新型コロナ予防対策—徹底しつつ、明るく楽しく
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5月末、日本各地の朝鮮学校再開に先立って在日本朝鮮人医学協会(医協)東日本本部の看護部会が朝鮮学校教員らを対象にオンラインセミナーを行った。
以前ブログでも紹介したが、看護部の先生方は感染予防の要ともいえる「標準予防対策(スタンダードプリコーション)」について、自作のPDFを用いて分かりやすく説明。基本的な知識のみならず、新型コロナウイルスがある社会で生活を営んでいく上での心構え、意識転換の必要性についても説いていた。関連資料も提供している。
各学校では、その学びを活かした具体的な対策が施されている。6月下旬には東京朝鮮第5初中級学校を訪ね、独自の実践内容を取材した。対応して下さったのは、長年にわたって同校で自発的に保健分野を担当してきた美術教員の金聖蘭さん(59)だ。
新型コロナウイルスの感染拡大にはもともと危機感を持っていた金さんだったが、4月に体調不良を感じて訪ねたかかりつけの病院で喘息の気があることを伝えられ、ショックを受けたという。かかりつけでなければ受診を断られていたかもしれない、という不安も感じた。
「テレビなどで“軽症”といわれる人たちも、命にかかわらないというだけで実際は相当しんどいそうだ。そういうことはあまり伝えられていない。危機感の程度が人それぞれで、いつ感染するか分からない怖さがあった」と金さんは振り返る。学校ごとにリモートワークの頻度や対策内容に違いがあるのも気になったそうだ。
そんな時、医協東日本看護部のオンラインセミナーを知り、参加。「TVで観た情報などをもとに注意喚起しても、なかなか周りの人たちに伝わりにくかったが、『医協がこんな風に言っていた』と言えば自分たちのこととして受け取ってもらえるので心強かった」。
現在は教員、児童・生徒への声がけなどを積極的に行っている。特に初級部低学年には紙芝居などを活用し丁寧に伝えている。
そのおかげで、多くの児童たちが30秒間の手洗いやマスクの管理を一生懸命するようになったとのこと。取材に行った日も、ソーシャルディスタンスを守ったり、なにかあると手を洗ったり…感染予防対策に努める姿を見ることができた。
また各担任たちも、無料配信されている予防マンガを活用したり、医協東日本看護部が作成したポスターを生徒たちに配ったりと、それぞれの方法で指導にあたっていた。
しかしまだまだ油断はできない。金さんは、「状況が日々変化するなかで、その時その時に気づいたことをして対応していくしかない。感染を防ぐためには徹底して予防を続けていくことが必要だが、口うるさいとか大げさと捉えられてしまうことも。また、すごく細かい場面でどうしたらいいのかという判断はバラつきがち。医協の先生たちに『こんな時はこうしましょう』というガイドラインを出してもらい、方法を統一してほしい…」ということも口にしていた。
「心がけているのは決して怒らないこと。●●だからこうしよう、と理由をのべて気づかせることが大切。ストレスを溜めず、前向きに明るい気持ちで続けていかないといけないと思います」(金さん)。さまざまな取り組みから、その姿勢が充分に伝わってきた。
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医協東日本看護部会は朝鮮学校教員だけでなく、保護者にも同様のオンラインセミナーを実施したほか、幼稚園児に予防対策を分かりやすく教えるためのPDFも作成。また、今日は朝鮮大学校体育学部の要望を受け、学生たちを対象にオンラインセミナーをする予定だという。
自身と周りの人たちの身をどう守るか、なにをすべきか。相手によって伝え方、優先して教える内容が少しずつ変わってくる。予防意識をさらに広げていくため、引き続き尽力していることが伺える。
新型コロナウイルスとのたたかいはまだまだ続きそうだ。医協では、生活の困りごとや過去に作成した資料などに関する問い合わせを常に受け付けている。問合せはTEL:03-6268-9817まで。(理)