友の子に触れる
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先日、同級生とその子どもたちとお茶をした。かのじょは下の子の隣に、私は上の子の隣に座る。上の子と言ってもまだ3歳だ。とてもかわいらしくて(腕や頬をぷにぷにしたい)と手が伸びかけたが、触れる寸前に思いとどまった。イオ8月号に掲載されたエッセイの内容を思い出したのだ。
同胞社会に限られない話だとは思うが、SNSをみるとこどもの写真はバンバカ掲載されているし、赤ちゃんに会えば当然のようにベタベタとほっぺを触るようなおとなたちは多い。私だったら自分の写真が勝手にネットに上げられたり、いきなりだれかに身体を触られたりしたら、不愉快極まりない。こどもたちだって私たちおとなと同じくプライバシー権があるし、身体を侵されない権利があるはずだろう。(連載「言わせてもらっていいですか!EX」より)
子どもは養育されないと生きていけないし、それには肌の触れ合いも当然必須だが、一緒に暮らしている保護者(や普段から接点の多い親戚など)とそれ以外の人とでは立場が違う。
さらに私は子どもにも人見知りするので、保護者の代わりにしばし子守りをできるようなタイプでもない。その子とはまだ2~3回、短い時間しか会ったことがなく、子守りをしたわけでもないのに、こちらの好きなタイミングで一方的に触るのは道理に外れている…そう自戒した。
ここまでの一連の理屈を同級生に伝えた上で「本人に触ってもいいか訊いてみて、OKなら触らせてもらおうかなあ」と言うと「そうしたら」と笑った。
「○○(子どもの名前)、腕を触ってもいいですか」
(無言でコクリと頷く)
同級生と二人で笑ってしまう。「ありがとうございます」と言って、控えめに触らせてもらう。
「○○、ほっぺ触ってもいいですか」
(無言ながらも照れ笑いしてコクリと頷く)
また「ありがとう」と伝えて少しだけ触る。最後に同級生そっくりの、色素が薄く柔らかそうな髪に触れようとして「○○、髪も触っていいですか」と訊くと、その子が初めて首を横に振った。ハッとして同級生を顔を見合わせる。
もしかすると髪だけNGだったのかもしれないし、あるいは理由もなく腕や頬を触ってくる大人がだんだんと不気味に感じられて嫌になったのかもしれない。本意は伺い知れないものの、その子がはっきりと意思を表明したことに驚くとともに、やっぱり訊いてよかったんだと安心した。
(なんならその時はかわいさに夢中になっていて気づかなかったが、いま改めて文字に起こしてみると言葉で合意を取っているとはいえ、やっていることはセクハラと紙一重かもしれないなとすら思えてきた)。
子どもも当然、大人と対等の権利や意思を持っている。あどけない表情を前にするとつい忘れてしまいそうになるが、首を横に振った同級生の子どもの姿を思い出して何度でもそのことを意識したい。(理)