朝鮮学校にスクールカウンセラーは必要?/在日本朝鮮人人権協会福祉情報交換会学習会
広告
9月11日、在日本朝鮮人人権協会による30回目の福祉情報交換会学習会「スクールカウンセラーとは」がオンライン形式で行われ、朝鮮学校の教員や臨床心理士を目指す学生など、約35人が視聴した。
学習会の講師をつとめたのは、臨床心理士、公認心理士の資格を持つ姜潤華さん。姜さんは、宇部朝鮮初中級学校(当時)、山口朝鮮高級学校(当時)、朝鮮大学校を卒業後、在日本朝鮮人人権協会を経て、現在は山口朝鮮初中級学校や日本学校で非常勤のスクールカウンセラーを務めている。
学習会ではまず、スクールカウンセラーの役割と、姜さんのこれまでの経験が語られた。
姜さんは、数々の相談を受けてきたことを伝え、
子どもからは、心身の不調や友人関係、先生との関係、家族関係、進路や自身の性格などについて、
保護者からは、子育て、パートナーや家族、発達障害や精神疾患などについて、
教職員からは、児童生徒や保護者に関する、いじめ、家庭内不和、教職員間の人間関係などの悩みを聞いてきた、と語った。
加えて、スクールカウンセラーを務めるにあたって、「専門家でもわからないことはわからないと言う」「自身の守備範囲を見極め、他人につなぐ=チーム(学校教員)として動く」「偏見や知識に基づいた枠にはめすぎず、さまざまな要素を探す」など、心がけている点をあげた。
また、「不登校」の捉え方、「○○すべき」という学校組織の息苦しさ、教員の多忙さなどの点は、朝鮮学校と日本学校とは共通した点がある一方、
日本学校は、国家が運営していることから国庫補助があり、保健教育や食育、病気対応、図書館や特別支援学級の運営の過程で、外部の専門家を呼び、必要に応じて児童相談所や警察なども対応に立ちあう―など、さまざまな専門家と広く関わりを持っていることについて言及した。
人権協会の会員を中心に事前に行った在日同胞向けのアンケートの調査報告(回答63)も共有された。
アンケートでは、「朝鮮学校にもスクールカウンセラーが必要か」という問いに、約9割が「はい」と回答した。「はい」の回答には、「不安定な世の中で、誰もが心の病にかかる可能性があるので、専門家が必要」「教員や児童同士の相互扶助、『一人はみなのために』という精神で、子どもたちにケアの役割を押し付けていては、根本的な解決に結びつかないのでは」「在日コリアン特有の悩みをかかえている」「教員への負担が大きい」などの意見が寄せられた。
一方、「いいえ」「その他」の回答では、「教員と子どもたちがしっかり信頼関係を築いてほしい」「学校の運営が厳しいなか、専門家を雇うことへのハードル」などの意見があった。
学習会では、アンケートの回答をもとに「朝鮮学校にスクールカウンセラーは必要か」というテーマで意見交換が行われた。
スクールカウンセラーとして働く福岡在住の同胞女性は、「朝鮮学校は児童数も少ないので、教員と子どもたちの信頼関係があれば、朝鮮学校に専門的なカウンセラーはいらないのではという意見だったが、朝鮮学校にも発達障害児がいる。子どもの発達について判断をし、医療機関や保護者に伝える―という点で、外部の専門家が必要だと思う。しかし、こちらが必要だと思っていても、現場がどう思っているのか、また、スクールカウンセラーでありながら保護者―という狭い同胞社会特有の二重関係を考えると、センシティブな問題を扱ううえで課題が多い」と意見をのべた。
その後も「学校関係者ではない、総聯や女性同盟、朝青の活動家などと連携できないか」「システムとして、ボランティアのような形で、試しにスクールカウンセラーを配属してみれば」など、さまざまな方法や課題があげられた。
学習会を主催した在日本朝鮮人人権協会副会長の金静寅さん(社会福祉士)は、「同胞社会の中にはさまざまな分野の専門家がたくさんいる。必要に応じてつながっていけるようなネットワークづくりを、学習会などを通じてしていければ」と会を締めくくった。
同連続学習会は、生活に密着したさまざまなテーマの学習を行っている。
次回は、「児童虐待」をテーマに行う予定だ。(蘭)