46万6876筆の署名提出ー外国人学校幼児教育施設への無償化求め
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2019年12月から始まった外国人学校幼児教育施設への幼保無償化適用を求める「100万人署名」が、5月末時点で46万6876筆集まり、署名発起人らが6月15日、参議院議員会館で関係省庁に署名を提出した。
署名は、安倍晋三・内閣総理大臣、衛藤晟一・内閣府特命担当大臣、萩生田光一・文部科学大臣、加藤勝信・厚生労働大臣宛てで、日本政府が幼保無償化制度の対象外とした朝鮮幼稚園をはじめとする外国人学校幼児教育施設への無償化適用を求めている。水岡俊一参議院議員(立憲民主党)が同席した。
「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会代表」(以下、連絡会)の宋恵淑代表、朴洋子・埼玉朝鮮幼稚園園長らが署名と要望書を提出。内閣府、厚生労働省、文部科学省から計4人が対応した。
フォーラム平和・人権・環境、朝鮮学園を支援する全国ネットワーク、朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会など、署名発起人の8団体による要望書では、
①各種学校も無償化対象と認め、朝鮮学校幼稚部のすべての園児たちの保育料を無償化すること、
②当面、各種学校の幼児教育・保育施設を、幼児教育類似施設等の新たな支援対象として認めること―を求めている。
要望の席上、宋恵淑・連絡会代表は、「制度は、すべての子どもの健やかな学びを支援すると謳っているのに、朝鮮幼稚園がなぜ除外されるのか。本当に悲しく思った。3歳の子どもから仲間はずれにされることは、子どもたちに説明できなかった」と吐露。「世論に訴えるために、集会やパレードを行い、朝鮮幼稚園や朝鮮学校がある地域はもちろん、ない地域からも署名がたくさん寄せられ、心強かった。子ども・子育て支援法の基本理念、様々な学びを応援するという趣旨に立ち返り、朝鮮幼稚園を幼保無償化の対象として認めてほしい」と心情を伝えた。
新たな調査事業、6月末に選定
宋代表「適正、公正な審査を」
宋代表は、幼保無償化の対象外となった幼児教育類似施設への支援を目的とした調査事業についても言及。5月22日に締め切られた同事業について、「朝鮮幼稚園を含めた検討をし、適正で公正な審査を行い、対象に含めてほしい」としつつ、調査事業自体の問題点について、「その自治体から施設に対して補助金が出ているかどうか、という前提条件が課され、調査事業から外された地域もあった」と指摘した。
また、「私たちの朝鮮幼稚園に遊びにきていただきたい」-。文科省担当者たちに要望の席で幾度となく伝えた思いも繰り返した。
朴洋子園長は、「朝鮮幼稚園について話をしたい」と、日ごろどんな思いで子どもを育てているのかについて語った。「朝鮮の言葉に親しみ、歌や踊りを通じてアイデンティティを育み、自己肯定感の強い子どもに育てている。日本社会で胸をはって生きてほしい。そのためにも、幼いころからの教育が大事。制度を必ず適用してほしい。当面、調査対象に含めてほしい」。
朴園長は、さいたま市のマスク除外問題で深く傷ついたことや、その過程で触れた日本市民の温かい支援、今後、市の担当職員が学校訪問を予定している前進点を伝えながら、最後は「差別される側が大きな声を出さないとダメなのですか」と悔しさをぶつけた。
「どう考えても、(幼保無償化から)各種学校だけを除外したことに意図があると思いませんか。問題の本質がどこにあるか、あなたたちに考えてほしい。マスク除外のことで、日本の保育園の先生から謝りのファクスが来ましたが、なぜこの方が謝らなければならないのかと思う。
良識のある方は日本社会にたくさんいる。一筆一筆に込められた気持ちをくみ取って、制度を必ず適用してほしい。当面、調査対象に含めてほしい」
日本市民の発言も続いた。
長谷川和男・朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会代表は、「在日朝鮮人全体にかけられた差別は戦前から続いてきた。私の両親や祖父母が果たして差別に対して闘ってきたのだろうか。これは私にも重くのしかかる問題だった。日本の中で、こんな差別をこのままにしてはいけない。朝鮮大学校を学生支援金給付金の対象から外すなど、コロナ問題に関しても、朝鮮と名をついたものを差別している」と非難した。
日朝学術教育交流協会の嶋田和彦事務局長は、「日本政府がこうした差別を公然と行うことが、それ見たことかとヘイトスピーチする人たちを勢いづかせている。行政が果たすべき役割は大きい。行政にがんばってほしい。日本の課題としての朝鮮問題を解決してほしい」と訴えた。
朝鮮学校「無償化」排除に反対する会の田中宏・一橋大学名誉教授は、「幼保無償化からの朝鮮幼稚園除外は新しい差別が生まれたということだ。非常に重大なことなのに、どれだけ重みを感じているのか。差別をされている立場と、している人とで立場は違う。差別している人は、していないという。されている人がどう受け取けとっているかがポイントだ」と強調した。
水岡俊一参議院議員は、「(ご自身を)差別者と思いますか?」と省庁の担当者に問いながら、「子どもたちを明るい笑顔にするためにがんばってほしい」と思いを託した。
署名提出の後には16時から記者会見が行われた。
調査事業の対象は、第三者の審査委員の審査を経て6月下旬に選定される。
選定後、文科省が自治体に委託をし、保護者や対象施設に対して、子どもを通わせている理由や施設の運営内容について聞く。支援は21年度から実施される予定だ。(瑛)