今こそ第三世界に注目/HOWSで連続講座
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本郷文化フォーラムホール(東京)にて、連続講座『第三世界(非同盟運動)の過去、現在、そして未来へ』(主催=本郷ワーカーズスクール(HOWS))が始まった。
6月3日の第1回講座では「非同盟思想とその歴史的生活力(バンドン会議以降1960~80年代)」と題し、元朝鮮大学校教授でフランス文学者の高演義さんが講義を行った。
本日は、講義の内容を綴ろうと思う。
「グローバルサウス」という言葉がメディアの報道でもしばしば聞かれるように、米国による一元的支配に陰りが見えつつある現在、非同盟運動に参加する第三世界諸国の存在感は増している。
高さんは、自らが第三世界と同時代で生きてきて、冷戦時代にはなぜ米国やソ連といった大国の話ばかりなのかという考えを抱いていた。その間にある朝鮮半島だとか、アラブ世界、地球の南半球、小さな国々は存在価値のないものとされてきたという。
高さんは、「大国中心主義になるといきおい近代化論が突出する。先に『先進国』として発展した国々についてくればいいんだという近代化論に対抗するのが第三世界論だ」と話した。
時代が変わり、食糧問題などのワールド・プロブレマティーク(地球規模問題群)を解決する上で、たった一カ国、 地域によって解決できる問題は1つもないと強調。
「問題の解決策はいつも歴史の犠牲者が持っており、在日朝鮮人の問題も同じだ。そして、歴史の悲劇の原因を生むのが帝国主義だ」(高さん)
第三世界運動、非同盟運動のきっかけは朝鮮戦争での民族運動リーダーたちによる思想的転換だと説明。そして、1955年の第1回アジアアフリカ会議、バンドン会議と続いていった。それが東西対立構造の中では、「自分の運命は自分で」という自立した精神、人間の本性がないがしろにされてきたと指摘。
さらに、高さんは、「冷戦時時代が終わったら もう非同盟運動なんて存在価値がないという学者もいるが、この地球上に帝国主義が残存する限り、この運動は存在し続けなければいけないし、ますます強化されなければいけない」と強調した。
1973年、ベルリンで開かれ、高さんも参加した世界青年学生祭典での状況を回顧しながら、それについて当時の日本の大手商業新聞が一切報道しなかったとし、日本がいかに「情報鎖国」で、世界のことが報じられないかをのべた。
その上で、今まで「第三世界」のことを報じてこなかった日本の新聞も「グローバルサウス」という言葉を使い、大国の視点で、自分の側に取り込むための論陣を張っていることについて問題提起をした。
高さんは、「非同盟運動が緩やかではあるがじっくりと前進していく過程で、世界平和は構築できる」と言う。
1974年4月の第6回国連特別総会が 「新国際経済秩序樹立宣言」 および行動綱領を採択、同年12月の第29回国連総会が 「諸国家経済権利義務憲章」を可決したことにより、<北>に対する <南>の歴史的巻き返しが起きた。
高さんは、「これでは資本主義経済が持たないと、欧米大国が慌てふためいて、翌年(1975年)立ち上げたのが、『先進国サミット』だ」と説明する。
「時代を変えて、東西冷戦を終わらせたのは第三世界だ。帝国主義に反対し、中立的、自主的に運命を切り開いていくのが非同盟運動だ」と強調した。
人民が世界を作っており、今まで奴隷扱いされ、大国の搾取の対象であった人民が主体になった時代に生きている。1930年代に歴史の主体を語った 最初の人が金日成主席で、ここに歴史の逆転、主体の展開の萌芽があったと話した。その上で、非同盟運動の根本理念である反帝国主義自主と朝鮮革命の理念との整合性をのべた。
時代が変わり、第三世界の理論で武装され、復讐ではなく包摂しながら一緒に突き進む「全的人間」(フランツ・ファノン)の登場が求められるという。
質疑応答の時間では、参加者による感想ものべられ、「自由で開かれたインド太平洋」という言葉にも注意しなければいけないという意見も出た。
高さんは、「今日、ゆるやかな国際連帯運動である非同盟運動は不要になるのではなく、欧米諸国が『グローバルサウス』という言葉をつけるほど重要度が増している」と強調し、講義を終えた。
第2回講座は、第三世界の【現在】「ソ連倒壊をへて『人道的』帝国主義による試練の1990年代~2010年代」と題し、朝鮮大学校外国語学部の林裕哲准教授が講義を行う。
1回目を参加できなくても、まだまだ間に合う。今だからこそ、多くの人が「第三世界」に注目してほしい。(哲)