ウイルス陽性判明で保育園休園、そのとき保護者は…
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9月上旬のある日の午前中、息子が通う保育園から一斉送信メールが届いた。
「保育園職員の1人がPCR検査で新型コロナウイルス陽性と判明」
きた、共働きの保護者にとって「魔の宣告」だ。園で陽性者が出たのは今回が初めてではない。東京都内の感染者数の伸びからしても、1度ならず2度3度起こってもおかしくないと感じていたが、雑誌編集の締め切り直前というタイミングは最悪だった。
園内で陽性者が出た時の園の対応は、保健所の調査を受け、濃厚接触者の有無や今後の対応を検討し、園内施設の消毒、この間は臨時休園。感染の拡大がなければ、数日間の休園ののち再開となるが、事情によって休園期間が延長されることもある。濃厚接触者とみなされた職員や園児はPCR検査のうえ、自宅で一定期間の健康観察となる。対象となる園児の家庭には個別に連絡が来ることになっているが、うちには連絡がなかったので、とりあえずこの点では一安心。
保育園の休園によって、自宅保育となった。急な保育園の休園や子どもの病気などのケースは、職場で在宅勤務を取り入れている筆者がメインで対応し、仕事の特性上、毎日出勤の妻が有給休暇を使いながらサポートするというのが我が家の決まりになっている。このような事態となった時の対策はある程度考えていたが、その時になってみないとわからない部分も少なくない。すでにアポが入っている出先での取材だが、これは日程変更や担当を代わってもらうことは現実的にむずかしい。どうしても変更がきかない部分は妻が休みを取って担当してもらうことにした。家庭内の役割分担に算段がついた後、事情を勤め先に説明し、在宅勤務に切り替えた。
以前のエントリでも書いたが、「在宅勤務with幼児」はきつい。朝8時過ぎから夕方6時まで、イヤイヤ期に入った2歳目前の息子をワンオペ自宅保育しながら通常のペースで仕事ができるほど子育ても仕事も甘くない。日中は息子の昼寝の時間をのぞけば、30分と落ち着いてパソコンの前に座っていられない。原稿執筆は、子どもが寝ている夜9時から早朝にかけての時間を使って集中的にこなし、なんとか締め切りに間に合わせ、校了日を迎えた。幸い、保育園ではそれ以上の感染拡大はなく、臨時休園も数日で済んだ。
状況が落ち着いて、「ようやく日常に戻れる」と思った。いや、待てよ、これは果たして「日常」なのか。これこそまさに「コロナ禍という『非日常』が『日常』になってしまった」ということではないのか。
この間、仕事の進捗が明らかにペースダウンし、職場には多大な迷惑をかけてしまった。感染した職員も、休園になった保育園も、仕事を休めない妻も、親の言うことを聞いてくれないわがまま放題の息子も、誰も悪くない。しいていえばウイルスが悪いのだが、このようなタイミングにあたった自分の運の悪さを呪うしかない。
急な事情で共働きの親が平日、自宅で子どもの面倒をみなくてはいけなくなる、これは昨年来の新型コロナウイルス禍に限らず直面する「育児あるある」だが、急な保育園の休園というコロナ禍ならではのケースはダメージも大きい。
今回のようなことは間違いなく今後も起こるので、仕事をいつでも引継ぎできる状態に整えておく、どんなトラブルにも対応できるよう可能な限り前倒しして進めておく、このような場合の対応について夫婦でさらに綿密に話し合っておく、といったことの必要性をあらためて痛感した。夫婦だけではどうにも解決できないケースもある。そういうときは双方の実家を頼ったり行政や民間の預かりサービスを利用したりするのも手だが、コロナ禍でいつでも、どんなタイミングでも頼れるというわけではない。
さらに恐ろしいのは、家庭内で感染者が出ること。これも「万が一」という話ではなく、十分に起こりうることだ。
新型コロナウイルスの感染「第5波」の只中、日本全国各地で保育所の休園が相次いでいる。子どもの世話のために保護者が仕事を休まざるを得ないケースも少なくない。さいわい、在宅勤務があり周囲のサポートも受けられる筆者は恵まれているほうだと思うが、仕事や家庭環境の面で対応がむずかしい保護者に対しては行政や企業によるさらなる支援が求められるだろう。(相)