシンプルさがいい。
冒頭のマトリョーシカはいちばん小さいものの顔ももちろんいいが、上から2番目の顔が絶妙にゆるく、それでいてどことなく凛々しいところに惹かれて居ても立っても居られず購入を即決した。値段は意外と安く、1320円だった。
お会計へ進もうとすると、衝撃的なものが視界に飛び込んできた。
あ、穴から顔が覗いている………! こんなマトリョーシカ見たことがなかったので、思わず店員さんに声をかける。いわく、アーニャ・リャボワさんというロシアの作家の作品だという。こぢんまりしたもので数万円という恐ろしい値段だったが、職人さんのものであれば当然だよなと納得。何を考えているのか分からない、すこし困ったような表情も魅力的だ。
ここでふと疑問が。ならばこの買おうとしていたマトリョーシカは日本で作られたものなのか? 気になって聞いてみると、こちらもロシアで作られたものだった。なんだか感慨深い。
「こっちは一人の作家さんが全部作るのではなくて、服の色をつける人は服の色、花を描く人は花だけ、顔を描く人は顔と、たくさんの人が分業して作っている感じです」
この顔を描いた人は流れ作業的にやっているのだろうか。それとも一つひとつ真剣に仕上げているのだろうか。どちらだったとしてもそれはそれでいいな、と思った。
自宅に白木のマトリョーシカが2つ残っているので、穴から顔を覗かせたものはそのうち自分で作ってみようと思う。木に穴をあける道具とやすりが必要だろう。(理)