「風通しのいい本屋」へ
広告
現在イオ11月号を準備中だ。特集は「私と本の物語(仮)」。各界各層の人々に自身の読書遍歴を振り返ってもらいながら、人生を変えてくれた本、進む道を照らしてくれた本など、忘れられないエピソードを紹介してもらう。
また、日本各地にある“街の本屋”を訪ね、どんな経緯や思いでそこにお店を開いたのか、選書のこだわり、お客さんとの出会いなどを個性的な店主の方々から聞く企画も。
私は先日、神奈川・大船にあるポルベニールブックストアを訪ねた。同店は▼「風通しのいい本屋」、▼「みんなのための本はない。あなたのための本がある」―とのコンセプトを掲げている。
私がこの本屋を取材しようと思った理由は、同店twitterの紹介文に「ヘイト本置きません」という一言があったからだ。
このことを店主の方にお話しすると「本来、それを“あえて謳わなきゃいけないこと”の方がおかしい。普通のことなのに、そのことでうちが目立っちゃうのも違和感があるというか…」と控えめなお返事が。
しかし、私は2019年に小学館が出版する週刊ポストが「韓国なんて要らない」特集を組んだ際に市民有志が実行したデモに参加したことがあり、そこでの一言が心に残っていた。
「自分は在日コリアンです。電車の中でもコンビニでも本屋でもヘイト表現ばかり目にする。私たちは日常生活のどこで息つぎをすればいいんですか?」―
本来、傷つけられるはずのない場所で不意に受ける攻撃、そして持つ失望感…。「ヘイト本置きません」の一言が、どれだけ安心感につながるかをお伝えした。
また、毎週お店にどんな本を入荷するか選書する過程で、意図せず社会勉強ができているというお話が面白かった。
「いまどんな本が出版されているかを見ると、世界そのものがわかる。自分自身を持って選書すると、その作業を通して必然的に社会を知ることができる。自分はこれで人権に対する意識が磨かれた」
選書から棚づくりにいたるまですべて一人で行う。もともとバックパッカーだったという店主の深い好奇心が豊かなコンセプトにつながっているのだなと感じた。
他にも興味深いお話をたくさん聞くことができた。より詳しい内容はイオ11月号にて。(理)