こんな朝鮮、見たことある?
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某雑誌が「平壌、ソウル」特集を組んだ。まだすべて目を通せていないが、内容は約90pにも及ぶ。国の成り立ちや体制から、経済、音楽、食事、映画など多彩なトピックがありなかなか興味深い。切り口や写真、レイアウトなど、「大胆に見せる」という点でも参考になる。
編集部はどのような意図や動機で企画に至ったのだろう。少なくとも、一定の読者に「うける」自信があったのではと思う。人々の中にある潜在的な好奇心と、センセーショナルに煽るだけの報道の限界性、つまらなさを、恐らくとっくに知っていたのだろう。
イオでもたびたびディープな朝鮮国内情報を発信しているものの、社会的にはいまいち話題になっておらず少し寂しい。近年では、2017年10月号「ウリトレイン~DPRK鉄道の旅~」、2018年9月号「ワーカーズin平壌」、そして昨年11月号の「魅力再発見! 平壌へ」などがある。
完成したばかりの11月号を読んで私が最初に抱いた感想は(え、これ面白くない?)だった。訪朝経験のある人が読んでももちろん面白いが、朝鮮について全く知らない人がパッと開いた方が、誌面から受け取る新鮮さや面白さは大きいのではないかと思った。
まず写真が素敵だ。あらゆる対象と距離が近く、朝鮮の人たちの素顔が写っている。他にも、訪朝した人たちが紹介する「おすすめスポット」も目に楽しい。いま話題の「映え」コンテンツ、国内シェアNo.1のスマートフォン、最新ショッピング施設といった平壌のトレンドまでまとめられている。
また、朝鮮を訪れた外国人のコメントを紹介するページも興味をそそる。テコンドーの武道精神を学ぶためにやってきたベトナム伝統武道の国家選手、朝鮮の大マスゲーム「アリラン」を観るためにやってきたブラジル人、平壌の化粧品工場と協力事業の経験もあるロシアのビジネスマンなど、目的もさまざまだ。
いずれの記事も、取材から執筆まで、朝鮮に長期滞在して取材することの多い朝鮮新報の記者たちに協力してもらった。朝鮮新報社には平壌支局なるものがあり、在日朝鮮人記者が交代で駐在している。平壌支局は1988年に開設され、30年以上もの実績がある。
いま、朝鮮国内のことをこのように専門的な人脈と知識、経験を持って取材し、フラットに伝えることのできる日本語メディアがあるというのは、実はかなり貴重だと思う。なによりも「北」という一文字がつかないだけで、こんなにもいきいきとした報道ができるのだという自由さを実感している。
該当の特集についてはイオのwebでもさわりで紹介しているが、まだまだサイト自体の認知度が低いため、本当にこの特集だけでもどこか大手のサイトで全文取り上げてもらって、より多くの人の目に触れてほしいと思ったくらいである。
少し話がずれるが、先日、10年ほど前に作ったというイオの宣伝チラシを見る機会があった。
“マスコミが語らない「朝鮮」がある”―
そうだよね、やっぱりそうだよねと思った。加えて、マスコミが“語れない”ことを長年発信し続けてきた、朝鮮新報社(イオ編集部はその中のいち部署)の蓄積の力を感じた。
同時に、冒頭のように少しずつ日本のメディアから生まれてくる新しい朝鮮半島報道を見るにつけ、自分たちはこのものすごいデータベースをまだまだ活かしきれていないな、とも反省した。
「こんな朝鮮、見たことある?」、そうやって毎回ドヤ顔で社会に発信していけるような企画、見せ方をどんどん模索していかなければ。(理)