原告本人尋問と原告保護者の証人尋問―広島無償化裁判控訴審第8回口頭弁論
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朝鮮学校を高校無償化・就学支援金支給制度の適用対象外としたのは違法だとして、広島朝鮮学園と広島朝鮮初中高級学校高級部の卒業生らが国に対して処分取り消しなどを求めた裁判(広島無償化裁判)の控訴審第8回口頭弁論が11月20日、広島高等裁判所で行われた。以下、広島朝鮮学園側提供のレポートに基づいて、当日のようすを記したい。
前回の期日(10月10日)に行われた学校法人広島朝鮮学園の金英雄理事長の原告本人尋問に続いて、今回の第8回口頭弁論では、現在広島朝鮮初中高級学校で教員を務める元生徒の原告の本人尋問と全国5ヵ所の高校無償化裁判の中で唯一採用された原告の保護者の証人尋問が行われた。
原告尋問では、幼稚園から朝鮮学校を選んだ家庭環境や学校生活のようすなど朝鮮学校のありのままの姿を紹介するように勧められた原告が、いつまでこのようなたたかいを行わなくてはいけないのか、自分たちの代で終わりにしたい、早く在校生たちを正常な学校生活に戻してあげたい、裁判官はしっかり判断してほしいと訴えた。
証人尋問では、原告である元生徒の保護者が、自身の生い立ちから始まり、朝鮮学校に初級部3年時から編入したこと、それまでは朝鮮人としての自分を隠して生きてきたこと、朝鮮学校で初めて民族名を名乗り、いきいきと学校生活を送れたこと、それでも登下校時に差別やいやがらせがあったことなどを語った。そして、そんな自身の経験から子どもたちを朝鮮学校に送らなければならないと判断したとのべた。
当初は子どもを山口県内の朝鮮学校に通わせていたが、学校休校にともなって学校選びをどうするか決める際、子どもたちから「続けて朝鮮学校に通いたい、友達と一緒に学びたい、ウリマル(朝鮮語)や朝鮮舞踊をもっと習いたい」と嘆願され、生活基盤のない広島へ引っ越し、朝鮮学校へ転入することになったとのべた。
原告保護者は最後に裁判官に向けて、「あなたの子どもが『裁判官』の子どもというだけで差別を受けたらどのような気持ちになりますか、私たちの気持ちがわかりますか」と問いかけ、尋問を終えた。
証言した2人に対して国側からの反対尋問は行われなかった。
尋問終了後、裁判官は、留保していた残り3人の原告尋問、同じく3人の証人尋問、学校への検証採用などをすべて行わないとし、3月16日の次回期日に最終陳述が行われることになった。
口頭弁論終了後、弁護士会館3階ホールで、同日19時からは広島朝鮮初中高級学校の多目的ホールで、それぞれ報告集会が行われた。弁護団から「今日は大変すばらしい尋問だった。」と前置きがあった後、この日の口頭弁論の解説があった。また、証言台に立った原告本人と原告保護者が尋問に対する感想をのべた。
東京、大阪、京都、静岡、ソウルなど各地から訪れた傍聴者たちもそれぞれの感想を話した。
10月から施行された幼保無償化制度から朝鮮学校幼稚班が除外されている問題について、11月2日に東京で行われた集会とデモの報告も行われた。
最後に金英雄理事長が、「民族教育は70数年の歴史を刻んできたが、4.24教育闘争をはじめ常に権利獲得のためのたたかいだった。高校無償化・幼保無償化適用を求めるたたかいでも最後には必ず勝つ」と発言し、集会を締めくくった。(相)