心あたたまる「南九州同胞新春の集い」
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初の開催、鹿児島、宮崎、熊本の3県で
「南九州同胞新春の集い」が2023年1月29日、熊本市内で行われ、鹿児島、宮崎、熊本に暮らす約50人の同胞たちが参加した。
南九州3県の同胞たちがともに新春の集いを開くのは初めてのこと。3年前までは鹿児島と宮崎が合同で新年会を開いていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大のなか、集まりを持てずにいただけに、3県から訪れた同胞たちは、久しぶりの再会に抱き合ったり、固い握手を交わしたり、目を細めていた。

金明徳・鹿児島県出水支部委員長
集いの1部では、金明徳・総聯鹿児島県出水支部委員長が、朝鮮から送られてきた祝電を朗読した後、李清敏・総聯鹿児島県本部委員長(59)があいさつに立った。

李清敏・鹿児島県本部委員長
「4年越しのコロナ禍のなか、久しぶりに同胞たちが集まりました。国際情勢をめぐっては逆風が吹き、同胞社会も厳しい日が続くと思いますが、私たちには5000年の朝鮮史があり、このすばらしい同胞社会の歴史を守っていかなくてはならない。この地域に育つ新世代の子どもたちのためにも交流を進め、力を合わせて同胞社会を守っていきたい」と呼びかけた。
来る2月5日には、20、30代の同胞たちをつなげる在日本朝鮮南九州地域青年商工会が結成され、4月末には団体や国籍の垣根を越えた同胞たちの集まりの場を準備している、と新年の抱負も伝えた。
1部では、李柄輝・朝鮮大学校教授が「『新冷戦』の中の朝鮮半島情勢と在日同胞社会」と題して講義を行った。
李教授は、
①朝鮮の社会主義全面的発展論とその実践、
②「新冷戦」と朝鮮の核ドクトリン、
③朝鮮半島情勢を取り巻く展望と同胞社会-の3テーマで約1時間講義を行った。
まず、朝鮮が国力を強化するために、政治、経済文化、軍事面において対策を立てていることを解説。2021年8月の朝鮮労働党第8回大会以降、同年9月28、29日の最高人民会議で社会主義全面発展方針が定められ、「市・郡発展法」が採択、朝鮮は都市に比べて脆弱な地域の立て直しを目指していると伝えたうえで、朝鮮を取り巻く世界情勢について具体的な事実をもって解説した。
李教授は、米国のバイデン政権が、中国を「国際秩序に挑戦する唯一の競争相手」とみなし、対中包囲網を強化するため、日本や韓国、台湾を巻き込んだ軍拡を進め、ウクライナ戦争の長期化を図っていると説明しながら、朝鮮を「脅威」とみなす政策は前政権より強化され、それによって朝鮮の核抑止政策は「非核化から核抑止力の法制化」へと変化したとのべた。2019年に頓挫した朝米交渉再開の可能性についても、内外の研究機関の資料を紹介しながら解説した。
そのうえで、「米韓軍事演習の完全復活が遂げられ、日本では軍拡が進み、植民地支配への歴史認識が後退し、排外主義が進んでいる。日本の目で日本を見るのではなく、世界を俯瞰して日本を見るべきだ。世界史の新しい局面を在日同胞の日常につなげる視野と認識を持ち、地域を強化して豊かなコミュニティを築いていきましょう」と締めくくった。

宮崎県から参加した朴光栄さん
第2部の宴会では、昨年11月に選出された金慶大・総聯熊本県本部委員長(56)が「私たち南九州も朝鮮のように力をつけて同胞社会を発展させたい」と抱負を語り、宮崎県の朴光栄さん(71)が乾杯のあいさつを行った。
続いて、福岡、広島の両朝鮮歌舞団による歌や朝鮮舞踊が披露された。クライマックス、朝鮮民謡や「統一列車が走る」が流れるやオッケチュムを踊りだす人たち。歌舞団の「アリラン」を聞きながら、涙が止まらなかったと話す鹿児島県在住の同胞女性は、(77)は、「近所の恩田さんに誘ってもらい、初めてこのような集まりに来ました。小さい頃から朝鮮人ということを隠して生きてきましたが、こんなすばらしい場があるなんて…。朝鮮人を恥じてきたことは、亡くなった父親に申し訳なかった」と涙ぐんでいた。
「新春の集い」には、福岡、鹿児島の朝青、福岡の青商会、朝銀西熊本支店の職員たちも参加。九州全体の応援が集結した温かい場となった。(瑛)