「ウリ」と出会う場所
広告
私の母校・北海道朝鮮初中高級学校では、毎年「オータムフェスティバル」という行事が開催されている。日本の学校に通う同胞の子どもたちが同校へ集まり、児童・生徒による学芸会を鑑賞した後、同級生や先輩後輩らと1泊2日で交流を深めるイベントだ。
北海道は、札幌市に1校のみ朝鮮学校があり、遠方に暮らす子どもたちのために寄宿舎が整備されている。しかし「まだ子どもが小さいから中級部や高級部から通わせる」という家庭も多い。私も通える距離に家がなかったため、小・中学校は地元の公立校へ通った。
同級生からオータムフェスティバルに招待するハガキが届いたのは中2の時。それまでも自分が朝鮮人であることや、いくつかの朝鮮語(アンニョンハシムニカ、コマッスムニダ、アッパ、オンマ、ハンメなど)は知っていたが、朝鮮学校へ行くのは初めて。そういう場所があるのだと認識したのもその時だった。
自分より小さい子どもたちが学芸会で立派に朝鮮語のお遊戯をする姿や、朝鮮語でコミュニケーションを取りあい、胸を張って合唱する同級生や先輩たちの表情。そうしたものがなんというか衝撃的だった。
その日の夜、参加者は泊まり込みで朝鮮学校の生徒たちと一緒に感想を語り合う。自分の番になった時、何を話したかは忘れてしまったが途中から涙が止まらなかったことを覚えている。
どういう心情だったのだろう。同じ朝鮮人がこんなにたくさんいるんだという驚き、自分に連なる物事を知った喜び、当然のように朝鮮語を話す小さい子どもたちへの羨望、まだまだ何も知らない自分自身への焦り、そういう気持ちが入り混じって、胸がいっぱいになったのだと思う。
いま振り返ると、「ウリ」(自分のルーツにつながる文化や歴史に加えて、同じ朝鮮人である人々の輪、つながり)というものに初めてしっかり触れたのがオータムフェスティバルだった。
家に帰っても、普段通り学校へ通っても「ウリ」の雰囲気が忘れられなかった。中3の時、進路希望を書く紙には第1から第3候補まですべて「北海道朝鮮初中高級学校」と記入して提出した。
自分の経験を通してしか言えないが、「ウリ」と出会えるのは幸せなことだと思う。たくさんのものが流れ込んできてバチバチと色々な感情が生まれ、そこから改めて自分自身と向き合うことができる。見渡せるもの、選択できるものが広くなる。
“学校がない地域のコッポンオリ(花のつぼみ=子ども)たちにもウリハッキョを!”
そうした経験の当事者として、上のキャッチコピーから始まる取り組みには大きな意義があると感じた。在日本朝鮮青年商工会が主管する「青商会学園」である。
現在、22の県には朝鮮学校がない。普段「ウリ」に触れることが難しい子どもたちを朝鮮学校へ招待し、3泊4日でさまざまな出会いの機会を用意するプロジェクトだ。実現にあたり、現在はクラウドファンディング形式で広く関心を集め、協賛を募っている。
たくさんの子どもたちに「ウリ」の芽を渡せるように。クラウドファンディングの締切まで残り3日。多くの方に応援してもらいたい。
※プロジェクトの支援はこちらから↓
https://camp-fire.jp/projects/view/591642#menu
「青商会学園」の開催期間は8月9日(火)~12日(金)。イオからも取材に伺い、本誌にて紹介する予定だ。(理)