神奈川中高美術部展「『 』の自由」、明日まで!
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現在、横浜の大桟橋国際客船ターミナルにて神奈川朝鮮中高級学校・美術部による展示会「『 』の自由」が行われている(2月14日まで)。内容は以下。
11日は部員たちによるプレゼン大会があるというので行ってみた。
ターミナルに入ると前方右側に作品が展示されている一角があり、すでにギャラリーが。通り過ぎながら興味を持って立ち寄った人もいれば、この展示を目的に足を運んだ人もいるようだ。東京朝鮮中高級学校・美術部の生徒たちも来ていた。
部員が一人ずつ登場し、制作した作品の横でコンセプトについて解説する。その後、質問があれば来場者とやりとりし次の作品へ。ただでさえ目を引く作品群。そこに目で見る以上のさまざまな背景や動機を聞くことができてとても面白かった。いくつか紹介したい。
タイトルは「silhouette(シルエット)」。高1・金昌栄さんの作品だ。
夜の横断歩道と、影になっている人たちが描かれている。金さんいわく、この人たちは自分たち(在日朝鮮人)だという。政権によってメディアの光が屈折している、それによって我々の姿は映らない。真っ黒な影だけがある-。納税義務を果たしているにもかかわらず、高校無償化や幼保無償化制度から朝鮮学校が除外されている状況を見て、自分たちが見えないことにされているという思いを作品に込めた。
この作品のタイトルは「wannabe(ワナビー)」。中央に描かれている肉食獣は、過去の自分を表していると話すのは、高1の李佳音さん。自分じゃないなにかに憧れている、過去の自分を表現したそうだ。魅力的な模様、いろいろな動物たちが集まり、肉食獣を成している。
作品を紹介しているのは高2の具潤亜さん。タイトルは「君の色」。具さんは「幼い頃、女の子だからという理由でピンクとか赤色の服を着せられたりしたけど、それが自分にとっては嫌だったということを最近思い出して、描き始めたもの」と話す。「らしさ」を問い直す近年の流れについても言いながら、自分が好きな色を決めることの大切さをのべた。
他にも、絵に合わせてA4用紙で約15枚ほどの小説を書いた生徒(モチーフはAI)、7分ほどの映像作品を作った生徒(作者が脚本、監督を務め、生徒たちが出演。編集も凝っていて面白かった)、これまで撮りためたたくさんの写真を集めて、伝えたい風景が写った大きな写真にした生徒など、テーマ、表現方法がさまざまで刺激的だった。
千葉から足を運んだという30代の男性は、過去にも同校や東京朝鮮中高級学校美術部の部展に行っている。「行く度になにかしらの発見や考えさせられることが多くて、自分から行きたいと思える」。プレゼンでも積極的に質問し、場面場面で面白そうに唸っていた。
プレゼンが終わり、他の作品を見ていると「wannabe」の作者である李佳音さんが涙を拭っていた。訳を聞いてみたところ、プレゼンで「君の色」の説明を聞いて、自分の作品や思いとも通ずる部分があり涙が溢れたという。制作過程では、各々の作品に必死で他の部員の作品に込められた意味などは知らなかったそうだ。
具さんのことを「すごく尊敬する先輩です」と話していた李さん。同じ部活内にそのような存在がいるのは素敵だなと思った。
生徒たちは、聞いたら聞いただけ作品について話してくれる。途中、感覚を言葉に変換しようとしてしばし考える場面もあり、質問によってどんどん新しい言葉が出てくるんだなと感動した。
人によって刺さる作品が違うだろうなと感じた。しかし必ずなにかしらの共感や気づきがあるはずだ。時代や普遍的なものをしっかりと自分の世界観で表現できている中高生は純粋にすごいな、と思った。
この展示会は明日まで。だれでも自由に鑑賞が可能だ。ポストカードも配布している。(理)