AIは士業を滅ぼす?― 人権協会全国オンライン交流会2023
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「在日本朝鮮人人権協会全国オンライン交流会2023」が9月30日、東京・上野の朝鮮商工会館と京都、大阪、福岡などの会場で行われ(オンライン含む)、金舜植会長をはじめ、各地の会員、同胞約100人が参加しました。人権協会会員の交流を目指した集まりは2021年以来のことです(対面交流会は2016年に開催)。
メタバース法律相談会
「聞きやすく、参加しやすい集まり」を目指した交流会は、日本各地の30、40代で実行委員会を結成し準備を進め、会員たちにとってタイムリーで切実な問題、同胞社会や朝鮮学校で解決が望まれているテーマが選定されました。
最初のテーマは、「AIの進化と士業の業務」。
尹美奈司法書士(兵庫)、朴賢憲さん(京都)が出演し、「メタバース(仮想空間)の基礎知識と活用方法について」と題して発表しました。
「企業間で交わす契約書をAI=人工知能を使って審査するサービスが、法律に触れるのではないかという懸念を受け、法務省は取引内容に争いのない契約はAIで審査しても問題ないとした初めての指針を公表した」(8月2日のNHKニュース)―。
朴さんは、AIが士業の仕事を代替する将来を暗示するニュースを紹介した後、AI、ChatGPT、メタバースについて、導入となる解説をしてくれました。
続くはメタバース法律相談会。実際に同胞たちがメタバースを利用しながら相続相談を行う様子が、映像と専門家たちの実況中継で伝えられ、注目を集めました。
河景浩弁護士は、「AIは士業を滅ぼすか」と題して発表。
「宮沢賢治の『雨にも負けず』の感想文を小学生の文章で」「寝坊した時の上司へのお詫び文」「法律相談テスト」などの指示を出しながら、人間と人工知能との対話を見せてくれた。
SNS活用と肖像権
続いて「SNS等を利用した朝鮮学校支援活動における法的諸問題」と題して、朴憲浩弁護士(九州)、郭勇祐弁護士(愛知)から報告がありました。
朴さんは、「SNSによる朝鮮学校支援は、イベント情報を投稿して各地の支援者や当事者と情報共有ができる。投稿のシェア、リツイートによって、いろんな層にアプローチができる」とその有用性を指摘しつつ、「危険性もはらんでいる」とし、「あらゆる人間が安価に、容易に情報にアクセスできることから、権利侵害が起きやすく、被害の拡大も容易だ」と警鐘を鳴らします。
そのうえで、被写体の肖像権侵害、学校法人のアイデンティティー権侵害、ネット上の攻撃を防ぐために、写真撮影を禁じたり、事前許可制にすることを提案しました。
「ウリハッキョにおける人権教育の実践から―多様性と制服について」のテーマで発表したのは、金李イスルさん(東京)と金梨美さん(九州)。
2018年から人権教育の一環としてジェンダーに関する出張授業を中高級部生、教員を対象に地道に続けてきたことや制服に関する意識を探った実践を発表しました。
性自認に合わせた制服への変更がなされたある学校の実例についても紹介され、「制服選択が自由になることでカミングアウトの必要性がなくなる。マイノリティーが集まる学校で、その中のマイノリティーが苦しくなってはならない。多様性が認められる同胞社会を目指していきたい」(金さん)との提案もなされました。
活発な地域活動
最後は、東京、大阪、兵庫、九州、東海など、地方団体から活動報告です。
各地の報告ではコロナ禍でも地域に根差した法律相談や朝鮮学校生徒向けの授業が続けられたこと、大学の推薦入試における朝高卒業生の受験資格に関する調査(兵庫)やMBSラジオにおける朝鮮学校差別発言への是正を求める働きかけなど、在日朝鮮人の権利向上を促すうえで意義のある実践が共有されました。(瑛)