“団結よーい!”/無償化適用求め、県民集会と街頭アピール
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報告集会が終わると、引き続き福岡県弁護士会館2階大ホールで「朝鮮高校無償化即時適用実現全国一斉行動に連帯する福岡県民集会」が行われました。
はじめに、主催者を代表して福岡県教職員組合執行委員長の辻 傑(すぐる)さんがあいさつに立ちました。
辻さんは、日本各地で「朝鮮高校無償化即時適用実現全国一斉行動」が実施されており、福岡でもそれに連帯する集会を開催することにしたと説明。昨年3月14日に福岡地裁小倉支部で下された不当な判決についても触れながら、「このような政権を選んだ私たち自身を恥じなければいけないし、国家権力による朝鮮民族への差別に対して闘い続けなければならない」と呼びかけました。
次に、九州無償化弁護団の後藤富和弁護団長が登壇しました。
「今日の口頭弁論で安元弁護士が意見陳述をしているとき、国側の検事や裁判官のようすが二つに分かれていました。一つはうつむいている人、もう一つは話に引き込まれて身を乗り出して聞く人。これは検事の中にもいました。本来、まともな感覚を持っていればこの裁判は当然に勝ちます。この裁判で問われているのは、日本の司法にまともな感覚を取り戻させるということだと思います」
日本の中学校でPTA会長も務めていたという後藤弁護団長。ときにユーモアも交えた丁寧な語りに、和やかな笑いが広がる場面もありました。
「現在、日本の公立学校では理不尽な校則に黙って従う子どもたちが作りだされています。この国が着々と戦争に向かっている、そう思わざるを得ません。安元弁護士が意見陳述で、『マスコミ報道などの影響で朝鮮学校に偏見を持っていた』と言っていましたが、マスコミなどから感じる朝鮮のイメージ、朝鮮学校のイメージというのは、実はいまの日本の公立学校そのものなんです。朝鮮学校に行くと、私は逆にストレスを感じることがない。それどころか心がスッキリします」
最後に、後藤弁護団長は参加者たちに「お願い」として呼びかけました。「今日、裁判や集会で聞いた話、自分が感じたことを家族やお友達に共有して下さい。またSNSをやっている人はぜひ拡散をして下さい。そして次の裁判や朝鮮学校のイベントにお友達を連れてきて下さい。それが私たちの子どもや孫を戦争にやらない、殺し合いをさせないための闘いになります」―。会場からは力強い拍手が上がりました。
続いて、九州朝鮮中高級学校に通う李亜耶さん(高3)が生徒を代表してスピーチしました。李さんは山口朝鮮初中級学校で学んだ9年間と、九州中高での3年間を振り返りました。「高校最後の1年を前にあの日を迎えました。忘れることのない、2019年3月14日」―。
あっけなく自分たちの請求が棄却され、裁判所前で涙を堪えられずうつむいていた李さんたち。するとあるオモニが「君たちは何も間違っていない。だから下を向かないで、堂々と前を向いていなさい」と声を上げてくれたと言います。それを聞いて、「この闘いこそが、いまを生きる私たちの夢であり、希望であり、未来につながる」、決して諦めてはいけないと思ったとのべました。
「この間、たくさんの同胞とともに多くの日本の方々が自分たちの問題として闘って下さることを知りました。なによりも、先陣きって闘ってくれていた弁護団の先生方に、私はとても励まされました。政府を相手に堂々と闘う姿はあまりにもかっこよく、普段の仕事が終わると夜遅くまで集まって、無償化問題解決のため尽力して下さっていると聞き、自分も必ずそうなりたいと思うようになりました」。そう聞いて、あ、と思うと、
「私は4月から、東京にある朝鮮大学校政治経済学部法律学科に進学します。正義と誇りを胸に堂々と闘える、そんな強くて勇ましい弁護士に必ずなってここに戻ってきたいと思います」…
