西東京「ウリの会」、朝鮮学校に170万円の基金
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7月11日、「立川町田朝鮮学校支援ネットワーク・ウリの会」(以下、ウリの会)が主催する緊急集会「差別・コロナが引き起こす朝鮮学校の危機!」が八王子学園都市センターで行われ、96人が参加した。
集会を主催した「ウリの会」は、2007年に立川と町田の朝鮮学校を支援するネットワークとして結成され、現在、「ハムケ・共に」や「チマ・チョゴリ友の会」など、西東京地域にある7つの朝鮮学校支援団体と、同校のアボジ会、オモニ会が名を連ねている。
「ウリの会」は、コロナ禍で朝鮮学校の運営が厳しさを増すなか、「ウリの会基金」を立ち上げ、基金を呼びかけている。基金発足は、「ハムケ・共に」のメンバーが朝鮮学校の教員たちと子どもたちを心配して学校を訪れたことが始まりで、今年5月25日に準備会議を開き、6月8日には、基金が発足し、広く支援が呼びかけられた。
集会の1部では、「幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会」の宋恵淑代表が、幼児教育無償化からの朝鮮幼稚園が排除されている問題について講演を行った。
宋代表はまず、「多種多様な教育を行っている」ことや「児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しない」などの口実をあげて朝鮮学校を含む各種学校認可を持つ外国人学校幼児教育施設が幼保無償化から除外されたことの問題点をあげ、無償化適用を求めるこれまでの取り組みについて語った。
昨年の「改正子ども子育て支援法」の付帯決議により、今年から、幼保無償化制度対象外となった幼児教育施設に対する「調査事業」が実施される。この「調査事業」は、2021年度以降から、幼保無償化対象外の施設にも支援策を講じるために行われるが、「現在、自治体から保護者や施設へのなんらかの金銭的な支援がなされていること」が前提条件とされているうえ、国が自治体に事業を委託しており、国への「忖度」が起こるのではという問題点がある。
しかし、朝鮮幼稚園を調査対象とするよう求めてきたさまざまな活動が実を結び、幼保無償化対象外施設に対し朝鮮幼稚園に通う子どもが居住する18の自治体が手上げし、15校の朝鮮幼稚園が調査対象となった。
宋代表は、自治体が新型コロナウイルスの対応に追われるなかで、調査事業の通知が来たことに気づいていない担当者が多かったことに触れ、「確認の電話をした際、『すぐに見ます』と、通知に目を通し、国へ『忖度』をせず手を決断を下した自治体もあった。この18というのは無視できる数ではない」と、話した。
そして、これからも▼朝鮮学校とその保護者への補助金支給、▼自治体独自の支援策、▼幼保無償化の拡大を促す請願などを引き出せるよう、自治体に働きかけていくことが大切だとさらなる働きかけを呼びかけた。
また、コロナ対策として、マスクの配布・購入支援事業の対象に「各種学校の認可を受けた外国人学校の児童生徒及び教職員」「各種学校(うち幼稚園、小学校、中学校、高等学校に相当する課程。外国人学校を含む)」と明記されていることをあげ、「仲よくしようとすれば、各種学校や外国人学校を含むことが十分にできる。このように『日本政府、やればできる』という部分もしっかり使い、働きかけていきましょう」と強く訴えた。
本来救うべき人を救えなくなっている―
続いて、朝鮮学校の保護者と教員、日本の支援者が発言した。
西東京朝鮮第1初中級学校幼稚班の保護者である黄琴実さんは、幼保無償化問題の活動に取り組むようになり、「マイノリティにしかわからないことが見えてきた。同時に、無関心な人が大半で、何が差別なのかをわかっていない人が多い」と話し、最後まで力を合わせて闘っていきたいと語った。
町田市への要請を重ねてきた西東京朝鮮第2初中級学校幼稚班保護者の裴夏子さんは、この間、「最大の悲劇は悪人による圧力や暴力ではなく、善人による沈黙である」というキング牧師の言葉が頭をよぎったという。「何度も足を運ぶので、中には心が動いた職員もいたが、やはり、沈黙を守ることしかできないシステムになっている」(裴さん)
裴さんさんは、「小さいことでも、一つひとつ進むことで大きな発展へとつながると信じている」とし、自分たちの現状を正しく知ってもらうため、すべての差別に対して、声をあげ続けていきたいと語った。
西東京第1初中幼稚班の主任を務める方香織さんは、朝鮮幼稚園での5領域にわたる教育の取り組みと、コロナ禍で休園を余儀なくされるなか、日本各地にある朝鮮幼稚園ネットワークを最大限に活用し、子どもたちにパネルシアターや実験などの動画を配信したことをあげ、「幼保無償化の対象から朝鮮幼稚園が排除される理由はどこにもない。これからも精いっぱい働きかけていく」と声を震わせた。
集会には、国立市子ども家庭部長の松葉篤さんが参加した。
国立市は、「幼児教育の推進」を掲げ、幼稚園や幼稚園類似施設の園児を対象に月額で第一子3300円、第二子以降3500円を支給してきた。幼保無償化が始まった昨年10月からは、幼保無償化の対象外となった認可外保育施設、外国人学校の幼稚部も支給対象とした。松葉さんは、「公務員が制度や規定を守ろうとするばかりに、差別をする意識がなくとも、本来救うべき人を救えなくなっている」と指摘した。
また、「幼保無償化を考える東村山の会」の七森繁満さんは、同会の結成後、市議や市の生活文教委員会と面談し、働きかけた結果、市の現状を把握できたと手ごたえを語りながら、これからも引き続き活動をしていきたいと語った。
1部の最後に、各種学校を無償化対象と認め、朝鮮学校幼稚部園児たちの保育料を無償化するよう日本政府に求める要求書が朗読され、拍手で採択された。
「人間の本性が可視化された」—
2部では、西東京第1初中の申俊植校長と西東京第2初中の司空曉校長がコロナ禍による朝鮮学校への影響について報告した。
申校長は学校が再開した際、学生たちに「自粛期間は、人間、社会の本性が可視化された期間だった。ストレスの矛先を他人に向けて攻撃する『本性』もあったが、このように朝鮮学校をいの一番に心配し、駆けつけてくれたことも人間、社会の『本性』だ」と、話したという。「朝鮮人として堂々と生きていいんだよ」と自身が言うより、日本の支援者のこのような活動が、学生たちを勇気づけているとし、両校長とも感謝をのべた。
その後、「チマ・チョゴリの会」の松野哲二代表が「ウリの会」発足と経過について報告し、立ちあげからわずか1ヵ月で110人から寄せられた170万円の基金の目録が、愼校長と司空校長に手渡された。
松野さんは、まだ目標額に足りていないとし、集会では基金拡大が呼びかけられた。
最後に、「連絡会」の千地健太さんが、7月17日に行われる「拡大金曜行動」への参加を呼びかけた。
「朝鮮学校無償化排除に反対する連絡会」が主催する同行動は、18時から、文科省前で40分間行われる予定だ。(蘭)