朝鮮学校に子どもを通わせる親としての思い
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先日、(瑛)さん、(哲)さんが、朝のニュース番組で都内の朝鮮学校の交流行事が放映された時のことを綴っていましたが(https://www.io-web.net/ioblog/2023/06/23/91069/)、私も同様の怒りと悲しみを覚えました。
当日、放映を楽しみにしていた子どもと同級生のオンマ(母親)たちのLINEグループでは、番組コメンテーターたちの的外れな発言に私をはじめ不快感を覚えるオンマたちの意見が並びました。
表面的なことしかわかっていない、生かじりのコメント(特に最初のコメンテーターのコメント)。
朝鮮学校が建てられた歴史的経緯や、在日コリアンがなぜ日本に存在しているのか、などを一切わからず発しているコメントでした。
以下、番組出演者のやり取りを書き起こしました。
Hさん:行政の対応そのものが、やはり拉致問題以降は厳しい対応になっています。見ていきましょう。こちらです。2010年、国が高校無償化の対象から朝鮮学校を除外しました。一方、東京都も、私立の外国人学校を対象とした補助金、 都民の理解が得られないという文言を付けて、都内の朝鮮学校10校には支給しないということを決定しています。一方、今年2月には、朝鮮学校の支援団体の皆さん、もちろん日本人も含まれている 団体ですよ。東京都こども基本条例に反するのでは、と。まあ、等しくね、子どもたちは同じように教育を受けられる権利がありますよね、いうことから、都に対して、補助金の支給というのを求めるという動きもありました。
基本的には、なかなか厳しい経営状況の中、制度として、子どもたちを、国家間の対立や政治的な課題に果たして巻き込んでいいのかどうか。まず、この点について、ちょっとお伺いしたいなと思います。Oさんはどんなことを感じますか。
Oさん:なんか、そもそも、その朝鮮学校に対しての補助金がなくなることが、 こども基本条例に本当に反するのかっていう考え方があると思うんですね。というのは、これはあくまで朝鮮学校に対する補助金なわけですよ。子どもたちに直接補助ではないわけですよね。しかも基本的には公立の小学校、中学校がありますよ。で、在日朝鮮人の人はみんな(子どもを)朝鮮学校に通わせているわけじゃなくて、そういう公立学校に通わせている人たちもたくさんいるわけですよね。だから、やっぱりこれはね、僕は朝鮮学校の経営が下手くそすぎる問題だと思うわけですよ。これ、東京の第9初級学校のホームページに載ってるんですよね。入学金は0円、無料ですよ。授業料は月額1万4000円なんですよ。これ、私立の学校なわけですよね。もうめちゃくちゃ安いわけ。経営が厳しいのであれば、授業料を上げるとか、やっぱり何らかの付加価値をつけて、お金に換算する同様の高い教育の質を担保する、それができないんだったら公立の学校に入ってもらうっていう、他のところが当たり前にやってることをやるっていうこともね、 必要なんじゃないか。子供たちを盾にするっていうのが僕は1番卑怯だという気がします。
Hさん:今のお話聞いてなるほどなって思ったんですけれども。私からすると、例えば、その私立外国人学校を対象した補助金を、都内の、その朝鮮学校に対してのみ、その政治的な理由を盾にして支給していないというところで、そもそも、その学校に行く子どもたちが、自分がその政治的な論争の対象であるっていうのをすごく意識しながら学校に通うのって、どんな気持ちなのかなって思ったりはする。で、それを強く感じざるを得ないような環境で、例えばね、今おっしゃったような、その学校も、それを子供に刻みつけるような状況で、意識させながら、民族意識をあおりっていうか、教えながら、育つっていうのもちょっと過剰な環境ではあるのかなっていうのは、今、ちょっと感じました。
Mさん:基本的に、教育支援というのは、 子どもとか家庭に直接やるべきだと思ってるんですよ。学校に行かない子もいるし。学校単位で支給とかそういうものをやるって、結局、経営とか、そういうのも繋がっちゃうんで。これ、だから、要するに、一人ひとりのご家庭とか、生徒の判断とかをどれぐらい信頼するかってことだと思うんですよ。だから、たとえば今、ホームスクーリングで家で勉強してる子だっているわけだし、 そもそも学校単位でこういうことをやっていくこと自体の立て付けがまずいんじゃないかな。この例で言うと、朝鮮学校には支給しないんだけど、 そこに通ってらっしゃるお子さんに直接支援するってアプローチにしたらいいんじゃないですか。
Hさん:さあ、皆さんから色々議論が出ましたけれども、私、実際にその学校公開に行って、先生方や父兄の皆さんといろんなお話をしてきました~(学校紹介映像につながる)
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通勤電車の中であらためて映像を見ながら、特にOさんというコメンテーターはネットの情報からしかものを見られない、表面的にしか考えられない人なんだなと率直に腹が立ちました。誰が子どもたちを盾にしてるのだろう。歴史的経緯もわからず、単純に授業料をあげればいい、公立に通えばいいというような問題じゃない。朝鮮学校は約75年もの歴史を持つ学校で、植民地時代に奪われた言葉を取り戻すために在日1世たちが自主的に始めた国語教習所がその始まりです。
