喫緊の課題、オールトンポの力で/ウリ民族フォーラム2022/民族教育支援を討議
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2022年11月20日、朝鮮大学校(東京都小平市)で行われた、在日本朝鮮青年商工会(崔炳琥会長)の「ウリ民族フォーラム2022」(主催=同実行委員会)。第2部「コッポンオリの未来のために~オール同胞の力で民族教育の開花期を開いていこう~」では、民族教育発展のため、「児童生徒数増加」「財政支援」「教員数」に的を絞り、青商会が取り組む支援活動が発表される一方、喫緊の課題を解決するための対策、アイデアが発表された。
●児童生徒数、教員数、財政が緊急課題
フォーラムを迎えるにあたり、青商会中央では、日本各地の朝鮮学園で学校運営に携わる青商会OB、商工連、女性同盟、在日本朝鮮人人権協会の代表ら約20人で「新時代 民族教育支援対策協議会」を立ち上げた。この日の議論は3回に及ぶ意見交換がもとになっている。
「どの地域も頑張っている。しかし、すべてがうまくいっている地方もない。それはなぜだろうか…。各々が持つ知恵、財産が分散しているからではないか。『オール同胞』の力で今そこにある危機、問題点、地方ごとのがんばりを共有する大きなきっかけにしたかった。課題が何かを掘り下げたかった」と語るのは、朴泰憲青商会中央副会長(42)だ。
パネラーは、李忠烈・在日本朝鮮茨城県商工会会長(54)、金舜植・人権協会会長(51)、呂成姫・女性同盟中央組織部長(45)、李英哲・朝鮮大学校広報室室長(48)、金隆泰・滋賀朝鮮初級学校教育会会長(46)、映画監督の朴英二さん(47)の6人。宋明男・青商会中央幹事長(40)と、李美怜さん(朝大職員)の司会のもと議論が進められた。
まず、民族教育を取り巻く懸案の問題について李忠烈会長が「児童生徒数の減少と財政問題」だと発言し、「原因は主体から探るべきだ。基本組織(支部や本部など同胞コミュニティ)を強化している地域が成果を上げている」と話した。学校を取り巻く財政問題も喫緊の課題で、「心ある同胞たちの力で守っていくべきだが、その幅を広げ、新しい発想で進めていかなくてはならない」と問題提起した。
宋明男・青商会中央幹事長は、青商会が推進する学生募集事業について説明した。
宋幹事長は、より多くの同胞の子どもたちに民族教育を授けるための課題を3つに整理。
①募集対象の整理・共有、②広報活動の一本化、③訪問事業の全組織化-が必要だと語った。
また、この課題を解決するためには、①朝鮮学校の魅力の定義、②名簿整理や学齢前活動の具体的成功例などの共有、③対象者の減少や同胞結婚を増やすため対策や、ダブルの子どもたちを念頭に置いた募集事業について研究が必要だとのべた。
名簿整理に関しては、総聯、女性同盟、朝青、留学同、学校など関連団体同士の連携が必要だとし、来年3月に茨城朝鮮初中高級学校(水戸市)で日本学校に通うコリアルーツの児童を対象にした「青商会学園」を開催すると発表、イベントの成功を目指して募集対象(学齢前~小学生)を整理する計画だと伝えた。
●地方の切実な声
「近くにウリハッキョがあるなら、すぐにでも通わせたいよ」-。
宋幹事長は、地方都市を回りながら耳にしたある同胞の切実な声を紹介しながら、「日本各地に朝鮮学校がない地域は22県に及ぶ。先細りしていくという考えを変え、幼い頃から民族教育を授けるという発想で、学校のない地域の子どもたちを対象に、準正規教育(朝鮮学校以外の場で行う民族教育)を進めていきたい」と「攻めの姿勢」を打ちだした。
例えば日本学校に通う小学生を対象に2008年から始まったインターネットウリマル教室「ナルゲ」は、開始当初から現役の朝大生たちが講師を務め、かれらは大学生活と両立しながら、週に一度、オンライン授業を担当している。
朝大の李英哲広報室長は、「オンライン授業の準備は簡単ではない。授業内容、教材、運営方式、カリキュラム化など、システムの構築が必要だ。学生たちや指導教員への物心両面の支援もいただきたい」と切願した。
また、青商会中央が運営するインターネットウリマル教室「ミレスク」が22年6月にスタートした後、第10弾までがユーチューブにアップされ、7万回再生回数をカウントしていることも紹介された。
