頭の中の編集会議
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現在、イオ編集部では来年度の誌面コンセプトや内容についての会議を重ねている。ここ数年、「元気が出る雑誌」とのコンセプトを意識して雑誌作りをしてきたが、個人的に来年度はもっと感覚的に、「読んでいて楽しい雑誌」を目指したいなと考えている。
長引くコロナ禍、在日同胞社会と朝鮮学校を取り巻く厳しい情勢、日本各地で進む歴史修正主義や排外主義の流れ…。在日コリアンとして日々を暮らしていくことは本当にしんどい。
しかし、イオをめくっている時間は、楽しくて、笑えて、発見があって、もっと知りたい、もっと見たい、こんな人がいるんだ、あんなことを思い出す…など、明るい気持ちになってほしい。それが結果的に「元気が出た」につながるし、「また読みたい」「そろそろイオが来るかな」と思ってくれるファンの獲得にも結びついていくのではないだろうか。
自分たちの権利の問題、数々の社会問題に切り込む内容は必ず入れなくてはいけないと思うが、「内容がかたい」「明るい未来を感じたい」「もっと前向きな話が読みたい」という声が多々あるのも事実。要はバランスなのだが、なんとも難しい。イオが取り上げなくては、他にどの雑誌が取り上げるのかという使命感もある…。
ひるがえって、自分自身は読者としてどんな雑誌が読みたいだろうかと考えると、▼新しいことを教えてくれる(こんな人がいるんだ、いま社会にこんなことがあるんだ、こんな考え方があるんだ、こんな取り組みで成功しているんだetc.)、▼自分が興味のある、もしくは関係するものについて書かれている(ざっくり言うと親近感、共感、安心感)―は重要な要素かなと思った。
もう一つ気になるキーワードは「ローカル」だ。記者になって9年目。今年になって、人生で初めて佐賀県と鹿児島県を訪ね、そこに暮らす同胞たちの暮らしや意識について聞いた。身近な共感できるエピソードから、その地方ならではのハッキョとの関わりまで、たくさんの話を聞いて何度も目を開かされた。とても面白くてたくさん笑った。
地方ごとにそれぞれの同胞社会の形があるー、そんな当たり前のことを改めて認識し、もっと早く来るべきだったと反省した。
同様に、もう何年もイオの記者が行っていない地域がたくさんある(具体的には山梨、富山、石川、福井、新潟、鳥取、島根、徳島、香川、愛媛、高知、宮崎、長崎、沖縄など)。そこに暮らす読者たちは近年のイオをどう見ているのか、距離感が生じてしまってはいないか。とても気になった。
なにより私たち自身、長年行っていないからその地方に暮らす同胞の顔を全然知らない。読者の顔が想定できなければ、何を届けたらいいか分からなくなるのは当然だ。個人的に来年は、「地方重視!」を掲げたい。
ほかに興味を覚えるのは普通の人の日々の話だ。生活の中での苦しみとそれを乗り越えた経験、心躍った瞬間、ほっとできる時間、抑圧への怒り、ちょっとした喜び、ささやかなチャレンジ、他者と心通わせた出来事―。自分はどちらかというと、そういった小さな話に惹かれる。
問題は、こうした考えをどうやって形にするかである。
なにか取り上げてほしい、やってほしい連載テーマのアイデアがあれば、読者カードや以下のお問い合わせフォームから自由にお寄せ下さい。(理)