同胞社会の存立と将来をかけて ~第13回中央オモニ大会レポート(下)
広告
日本各地のふんばりを共有
第13回中央オモニ大会の冒頭で、主催者を代表してあいさつした姜秋蓮・女性同盟中央委員長が、「今日の大会は、同胞社会の存立と将来を左右する民族教育を、どんなことがあっても守りぬく決心を内外に誇示することになるだろう」と語ったように、
大会は日本各地のふんばり、試行錯誤、成果をもたらした経験を共有する熱気あふれた場となった。
第2部は「ALLトンポ(同胞)の力で民族教育を守っていこう」と題して、各地の女性同盟とオモニ会から活動報告が発表された。柳基華・女性同盟中央子女部副部長の司会のもと6人が報告した。
東京第2をブランド化
女性同盟は、日本各地の約100ヵ所で、就学前の子どもたちとオモニたちの交流を深めるオンマオリニの集いを地道に運営している。
▼女性同盟東京都中央江東支部の子育てサークル「2kids」の副責任者を務める鄭文美さん(47)は、2012年に東京朝鮮第2初級学校の新校舎が建設された後、児童数増加を果たせず、30人の在学生を維持している状況だとして、13年に結成されたサークルを14年に「2kid ‘s」と衣替えし、ファミリー単位の活動に転換。
「参加したくなる、会いたくなる、また行きたくなる」集まりを月1で開催。年間を通じて、ピクニック、流しそうめん、サンタ訪問などの行事を開催してきたと伝えた。女性同盟支部はよみきかせや紙芝居を、青商会は理科実験などの場を提供してくれたという。
また、中央江東地域と東京第2初級の全面的なバックアップのもとに開催してきた年1回のオリニフェスタについて、「SDGs」などをテーマにした創意工夫にあふれた試みを1分の動画で紹介。
注目すべきは、22年4月に「第2学校をブランド化」するためのプロジェクトを立ち上げ、日本の小学校に通う子どもたちを対象にした土曜日の「2クラス」などを運営した経験だった。
鄭さんは、「2022年度、都内の学校で新入生がゼロという衝撃の事実を突きつけられ、ショックを受けた。児童・生徒募集は先生たちだけの仕事ではない。地域のあらゆる力を集めて奮起していかなくてはならない大切な活動だ。今後も新しい対象を探し続ける」と決意を語った。
日本学校に通う子たちと
▼姜真純・女性同盟三重県本部副委員長(49)は、「18年前に100余人いた四日市朝鮮初中級学校の子どもの数が16人まで落ち込んだ」と切り出し、2022年4月にこれを打開するために、総聯、女性同盟、学校、オモニ会、青商会、アボジ会などによる協議会を立ち上げ、学齢前の子どもたち、日本の小中学校に通うコリアルーツの子どもたちを対象にした「ウリトンム 集まれ」を開催することを決め、月1回の集まりを続けてきたと伝えた。
「青商会と力を合わせ、日本学校の子どもたちを探し出した。月1回、運動会、餅つき、芸術発表会、クリスマスモイムを開き、オンマ先生がウリマルを教える。かれらはウリマルカードを集めながら、両親に自慢しながらウリマルを学んでいます」
「新年度に新入生を迎えることはできなかった。けれど、『ウリトンム 集まれ』で学んだ子どもが入学するという嬉しい知らせも届いています。私たちの一歩が、同胞の気持ちを動かせるという気持ちを固めています」
▼金善恵・女性同盟埼玉県本部子女部長(50)は、埼玉朝鮮初中級学校のオモニ会で「学びの場」を立ち上げた経験を語った。きっかけは、2019年の第11回中央オモニ大会で、女性同盟埼玉県本部が『ウリハッキョを考える』というシンポジウムを担当、開催したことだったという。
「日本各地のオモニ、初級部高学年、中級部生を対象にしたアンケート結果に驚きました。子どもたちとオモニたちとの意識の差があまりに大きかった。子どもたちは『朝鮮人だから朝鮮学校に通う』という答えが多かった反面、オモニたちは朝鮮学校に通わせることを悩み、民族教育の現実と未来について不安を抱えていました」
