思い出の場所いろいろ(朝鮮新報社、移転します!)
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考えてみると思い出の場所がたくさんある。
生まれ育った町、幼い頃に毎年遊びに行っていたウェハルモニの家とその近辺(東京・石神井)、高級部時代を過ごした札幌、朝鮮大学校がある小平、社会人になって一人暮らしを始めた板橋、累計5ヵ月ほど滞在したことのある平壌、数々の出張先、そして現在の場所に移転する前の会社所在地であった文京区・白山。
先日、その白山を7年ぶりに訪れた。なんとなしにTwitterを眺めている時に「白山の週末本屋です」という紹介文が書いてあるアカウントを見つけ、(なにっ! 本屋? こんなお店あったっけ?)と気になったのがきっかけだ。久しぶりに「白山」という文字を見て無性に懐かしくもなった。
お店のHPをチェックすると、会社移転後の2019年3月にオープンしたとのこと。ちょうどその週末に読書会も開かれるそうで、すかさず申し込んだ。
当日はイベント開始1時間ほど前に白山へ行き周辺をぶらぶらすることに。白山駅A1出口を上がって会社まで5分ほどの道を歩く。途中にある短い商店街はテナントがほとんど変わっていて懐かしさよりも新鮮さが勝った。
「様変わりしてしまった」というのが率直な所感だが、それでもしばらく歩き回っているうちに当時の空気や情景を思い出してきた。思い出の場所とはアルバムのようなものかもしれない。記憶が薄れても、眺めているうちにその時の出来事、自分の状況、目にしたことなどがだんだんと鮮明になる。
さて、タイトルにも書いた通り朝鮮新報社はふたたびの移転を控えている。数日後にはすべての荷物が運び出され、お盆明けから北赤羽近辺を拠点とする(移転先の詳細や連絡先は後日、日刊イオと月刊イオ9月号で正式に告知します)。
私が白山に通ったのは2年ちょっと。その3倍以上の時間をここで過ごしたことになる。
会社にあるトイレの窓から意外と綺麗な夕焼けが見えたこと、退勤時には東京朝鮮第1初中級学校に通う児童たちが群れだって歩いており、それが当たり前とでも言うように元気なウリマルが聞こえてきて微笑ましかったこと、この場所で経験したさまざまな仕事、建物に出入りする人々とのあいさつや会話…。
その時その時で自覚することはなくても、今までこうした些細な光景や物事にさりげなく心動かされてきたと思う。
今はまだ実感がないが、しばらく年月が経ったら東日暮里の風景を懐かしく思い返す日も来るのだろう。距離が生じるとともに一旦は忘れてしまっても記憶は五感のどこかに残っていて、ふとした瞬間に呼び起こされる。(理)
※8月13日(土)から17日(水)まで日刊イオはお休みです。次回の更新は18日(木)です。