一日も早い差別の是正を/北関東、福島同胞が34520筆の署名提出
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朝鮮幼稚園をはじめ幼保無償化の対象外となった施設への支援を目的とした調査事業が進むなか、7月14日、衆議員第2会館で茨城、群馬、栃木、福島地域の代表らが、内閣府、文部科学省、厚生労働省への要請活動を行った。
まず、「朝鮮学校の人権を守る会・茨城」事務局次長の加藤薫さんが要望書を朗読した。
要望書では、幼児教育を行っている実態がありながら、朝鮮学校を含む外国人学校を「各種学校」という理由で無償化対象から除外することは、「政治的経済的又は、社会的関係に於いて差別されない」とした日本国憲法や国際法に反する不当な措置であるとした上で、▼各種学校を無償化対象と認め、朝鮮学校幼稚部のすべての保育料を無償化にすること▼各種学校の幼児教育・保育施設を幼稚園類似施設などの新たな支援の対象として認めること―を強く求めた。
その後、各省庁担当者に要望書と34,520筆(茨城:2,224筆、群馬:1,437筆、栃木:1,515筆、福島:14,204筆、新潟:7,074筆、山梨:8,066筆)の署名が渡された。
要望書と署名を受け取った担当者たちはいずれも、「同様の要望内容を何度も受け取った」とし、「みなさまの想いを持ち帰って共有する」とのべた。
続いて要請団が発言した。
茨城朝鮮初中高級学校の高石典校長は、政府によって子どもたちの学びを保障するための施策が施されるごとに朝鮮学校が対象から除外され、ついには幼児までもが外れていることに対し、「あってはならない差別」と怒りをあらわにした。また、コロナ禍で学びの継続を保障するための学生支援緊急給付金の対象から朝鮮大学生が振り落とされそうになっていることにも触れ、朝鮮学校への差別の是正を強く求めた。
日朝友好連帯群馬県民会議事務局長で、「支援する会」役員の宮川邦雄さんは、高校無償化に続き、幼児たちまでもが除外されていることが「日本人として情けない」と、悲しみと怒りをにじませた。
栃木朝鮮初中級学校オモニ会会長を務める李慶恵さんは、朝鮮人として自己肯定ができるよう自宅から遠い同校に子ども3人を通わせたという。そして、「朝鮮学校除外」という壁に当たってきた子どもたちが、いい政策が出るたびに、喜ぶよりも「また除外なんじゃないか」と思わされることに、「やるせなさを感じる」と吐露した。
幼保無償化から除外されたことで、園児までもが集会やデモ行進に参加するようになってしまった日本の現状に、怒りと「呆れ」を感じるとしつつ、最後は「無償化が適用されるまで、オモニたちはここへ来ます」と強い意志をにじませた。
総聯福島県本部の鄭希哲組織部長は、「『地域の声をききながら』というが、われわれの声が本当に届いているのか。どこに反映されているのか」と、疑問をぶつけた。「無償化除外が決まったということは、われわれの声が聞こえていないということ」だとし、形式的に「地域の声」をきくのではなく、各省庁にしっかり「声」を届けるよう強く訴えた。
茨城朝鮮学園理事の金玄虎さんは、自身が卒園した茨城朝鮮初中高級学校附属幼稚班が現在休園中であり、現在、親として待機児童問題に直面していることをあげ、朝鮮幼稚園を含む各種学校への幼児教育無償化を適用し、母校の幼稚園も再開できれば、待機児童問題の解決にもつながるはずだとした。
「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」の宋恵淑代表は、茨城朝鮮初中高の高級部学生たちが、園児に差別を是正する内容の絵本を作った取り組みを紹介した。高校無償化除外で心を痛めているにも関わらず、「子どもが子どもを心配して活動するのは親として誇らしい反面、すごく悲しい」とし、子どもたちの苦しみと、差別をなくそうとしている日本市民の想いを受け取るよう強く求めた。
最後に、同席した立憲民主党の堀越啓仁衆議院議員が発言。
堀越議員は、新型コロナウイルス禍で外国人労働者と外国人学校が多くの影響を受けていることに言及し、無償化の対象が広がらなければ、外国人の子どもたちが日本で教育を受ける機会がますます減っていくことに懸念を表明した。「その国に住む人みなが幸せに生きるために政治家、行政が示してほしい」。
要請団に訪れた同胞たちは、「制度」や「法律」ではなく、そこに暮らす人たちの実態を見て、声を聞いて、行政の役割を果たすよう何度も求めていた。
今後も、各地方から関係府省への要請活動が続く。