金さんはアンケート結果を通じて、オモニたち自身が学ぶ必要性を感じた経験から、埼玉初中で「オモニ大学」を開催。オモニたちのニーズを聞き取り、子どもの発達に見合った学年別の勉強会を開催した実践を紹介した。
襲撃事件を乗り越え
▼金陽鉉・京都朝鮮中高級学校オモニ会会長(46)は、日本市民との交流について伝えた。2009年の京都朝鮮第1初級学校襲撃事件を機に支援団体「朝鮮学校と民族教育の発展をめざす会・京滋(こっぽんおり)」が生まれたこと、その過程で京都女子大学の市川ひろみさんと出会い、同大学と京都中高との交流が5年続いてきた「交流の実り」について報告した金さん。
「2017年度からオモニ会に対外部を立ちあげました。大学生との交流は在日朝鮮人の存在と歴史、在日同胞とウリハッキョを知らせる場となっている。市川先生と学生たちは、朝鮮学校への弾圧に憤激しながら助けになりたいと本を贈る活動を始め、4000冊を京都、滋賀の学校に寄贈してくれました。民族差別がはびこる日本で、今後も地域の日本人人士と心を通わせ、手をつないでいきます」
▼東大阪朝鮮初級学校オモニ連絡会事務局の康寿那さん(42)は、「オリニサークル『アイアイ』の責任者を受け持った当時、「年長の娘がなんでユチバンの弟たちがいないの?」という状況だったと吐露した。
この現実―園児児童数減少を打開するため、「楽しさ」だけを追究していたオリニサークルの運営を改善しようと管下女性同盟3支部による連絡会のメンバーが同胞たちを探し、出会い、心を通わせた実践を報告した康さん。子育ての悩みを抱える母親たちの声を受け止め、日本人支援者の座談会を開催したのもその一つだった。
そしてこの1年間、必死に取り組んだ結果、募集対象を倍増させ、この春、東大阪初級に16人の新入生を迎え入れた経験を伝えた康さんは、「地域の誰もが園児児童募集に責任を持とうと必死に取り組みました。先代のバトンをしっかり引き受けるときが来たと思っています」と仲間たちを誇った。
人生100年時代、顧問になっても
▼崔慶子・女性同盟岡山県本部顧問(76)は、1992年に発足30周年を迎えた「愛校セットン会」について紹介した。発足の動機は教職員たちの人件費への心配からで、子が岡山朝鮮初中級学校を卒業したOGら11人が発起人となった。2000年に岡山朝鮮初中級学校と倉敷朝鮮初中級学校が統合された後も活発に活動を続け、30年間に3370万円を寄贈したほか、通学バスや備品を送り続けてきた「セットン会」。
「人生100年時代、顧問たちがすべきことが多い。新世代から受け取った力を創立80周年に向けてがんばっていく」と決意を披歴した崔さんは、女性同盟75周年記念の運動会で、若い世代から大きな力を得たという。
2部では、在日本朝鮮青年商工会の崔炳琥会長(写真左)が激励のあいさつをし、宋明男幹事長が青商会の取り組む民族教育支援活動を紹介した。
3部は、日本各地の朝鮮学校の児童生徒による芸術公演が披露された。歌や踊り、カヤグムや民族楽器の演奏でオモニたちを激励する日本各地の子どもたちに、参加者たちは終始目を細めていた。
一人ひとりの情熱、知恵、集めよう
大会では最後、あらゆる困難が立ちはだかろうとも、未来を担う子どもたちのためにすべての同胞女性たちが民族教育を守る活動に立ち上がろう、同胞女性一人ひとりの力と知恵、情熱を合わせて進んで行こうとのアピール文が参加者一同の名前で採択された。
また、朝鮮学校児童・生徒に高校無償化、幼保無償化制度を適用すること、自治体の補助金を奨励すること、朝鮮学校の歴史と真摯に向き合い、民族教育を保障することを求める、永岡桂子文部科学大臣宛の要請文が採択された。(瑛)
※写真提供=盧琴順(朝鮮新報)
ウリハッキョの真価を考える/第13回中央オモニ大会レポート(上)