(67) 第10回 ミレスク『おさらい編 ~プロフィールをかいてみよう!~』 – YouTube
「『ミレスク』で学んだ子どもたちが、日本各地の土曜児童教室や『ナルゲ』を通じてレベルアップし、年に一度の『青商会学園』で同じ境遇にいるトンムたちと直接会うことでチョソンサラム(朝鮮人)として育っていく―。このような準正規教育システムを青商会が構築していきたい」(宋幹事長)
●各団体の民族教育支援事業を共有
フォーラムでは、各団体が進める独自の民族教育支援活動が報告され、同じ問題意識を持った他団体同士が協力しあう必要性が強調された。
呂成姫・女性同盟中央組織部長は、「女性同盟は日本各地の123ヵ所でオンマオリニモイムを運営し、3200人の就学前のオリニたちが参加している。学齢前の6年という歳月をともに過ごす過程で、オンマたちが抱える子育ての悩みやウリハッキョへの疑問を先輩オンマが聞き、アドバイスをしている。青商会と協調し、さらに成果を生みたい」と発言した。また、「日本学校に通わせた場合でもとつながりを保ち続けなければ」と続けた。
少人数の学校に通わせることに不安を感じる保護者の声も届けられ、少人数学級への対策と研究、朝高生徒数増加のため寮の整備、海外同胞やダブルの子どもを対象にした募集事業についても提案された。
●広報活動、どう進める?
広報活動に関して青商会中央からは、兵庫県青商会が取り組んだBECAUSEプロジェクトのように「ウリハッキョ」ブランドを創出し、「ウリハッキョパンフレットの作成を通じて、正確な情報開示を進めていく」との計画が発表された。
これをもとに、組織をあげてコリアルーツの子どもたちを訪ねていこうと呼びかけられた。具体的な方法としては、各地方の民族教育対策委員会(総聯本部主管)を稼働させ、役割分担を明確にし、とくには青商会自らが率先して汗をかき、コリアルーツの子どもを訪ねていくとの決心が表明された。
広報活動に関しては、映画監督の朴英二さんが発言。「広報とはパブリックリレーションズ。群衆との関係構築という広い範囲における戦略的なコミュニケーション、対象者との合意形成を目的とした活動を指す。キーポイントは共感。組織を遠ざけている人や日本国籍を取得した人も含め、地道に進めるべきだ。どう知らせるのか、共感してもらうのか、中長期的な戦略、計画性を持って進めていけば募集につながると思う」と語った。
●財政の安定、ヒントはどこに?
滋賀初級教育会の金隆泰会長は、「同胞たちの中で、『朝鮮学校が日本の学校と同等だ』という認識が広がれば生徒数は増えていくと思う」と発言。幼保無償化から朝鮮幼稚園が排除された後、行政への要請活動を地道に重ねた結果、果実を得たことや、日本市民の中で滋賀初級を支える「勝手に応援団」が生まれたことを伝えながら、
「地域の日本市民は朝鮮学校を地域の財産だと考えてくれている。同胞たちが胸を張って日本市民に協力を呼び掛けられる時代になった」と実感を込めて語った。また、各学校が抱える慢性的な教員不足を解消するための方途としては、「個人的な意見だが、退職した教員のハローワークのような窓口を整えたらどうだろうか。日本の先生たちも積極的な登用したらいい」を提案した。
金舜植・人権協会会長は、日本各地5ヵ所で行われた高校無償化裁判を通じて、「朝鮮学校を支援する世論を形成しなければならないと痛感した。心ある日本市民と連帯し、より多くの支持を集め、幼保無償化を実現し、教育助成金の復活を実現させよう」と呼びかけた。さらに教育権を獲得するための活動として、「国庫補助の獲得を目指し、外国人学校振興法の成立、専修学校資格の取得を検討すべきではないか」と発案した。
他にも、青商会の民族教育支援活動として、制服の全国一括購入、クラウドファウンディングのプラットフォームづくり、教員たちへのバックアップ(セミナー、資格・技術取得後の後押し、メンタルケアなど)などが提案された。関連部署と協議を重ねて実現したいという。
青商会では、対策協議会を引き続き開催し、民族教育への支援活動をより具体化しながら、現場に還元できる事業を進めていく予定だ。(瑛)