新版『日本の中の外国人学校』2月10日に発刊!
広告
2月10日に明石書店から発行される『新版 日本の中の外国人学校』のお知らせです。
※目次、購入の詳細は、明石書店HPを参照ください。
https://www.akashi.co.jp/book/b600031.html
本書は、月刊イオで2017年2月から18年11月まで掲載された連載「日本の中の外国人学校」で紹介したものを加筆、修正したもので、19世紀に遡る日本の外国人学校政策を振り返りつつ、外国人が増え続ける日本で、今後どんな教育の形が望ましいかを、識者とともに考え、提言をまとめました。
ご協力いただいた外国人学校関係者、識者の皆さまに感謝申し上げます。
以下、長くなりますが、私たちがこの本に込めた思いを記します。
●続々と生まれる外国人学校
イオ編集部が2006年に「日本の中の外国人学校」を出版してから、15年の月日が経ちました。この間、リーマンショックにより多くのブラジル人が失職して本国に帰国し、ブラジル学校の一部が閉鎖され、現在も厳しい運営を強いられています。
日本では、19世紀末から国際学校や中華学校などの外国人学校が運営されてきました。そして、1945年8月の敗戦直後から続々と建てられたのが朝鮮学校。また、日本が世界の国々と関係を持つなかでインドネシア、中華学校も生まれました。
1990年代に入ってからは、不足する労働力を補おうと、かつて移民として日本から南米に渡った人たちとその子孫が大挙来日し、ブラジル学校が次々と建設され、2000年代には経済のグローバル化によってインドなど新顔の外国人学校が自前で建てられた。13年には世界初のネパール学校「エベレストインターナショナルスクールジャパン」が東京で産声を上げました。
2010年に民主党政権が公約として掲げた高校無償化制度が実現され、各種学校認可を持つ外国人学校に初めて国庫補助が実現されました。このことは「すべての者」の「教育への権利」を実現させるための画期的な一歩でした。
しかし、日本政府は、人数では最多の朝鮮高校を政治的外交的な理由を持って対象からはずしたことで、国際社会の長年の要請であった日本の高等教育の無償化は、「画龍点睛を欠くことに」(田中宏・一橋大学名誉教授)なりました。
朝鮮高校の排除は、日本と国交のない朝鮮民主主義人民共和国への制裁の一環として、超法規的な方法で断行されました。日本政府は、在日朝鮮人を「人質」のように扱い、朝鮮半島にルーツを持つ子どもたちの権利を奪っています。
子どもが学ぶ権利は、国籍や民族によって、差があってはならないことは国際人権条約の要請であり、普遍的権利です。日本の外国人学校政策はダブルスタンダードであり、2019年10月から始まった幼保無償化からの外国人学校幼稚園の除外も、その流れの中にあります。二重基準が新たな差別を生み続けています。
●コロナ禍のなか、新たな差別
さらに2020年春から始まった新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本学校に通う子どもと外国人学校に学ぶ子どもたちとの間に格差が生じています。
現在外国人学校は、日本では正規の学校とは認められず、各種学校という法的地位にとどまらざるを得ません。外国人学校が法的地位を向上させるためには、法改正が必要です。
日本の公私立学校のように「1条校になる方法もある」と意見する人もいます。しかし、「1条校」になった場合、日本の学校指導要領に従い、日本の教員免許を持った人たちが教員という制約があります。
「日本人」を前提にした教育システムをもって、外国にルーツを持つ子ども、日本とは異なる文化的背景を持つ子どもが豊かに学び、育つことができるのだろうか―。本書の問いはこの一点に尽きます。
外国人学校に関して、日本の法令上定められた定義はありませんが、本書では主に外国籍の子どもを対象に独自のカリキュラムを編んで運営している学校を念頭に置き、取材を重ねてきました。
第1章では、外国人学校の現場をルポしました。
タイプ1では、近年生まれた世界最初のネパール学校、増え続けるインド学校、フィリピンの子どもを教える国際子ども学校、アメリカと日本の国際結婚カップルの間に生まれた子どもを教えるアメラジアンスクール・イン・オキナワ、イスラム系の国際学校などを紹介しました。
