裁判糧に解決策を―広島で緊急抗議集会
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7月27日付で最高裁で上告が棄却された広島無償化裁判の結果を受け、8月7日に「広島無償化裁判緊急抗議集会」が広島朝鮮初中高級学校で開かれた。
広島では2013年8月1日、広島朝鮮学園と生徒、卒業生110人が国を相手に指定の義務付けを求めた行政訴訟と慰謝料を求めた国会賠償請求訴訟を広島地裁に起こしていた。
以下、朝鮮新報から転載。
https://www.chosonsinbo.com/jp/2021/08/09-30/
集会では、弁護団の足立修一弁護団長が発言した。
足立弁護団長は、今回の最高裁決定を「逃げの判決」と指摘。広島ではこれまで、朝鮮学校を無償化の対象とするための根拠となった「規定ハ」の削除が国の政治的判断であることを主張してきており、その違法性について司法が判断を下すよう繰り返し求めてきた。しかし1審、2審に続き「司法は最後(最高裁)まで規定ハ削除の違法性についての判断を避けた」(足立弁護団長)。
また、高校無償化制度からの朝鮮学校排除は「植民地主義の表れ」であると非難。国連の人権諸機関から日本政府に対し朝鮮学校への差別を無くすよう、何度も勧告が出されていることを指摘しながら、「それが日本政府に対する国際的な評価。政府が開き直っても許される問題ではない」と語気を強めた。
最後に、約8年半の裁判を振り返り、「裁判で負けたからといって、問題が終わったわけではない」と言及。今後も裁判の経験を糧にさまざまな方法で解決策を模索できるとしながら、問題が解決するまで闘っていくことを誓った。
提訴当時、大学生で現在同校教員の原告(27)は「友情」「連帯」「平和」「尊重」をうたった東京五輪にふれ、「連日『平和の祭典』に関するニュースを目にする。そんななか最高裁への上告が棄却され、朝鮮学校に通う子どもたちの権利が司法によってはく奪された。こんな日本社会のどこが『平和』なのか」と最高裁決定を批判した。
一方で、裁判闘争を通して「得たものもある」とキッパリ。「自身が朝鮮人であることにより誇りを持つことができた。日本政府や司法がいくら否定しても、私たちが朝鮮人であることは変わらない。生徒たちが朝鮮人としての自尊心を養えるようこれからも全力でサポートしていく。今日からが新たな闘争のスタートだ」と決意を新たにした。
広島初中高の生徒(高3)は1,2審の不当判決を支持した最高裁の決定を受け、演劇「植民地の国語時間」が思い浮かんだという。
この演劇は朝鮮大学校の演劇部が作ったもので、日本政府から弾圧を受ける民族教育や朝鮮語がテーマになっている。
生徒は、「弾圧に順応することは、自らの足で立てず、人の手が加えられないと生きられない盆栽のようだ」と劇中の表現を用いながら「地に足をつけしっかり根をはり、強く生きていくことが本当の勝利ではないだろうか。ともに勝利するまで闘い続けよう」と参加者たちへ呼び掛けた。
「差別がある現状に対し、黙ったままでいることは差別を認めるのと同じ。たくさんの人がもっと声を上げていこう」―。民族教育の未来を考える・ネットワーク広島の村上敏代表は、「裁判が終わったいま、国会や文科省に直接要請をするなど、さまざまな方法を駆使して、日本各地の支援団体が結束し活動していく」と語った。
集会の最後に李昌興校長は、
「広島無償化裁判では100人を超える在校生・卒業生が立ちあがり、8年間、原告であり続けてくれた。
ある原告は、最高裁に署名を提出するとき、仕事があるにも関わらず『後輩のために闘いの先頭に立ちたい』と同行を申し出てきた。このように裁判を闘う過程でたくさんの卒業生たちが『自分たちのような思いを後輩たちにはさせたくない』と全力で闘ってきた」と力を込めた。
そのうえで、今年学校創立75周年を迎えた同校が「先代から受け継いできた民族教育のバトンを繋いでいけるよう、教育に力を注いでいく」とし「どんな困難にも皆でしっかりとスクラムを組んで乗り越えていく」と強い決意を示した。(朝鮮新報・金紗栄)