朝鮮の小説『友(벗)』を読んで
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『友(벗)』は1988年に朝鮮民主主義人民共和国の作家ペク・ナムリョン(백남룡)が書いた小説だ。
この小説は、韓国やフランス、アメリカで翻訳され、日本でも今年4月2日、小学館から訳本『友』が出版された。
物語は、判事・ジヌとその妻・ウノク、離婚を申し出るソクチュンとスニ夫妻、息子・ホナムを中心にストーリーが進む。その過程で朝鮮における夫婦の姿が描き出され、また朝鮮での道徳規範、社会問題が提示される。
はたしてスニとソクチュンの家庭の不和は解消されるのか、そしてタイトルの『友』は何を意味するのか。
筆者は日本に住む朝鮮人として、祖国を思い、考えさせられることが多かった。
また、作品として洗練されており、読んでいてどんどんページが進んだ。
何よりもこの本を通じて、朝鮮の「リアル」に触れることができると感じた。朝鮮で暮らす人民たちがどのような生活をし、どう思い、どう悩むのか。
かれかのじょらは社会的立場が違っても、社会のために、人々のより良い暮らしのために、何かを成そうとする。
ある人は新しい機械を発明することで国の技術発展に貢献する技師として、ある人は社会の精神文化生活に貢献する歌手として、またある人は人々の暮らしのために野菜を研究する研究者として。
日本に住む人々にとって、近くて「遠い」国、朝鮮。
昨今の朝鮮に対する悪宣伝により、日本に住む方々、また同胞内でも朝鮮に対しての悪いイメージが作り出され、それが幾層にも重なっていくことがある。
この作品を通じて朝鮮の「リアル」に触れ、少しでもその「フィルター」が払拭されることを願いながら、ここで筆をおこうと思う。(哲)