以前のブログでも伝えましたが、現在の朝鮮学校では教科書も日本の学習指導要領にも沿って作られています。いつまでも過去に日本でヒットしたとある在日コリアンのドキュメンタリーなどの印象で朝鮮学校を語らないで、いまの朝鮮学校を偏見なく見てほしい、そのための学校公開だったのだと思います。
学校の設備が古くても簡単には直せない、運動場の草木が生い茂って、害虫がいても業者を呼べない。そのために保護者たちは休日返上で、あらゆる手立てを考え、少しでもいい環境で子どもたちに勉強してもらいたいと、文字通り無償で汗水たらして学校と子どもたちのために力を尽くしています。
東京都のこども基本条例の基本理念には以下のように書かれています。
(基本理念)
第三条 こどもは大いなる可能性を秘めたかけがえのない存在であるとの認識の下、こどもの権利条約の精神にのっとり、こどもを権利の主体として尊重し、こどもの最善の利益を最優先とすることで、全てのこどもが、今と将来への希望を持って伸び伸びと健やかに育っていけるよう、社会全体でこどもを育む環境を整備していかなければならない。
コメンテーターのOさんが「公立に行けばいい」と言っていたが、公立の日本学校が、朝鮮半島の歴史を、文化を偏見なく教えてくれるのだろうか? 公立学校で「自分は在日コリアン4世、5世です」と堂々と言える気持ちが育つだろうか? 自分たちのルーツの言葉である朝鮮語を学び、朝鮮語の歌を思いっきり楽しく歌える環境(https://www.io-web.net/ioblog/2023/01/23/89679/)が公立学校のどこにあるのだろうか?
こども基本条例の理念にあるように、伸び伸びと健やかに育っていける環境がいまの朝鮮学校にはあるから、どんなに経済的に厳しくても親たちは子どもを通わせているのです。
過剰な環境というのなら、一度足を運んで、朝鮮学校で学ぶ子どもたちのキラキラした純粋な目を見てほしい。日本の地で朝鮮半島の言葉を使い、歌をうたえること、歴史や文化を学べることへの喜びにあふれています。
それなのに、東京都は補助金を打ち切った。保護者たちの訴えも聞かずに。
(以下、これまでの補助金に関するブログ↓)
https://www.io-web.net/ioblog/2011/12/15/75368/
https://www.io-web.net/ioblog/2011/12/15/75368/
税金なら、日本国民でなくとも、日本に暮らす外国人たちも払っています。税金を毎年ちゃんと払っていても、教育にかかるお金で行政からリターンされるものは少ない。 実際、朝鮮学校の毎月の授業料も授業料以外にかかるものが多く、保護者たちは毎月の納付額を出すだけで精いっぱい。それでも、朝鮮学校に通わせるのは、上記のように公立学校では学べない、得ることのできないものが朝鮮学校にあるからです。
私たち保護者は、いつもこういった無知なコメンテーターの言葉が流れるたび、涙がでるほど悔しい。
朝鮮学校のことを、朝鮮学校で学ぶ子どもたちの気持ちも親の気持ちも知らずに一。
こうして関心を寄せてくれて、学校公開に足を運んでくれたHさんにはもちろん感謝していますが、欲を言えば、今回学校公開イベントに参加した日本人の方々も取材してほしかった。その人たちの声も出してほしかったです。
※今回イオ編集部記者が取材した当日の様子が朝鮮新報HPで公開中!https://chosonsinbo.com/jp/2023/06/25-110/
それでも、オンマたちのLINEグループでは、「学校公開と交流会の熱気はすごかったので、ここから諦めずに一歩ずつ、粘り強く発信していきましょう!」などと励まし合う言葉たちが並びました。
落胆し、無理解である現状を思い知らされども、まだまだできることはあるはず! 未来の子どもたちのために諦めたくはないからです。(愛)
初めまして。
某番組を観て同じく激しく怒り、TOKYO MXに「番組内で必ず謝罪しろ」とメールを送りました。
私は恥ずかしながら、2年ほど前に初めて「朝鮮差別」なるものがあると知り
そこから朝鮮学校に訪れたり、日本の加害の歴史を学び始めました。
もし何も学ばずにあの番組を観ていたら
大空幸星、河崎環、茂木健一郎らの発言を鵜呑みにし
「日本は悪くないんだ、朝鮮学校に問題があるのだ」と思い込んでいたかもしれません。
加害の歴史、朝鮮学校が設立された背景について全くと言っていいほど教育されないこの国で
あの発言が放送されたことは本当に許されないことです。
これからも日本人として「朝鮮差別を許すな」と声を上げます。
突然のメール失礼いたしました。
コメントありがとうございます。
仰るように、あのコメントは何も知らない方々が見ると一見正当に聞こえてしまうという悪質なものだったと思います。メールも送付してくださったんですね。
そうしてくださって、また声をあげて下さって勇気づけられます。ありがとうございました。