MBSラジオが番組向上委員会設置/「スパイ養成」発言問題
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大阪のAM放送局であるMBSラジオの番組『上泉雄一のええなぁ!』において、2月21日、ゲストスピーカーであった上念司氏が、朝鮮学校に対して「スパイ養成的なところ」と発言するなど、朝鮮学校に通う生徒をはじめ在日朝鮮人の人権を脅かし、それを扇動するような発言を繰り返したことと関連し、同社は放送内容を定期的に検証する内部機関「番組向上委員会」を7月に設置した。問題になった番組も検証の対象に含める。
同社によると、委員会はコンプライアンス担当の役員や社員ら12人で構成。原則2ヵ月に1度の頻度で開催し、番組の内容が適切かどうかを議論する。5月23日付で「コンプライアンス憲章」も策定した。https://mainichi.jp/articles/20230704/k00/00m/040/326000c
番組放映後、在日本朝鮮人人権協会傘下の関西3団体(大阪人権協会・兵庫人権協会・京都協議体)は3月3日付で質問状を送付。府下に暮らす朝鮮学校保護者たちも要望に訪れ、再発防止策を訴えてきた。※この間の具体的な働きかけについては、以下参照。
https://www.io-web.net/ioblog/2023/04/12/90251/
MBSの番組向上委員会設置をどう見るか。大阪人権協会の文時弘事務局長に話を聞いた。
メディアの社会的責任問う
文時弘・大阪人権協会事務局長に聞く
―番組向上委員会発足に至るまでのMBS側との交渉で、重要だったと思う点はどういうことでしたか?
朝鮮学校保護者である大阪朝鮮中高級学校オモニ会の方など、「当事者の思い」をMBSの方々にいかに伝えるかということに力を入れました。
実際、MBS幹部の方も、オモニたちの話に「本当に心を打たれた」と吐露していました。今回のMBSの対応は100点満点ではもちろんありませんが、具体的な再発防止策を策定したことは、意義のあることだと思います。
今回私たちは、ヘイト発言の問題はもちろん、特に公共の放送を担う「メディアの社会的責任」を問いました。日本では、放送法や日本民間放送連盟放送基準といった放送倫理が規定されていますが、メディアは本来、これらの趣旨に反する放送はできません。
今年9月には関東大震災朝鮮人虐殺から100周年を迎えます。日本政府が扇動し、マスメディアが垂れ流した流言飛語によって、朝鮮人虐殺が起こった事実は、決して過ぎ去った過去ではないと思います。
―今後、コメンテーターの起用を含め番組制作についてMBSに望むことは何でしょうか?
どんなメディアであれ、最低限の知見に基づいた公平な放送を目指すことは可能です。今回の件も、番組が起用するコメンテーター陣が、きわめて偏向的であったことから、番組発足当初より危惧する声があがっており、ある意味、「予見」された事件でした。
とりわけマイノリティや社会的弱者は、一度流されたデマを否定することに甚大な力を要し、それらによる影響ははかりしれません。ヘイトデマがネット等で平然と飛び交う現在の日本の社会的状況の中で、京都朝鮮第1初級学校襲撃事件やウトロ放火事件など、具体的なヘイトクライムがたびたび起こっています。
ネットとメディアの境界がなくなりつつある今、事実と公平性に基づく放送を担うメディアの役割は重いと思います。
今回の事件を契機に、新たに規定された「コンプライアンス憲章」には、「とくに社会的弱者やマイノリティの人々が差別的な取り扱いを受けないよう十分に配慮します」と規定されていますが、この憲章および、あらたに設置された「番組向上委員会」に息を吹き込んでいくことが重要だと思います。
空文・ハリボテにならないように、社員への定期的・継続的な研修等を通して、在日朝鮮人や朝鮮学校のみならず、社会的弱者・マイノリティに関する知見を深め、最低限の知識と情報を共有し、その立場を理解することが必要だと思います。(瑛)
今回の事件、決してMBSだけの問題ではありませんね。
普段から出所不明の「消息筋」で「北朝鮮」像を作り上げてバッシングするメディアの人達全員が言論の公平性と客観性を意識しなければならないと思います。
偵察衛星に「ミサイル」と言い掛かりを付けて日本社会に一大狂乱を引き起こす等、「北朝鮮」バッシングに熱を上げるメディアのせいで、在日朝鮮人達の生命が危険に晒されるかもしれないと考えると、身震いがします。