「今回も絶対廃案に追い込む」/入管法改悪に反対し国会前に約4000人
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日本政府が、2021年に内外の反対の声の高まりを受けて一度廃案となった「出入国管理及び難民認定法改正案」を、その骨格を維持したまま成立させようとしている。
法案が5月9日に衆議院本会議で可決され、16日から参議院で審議される中、5月12日、国会前で入管法の改悪に反対する大集会が行われ、約4000人の市民らが集まった。反貧困ネットワークをはじめとする4つの団体が主催した。
国会議員、弁護士、市民団体のメンバーや作家など多くの人びとがマイクを握り、入管法改悪反対を訴えた。また、戦後から連綿と続く入管体制の本質を問う声も上がった。当事者らのメッセージなどが代読され、当事者の切実な思いが伝えられた。舞台袖には2021年3月に名古屋入管の収容施設で亡くなったウィシュマ・サンダマリさんの妹2人も駆け付けた。
NPO法人北関東医療相談会の長澤正隆事務局長は、「私たちが支援してきた外国人の中には、亡くなった仮放免者が6人もいる。食べることも、病院に行くこともできずに生きてきた人たちの思いを知っていますか。この人たちのためにも絶対に今回も廃案に追い込む」と、怒りをぶつけた。
小説家の中沢けいさんは、「一昨年、ウトロでは放火というヘイトクライムが起きた。今年で関東大震災から100年経つが、当時たくさんの朝鮮人や中国人が殺された。入管法というのは、当時の思想を何ら変えずに続いてきている。政府には外国人を監視、管理する法律ではなく、保護する法律を作っていいただきたい」と力を込めた。
1991年3月に渡ってきて、32年間日本で暮らすエリザベスさん。メッセージで、「私たちを犯罪者扱いすることは間違っている」と訴え、外国人一人ひとりのケースを扱う第三者機関の設立をせずに、強制送還の決定を急がないでほしいと切願した。
日本政府は退去強制に従わず日本に残る外国人に「送還忌避者」というレッテルを張り、「送還忌避者が相当数存在しており、実務上、迅速な送還の実現に対する大きな障害となっている」とし、改正案を提出した。
しかし、「送還忌避者」に関する統計を政府は恒常的にとっておらず、その実態を明らかにしていない。
改正案が通ると、難民認定申請を3回以上行ったものは強制送還が可能となる。本国に戻れば、命に危険が及ぶ恐れがある申請者を強制的に送還することに対して、外国人を支援する市民団体や専門家から批判が出ている。
また、法務省による一元管理体制や難民認定の厳格性など問題点が指摘されている。
立憲民主党や共産党などの野党は、難民認定を行うための第三者機関の設立を含んだ対案を提出しており、16日の参議院では改正案と並行して審議が行われる。
12日の集会は予定より時間が押して終わったが、終了後にも入管法改悪に反対する市民らのシュプレヒコールが国会前に鳴り響いた。
4月26日に入管庁に提出された入管法改悪反対の署名は19万44筆集まり、5月12日14時現在、20万3920筆に上っている。
7日に杉並で行われた入管法改悪反対デモには約3500人が集まり、12日の国会前には約4000人。市民らの声は日を追うごとに高まりを見せている。(哲)