タイプ2では、1990年以降に続々と建てられ、リーマンショックを乗り越えてきたブラジル学校を紹介しています。
タイプ3では、1世紀以上の歴史を誇る横浜山手中華学校、東京横浜独逸学園、戦後に生まれた東京インドネシア共和国学校、カネディアン・アカデミイなど、老舗の外国人学校を扱いました。タイプ4では、日本の植民地支配によって生まれた朝鮮学校の今を追いました。「外国大学日本校」というカテゴリーが認められたのは、2005年のテンプル大学日本校が第1号だが、近年少しずつ増えている外国大学日本校も2校紹介しています。
●これからの外国人学校政策を考えるために
第2章では、日本の外国人学校政策の歴史を振り返りました。2003年の大学受験資格問題、2010年の高校無償化問題は日本の外国人学校政策の大きなターニングポイントとなったが、特定の外国人学校を排除する二重基準がまかり通っています。
第3章では、これから日本が外国人学校や外国籍の子どもたちの学びを、日本社会として、どう支援していけばいいのか。文部科学省や地方自治体の方々、学者や外国人の子どもを支援している人たちに話を聞きました。巻末には、外国人学校をめぐる国連勧告や外国人学校リストを掲載しました。
日本にある外国人学校は、日本の公立学校がすくうことができない教育ニーズを自力で満たそうと、日夜努力を続けています。日本とは違う文化的背景を持つ子どもたちの見守る教育現場は、無二の学び舎であったし、そこには、いつも子どもたちの成長を育てる外国籍市民、そして日本市民の支える姿がありました。
本書を通じて、外国人学校に学ぶ子どもたちの姿、支える人たちの思いを知っていただきたい。日本に学ぶすべての子どもたちが国籍、民族、出自の違いを越えて、等しく学べる日が来ることを願っています。(本書まえがきを加筆・修正)
『日本の中の外国人学校』目次
『新版 日本の中の外国人学校』に寄せて
第1章 ルポ 日本の中の外国人学校
Type 1 経済のグローバル化、国家の間で
①エベレスト・インターナショナルスクール・ジャパン〔東京都杉並区〕
②ブリティッシュ・インターナショナルスクール〔神奈川県海老名市〕
③Ecumenical Learning Center for Children(ELCC)国際子ども学校〔愛知県尾張旭市(現在名古屋市)〕
④インディア・インターナショナルスクール・イン・ジャパン(IISJ)横浜校〔神奈川県横浜市〕
⑤アメラジアンスクール・イン・オキナワ(AASO)〔沖縄県宜野湾市〕
⑥インターナショナル・イスラーミーヤ・スクール大塚(IISO)〔東京都豊島区〕
Type 2 リーマンショックを越えて――ブラジル学校
①TS学園〔埼玉県児玉郡〕
②日本ラチーノ学院〔滋賀県東近江市〕
③サンタナ学園〔滋賀県愛荘町〕
④HIRO学園〔岐阜県大垣市〕
⑤エスコーラ・ネクター〔愛知県豊田市]
Type 3 古くは19世紀から 老舗の外国人学校
①横浜山手中華学校〔神奈川県横浜市〕
②東京横浜独逸学園〔神奈川県横浜市〕
③東京インドネシア共和国学校〔神奈川県横浜市〕
④カネディアン・アカデミイ〔兵庫県神戸市〕
コラムNew Type 外国大学日本校、行政も支援
北京語言大学東京校〔東京都豊島区〕
天津中医薬大学 鍼灸推拿学院 神戸校〔兵庫県神戸市〕
Type 4 民族教育を守り75年――朝鮮学校
1●芯を持ち、時代に沿った変化を
2●地域とのかかわりの中で
3●卒業生、現役生徒たちの活躍
4●学びの権利を求めて
第2章 提言 外国人の子どもに教育の権利を
日本の外国人学校政策と21世紀の課題
1●日本の外国人学校政策
2●「パンドラの箱」あけた大学受験資格問題
3●深まる外国人学校の連携
4●高校無償化と朝鮮高校の排除
5●幼保無償化から排除、コロナ禍でさらに困窮する現場
6●外国につながる子どもたちの教育はいま
7●外国人学校を正式な学校に
第3章 インタビュー 外国人学校と日本社会
「学ぶ権利」の保障、国が新しい一歩を[田中宏]
文化の多様性こそ、日本の財産[尾辻かな子]
学校の内と外に学びの場を[田中宝紀]
地域から多文化共生への理解促進を[愛知県県民文化局 県民生活部 社会活動推進課 多文化共生推進室]
義務教育は、無償で受け入れている[文部科学省大臣官房国際課]
〈資料〉①外国人学校リスト
②国連人権機関の懸念と勧告