インサ(挨拶)と声かけ
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先週、愛媛へ出張した。イオから記者が行くのは5年ぶり、私にとっては初めての地だ。
愛媛で取材できたのは「トンポへ会いに」「ハムケ共に」「30s,40s」「社会人サークル」「こうして出会いました」の5つ。7〜8月号にかけて紹介していく。
今日のブログでは、現地で聞いて印象に残った言葉を紹介したい。
四国朝鮮初中級学校(松山市)を訪れた時のこと。翌日には運動会が予定されており、オモニ会と女性同盟の方々がチヂミ作りに勤しんでいた。
私も5枚ほど手伝わせてもらった後、一人のオモニに四国初中の良さについて訊いた。
結婚を機に県外から引っ越してきたそのオモニは「最近、声かけって大事だなと思うんです」としみじみ呟く。
どういうことかさらに尋ねると、
「インサ(挨拶)だけしてそのまま素通りするのと、『元気してるの』とか『最近どう』という風に声かけするのとは違うなと思うんです。気にかけてくれるんだな、放っておいてくれないんだなって(笑)自分の存在価値とか、ここにいていいんだなという気持ちを育んでくれるのが声かけなんじゃないかなって」
そのオモニは、60〜70代の女性同盟の方々も学校周辺の草むしりをしてくれていること、同校を卒業した子どもにも会えば必ず声をかけてくれる人がいること、愛媛の同胞みんなで四国初中の子どもたちを見守ってくれていると感じることなどをのべながら、そうした気持ち、習慣が「子どもたちにも根づいている」と微笑んだ。
話を聞きながら、朝鮮学校や同胞社会には声かけの文化が強くあるなと深く頷くとともに、普段まさに「インサ」しかしない自分を省みた。
例えば社内で他の部署の先輩や後輩と顔を合わせても、「アンニョンハシムニカ(こんにちは)」「スゴハシンミダ(お疲れさまです)」と言ったあと、それ以上の言葉が続かない。何かプラスで声をかけたいなとは思うのだが、いろいろ考えてしまって不発に終わるのである。
しかし声かけが上手な先輩というものはいて、振り返ると確かにほんの数十秒、数分の雑談に支えられていることがある。
同胞の数が少ない地域においては、こうした声かけが本当に日々の関係とコミュニティをつなぎ、築いていくものなのだろうなと感じた。(理)