責任追及と差別反対を訴え新宿でデモ/関東大震災朝鮮人虐殺100年、朝・日大学生が主催
広告
朝鮮人虐殺の歴史を記憶し朝鮮人差別に反対する朝日大学生一大行動「トルパ(突破)プロジェクト」として8月21日に東京都新宿区でデモ・パレードが、文京区民センターで集会がそれぞれ行われた(主催=「朝鮮人虐殺の歴史を記憶し朝鮮人差別に反対する朝日大学生一大行動」実行委員会)。2回にかけて現場レポートを伝える。初回はデモ・パレード。
デモ・パレードには、在日本朝鮮留学生同盟(以下、留学同)をはじめとする在日コリアン大学生と日本の大学生、在日同胞や日本市民ら150人が参加し、日本政府が植民地支配、そしてそれに基づく関東大震災時の朝鮮人虐殺といった加害の歴史を認め、朝鮮人に対する差別を是正することを訴えた。
植民地支配に対する責任追及
5月に発足された朝・日大学生による実行委員会は、「官民両方から『虐殺否定論』が唱えられ真相は隠ぺいされつづけてき」たと同時に「日本の植民地主義と朝鮮人差別は今なお続いている」とし、「本行動を通して朝鮮人と日本人が共に朝鮮人虐殺を記憶し、朝鮮人差別に反対することで、現在の社会情勢を打破するきっかけ」にし、また、学生のみならず多くの参加者と共に行動を起こしていくことを趣旨に日本各地でプロジェクトを行ってきた。
この日、デモに先立ち、新宿アルタ前広場では全体アピールがなされ、「関東大震災100年―朝鮮人虐殺犠牲者追悼と責任追及の行動」実行委員会の藤本泰成事務局長(フォーラム平和・人権・環境共同代表)が連帯と激励のあいさつをした。
デモ隊はアルタ前広場を出発し、新宿中央公園まで歩いた。参加者たちは「日本政府は朝鮮への植民地支配責任を果たせ!」と書かれた横断幕や、「朝鮮人虐殺 記憶します」「朝鮮学校差別反対!」といったビラやうちわを手に歩みを進めた。「日本政府は関東大震災時の朝鮮人虐殺の真相調査を進めろ」「東京都は朝鮮人犠牲者に対する追悼文送付を再開しろ」などのシュプレヒコールが新宿の路上で響き渡った。
若い世代が声を届ける
デモ行進後に都庁前で抗議行動が行われた。参加者らは自らの体験も交えながら発言し、声を上げた。
実行委員の徐郁任さん(東京学芸大学4年)は、高校1年生の頃に母が在日朝鮮人だと知ったという。それまで徐さんは、自分の中で朝鮮人差別や日本の加害の歴史、関東大震災朝鮮人虐殺の事実なども知らずに育ってきた。自身のルーツを学び、在日朝鮮人として生きていこうとしていく過程で、奪われてきた民族性や価値観を大事にしてきた。徐さんは、「現在も在日朝鮮人に対する差別は続いている。在日朝鮮人はもちろん日本人も、このような侵略や虐殺の歴史の中で日本で生きていくことに幸せを感じる人たちはいるだろうか。虐殺された人を追悼し、現在、苦しんでいる在日朝鮮人や虐殺犠牲者遺族の人たちにしっかりと謝罪をし、差別が起こらないような社会にしてほしい」と切願した。
本郷文化フォーラムワーカーズスクール(HOWS)の大村歳一さん(28)は「100年前の大虐殺は、日本政府が朝鮮への侵略を続け、その中で抵抗する朝鮮人を虐殺し続ける過程で、多くの日本人が朝鮮人に対する民族的蔑視観や差別感情を抱く中で起きたこと。日本政府は虐殺の責任を今なお認めようとしていない。こうした無反省が、朝鮮民主主義人民共和国に対する一貫した敵視政策、そして、日本国内においては、植民地支配によって奪われた民族の尊厳、言語、歴史を取り戻すために作られた朝鮮学校に対する弾圧にあらわれている。私たちはここに集まった皆さんとともに、継続する日本の植民地主義に抵抗していきたい」と力を込めた。
実行委員の牛木未来さん(一橋大学社会学研究科修士2年)は、「日本政府が自ら責任を認めず、真相究明調査もせず、虐殺の事実を隠蔽し、歴史を記憶する動きさえも妨害をしている。それにより、虐殺された人々の遺族は、被害者がどこで誰の手によって殺され、遺骨はどこにあるのか、今でも知ることができていない。私たちはこのような事実が若い世代に伝えられず、日本人の若者自身が歴史の歪曲に加担していることに強い怒りと恥ずかしさを感じる。在日朝鮮人に対するヘイトクライム、朝鮮学校に対する差別は、日本人が朝鮮人に対して行ってきたことを本当に反省していれば決して起こらないこと。 他国の人々を傷つける日本の若者を育てるのをやめてください。私たちの要求が実現されるまで私たちは戦い続ける」と訴えた。
参加者の声
留学同京都の金伶虎さん(滋賀県立大学4年)は、今年3月に実際に虐殺現場のフィールドワークを行い、証言も学ぶ過程で「当時、関東に住んでいたら自分も同じように殺されていたのではないか」と感じたという。また、この日、実際にデモに参加し、日本人とともに訴え続けることの重要性を実感した。留学同京都ではトルパプロジェクトの一環として、10月にシンポジウムを企画している。「シンポジウムに向けて、在日朝鮮人学生や普段連携を取っている学生以外の日本の大学生ともより連帯を深めながら、関東に負けじと活動をしていきたい」と話した。
関東大震災時の虐殺について取り上げた「アイゴー展」に作品を展示したアーティストの牧園憲二さん(39)は、デモに参加してみて、「高校無償化制度の適用を訴えてデモを行う朝鮮学校の生徒や学生たちはこのような『視線』をいつも浴びているのか」と感じたという。牧園さんは、「僕は属性として加害の立場にいる。歴史は今に続いているし、関東大震災の歴史というのは自分の歴史だと思う。民族差別、そして朝鮮人差別は許してはいけない。差別や抑圧を無くすことが、自分自身を救うことにもつながっていると思うので、デモや作品、普段の友達との会話を通じてそれを伝えていきたい」と語った。(哲)
写真撮影=李鳳仁
「朝日大学生の団結力で状況打破を! 第2部・集会」