固い志をのべる李さんを見つめて、涙を流す参加者もいました。司会を務めた太田眞由美さん(福岡地区朝鮮学校を支援する会)は、「皆さんの思い、とっても、みんなに響きました。本当に、あなたたちは間違っていません。みんな最後まで闘います」と涙声で応援と連帯の思いを伝えていました。
引き続き各界からのメッセージが。保護者代表として、九州中高オモニ会の李慶愛会長があいさつしました。李さんは、「この子たちにも学ぶ権利があります。差別をしないでください。差別は何もいいものを生み出しません。憎しみだけを生みます。憎しみの連鎖をここで終わらせたい」として、参加者たちにいまいちど連帯を求めました。
朝鮮学校を支援する山口県ネットワークに所属している内岡貞雄さんは、無償化裁判への連帯だけでなく、山口朝鮮初中級学校への支援の取り組みについて話しました。山口には朝鮮学校高級部がないため、福岡や広島の朝鮮学校へ進学します。
「したがって、私たちの闘いは山口初中への補助金を復活させる闘い。これを今ずっとやっているわけです」。内岡さんは組織作りが今後いちばんの課題だとしながら、「みんなで力を合わせて頑張っていきたい」と言葉を結びました。
集会はまだまだ続きます。韓国・蔚山からやってきた「キョレハナ」のメンバーたちは、たくさんのメッセージが書きこまれた横断幕を広げ、あいさつしました。
「はじめに、あまりにも遅くて本当にごめんなさい。私たちはこれまで在日同胞たちの暮らしや朝鮮学校の子どもたちの現実についてあまりにも無知でした。そして無関心でした。同じ民族として申し訳ないです」、そう話し始めたメンバーは、差別を正すための闘いに合流していく決意をのべました。
「福岡地区朝鮮学校を支援する会」の森田徹共同代表は、壇上で集会アピールを提起。昨年の不当判決を忘れないために、同年7月から毎月「第2木曜日行動」を展開してきたことなどを紹介し、今後とも裁判勝利のため最後まで闘っていこうと呼びかけました。
最後に、平和フォーラムの前海満広事務局長がこの後の街頭行動について提起。マイクアピールにティッシュ配り、そして幼保無償化適用を求める署名活動を行うと説明しました。
説明後、「ではこのあと、『団結ガンバロー』ということでやっておりますので」となにやら聞きなれない言葉が。プログラムを見ても詳細はなく、「団結ガンバロー」とだけ書かれています。(なんだ? 何の固有名詞なんだ?)と思っていると、司会者も当然のように「それでは団結ガンバローに入りたいと思います。引き続き前海さんよろしくお願いします」とアナウンス。立ち上がる参加者たち。
前海事務局長「それでは久しぶりに団結ガンバローをさせて頂きたいと思います。…では、『団結よーい!』」
すると会場から「おいしゃ」「おいしょー」と掛け声が。そして右手を構える参加者たち。朝高生たちも普通に順応していました。
「高校無償化、幼保無償化、一日も早い実現を求めて、団結、ガンバロー!」
ガンバロー!
「ガンバロー!」
ガンバロー!
「ガンバロー!」
ガンバロー!
会場は明るい活気に満ちていました。後ほど調べてみると、労働組合の用語としてポピュラーなものとのこと。こういう形式のシュプレヒコールはよくしてきましたが、「団結ガンバロー」という名前があることを初めて知りました(笑)。
集会に参加した多くの人がそのまま街頭行動へ。弁護団の弁護士たちもティッシュ配りや署名活動に精を出していました。
「署名お願いします」という呼びかけに、目も合わせず「あ、すいません」と応えて去っていく日本の高校生を見たときは胸が痛みました。しかし、丁寧に話を聞いて署名をしている人も多く見られ、知らせることの大切さを実感しました。
もらったティッシュに書かれたメッセージ「すべての子どもには学びへの権利があります!」をまじまじと見る人たちも。
約30分の行動は無事に終了。次回の裁判は4月17日(金)13時半から。それまで、こつこつとアクションを重ねて日本市民に現状を訴えていこうとの決意が改めて共有されました。(理)