大阪中高で学術文化祭「with U」!
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大阪朝鮮中高級学校(金采玹校長、東大阪市)で11月26日、学術文化祭「with U」が行われ、約1000人の同胞や日本市民でにぎわった。創立70周年に際して、「U-FIELD」という理念を掲げ、学校づくりを進めてきた大阪中高。
学術文化祭は、以下、「5つのU」を実現するための教育実践活動として、開催された。
Unity 知恵と力を合わせる集団文化とスピリッツ、統一時代をひらく教育を
Unique 唯一無二の民族的価値、ユニークさと個性あふれるアイデンティティを
Universal 世界を正しく見すえ、世界とわたりあう力を
Utility 同胞社会のニーズにこたえる、多様で有用な能力を
Upgrade 同胞社会の未来を輝かせるため、教育のアップグレートを
1部の一般公開授業では、1時限目は国語(朝鮮語)、英語、理科、社会、歴史(中級部)、物理基礎、数学、生物、化学、社会、国語、現代史、英語(高級部)の授業が公開された。
目玉は初の試み「多学科総合探究」の発表だ。
探究学習とは、生徒たちが課題の設定、調査、整理、まとめを繰り返しながら、自分なりの答えを見出す学習活動で、中2は、「お金とは何か? その意味と価値」「音と色が人々に与える影響」、中3は、「全国の日本の方々にウリハッキョを知らせる方法とは?」「果汁1%に秘められた秘密」、高1は、「映画を分析してみよう!」「ストレスとは? 現代社会に潜むストレス」、高2は「世界のリーダー? G7? 世界の動きについて探究してみよう!」「社会に蔓延するルッキズムについて」をテーマにしたレポートを発表した。
ストレスについて調査・報告をした高1の生徒たちは、同校の高校生100人から集めたアンケートをもとに、朝高生のストレスについて分析を行った。
アンケートの結果、一番ストレスを感じていたのは高3で、その原因は①勉強、②友人関係や日常生活、③学校生活、自分の思い通りにならないこと―など。「受験勉強で好きなことができない」「結果がついてこない」「受験のことで頭がいっぱい」といった肉声も紹介した。
一方で、ストレス要因の「友人関係」「日常生活」「思い通りにならない」―の3要因について1回のアンケートでは具体的にわからなかったため、「SNSの利用」に限定してアンケートを実施。98%の生徒がSNSを利用しており、そのうち「SNS利用によって劣等感を感じたことがある」と答えた生徒が、高1で37%、高2で59%、高3で23%との結果が出たと明かした。
加えて、女子は外見、男子はお金や能力への劣等感を感じる傾向があったとも。一方で、日本の高校生に比べて朝高生はストレスが少ない現象についても発表した(「自分は自分、他人は他人と分けているから」など)。
最後に「今後の課題」は、ストレスを感じやすい生徒に共通する特性に関する調査、ストレス対処法について調べることだと伝えていた。
探究学習は、まず教員たちがグループ別に議論をしてテーマを決めた後、生徒たちに簡単な講義を行ったうえで進めてきたという。
夫才修教務部長(44)は、「この学習の目的は、自然界の事象や社会的課題に対して、問題意識を持ち、考えを深められる人材を育てること。課題を自ら見つけ、関連資料を収集する力や姿勢、学科にこだわらず横断的・総合的に考える力を育てたい。そのためにも、学ぶことの楽しさを授けたかった」と話す。今回の経験を来年度にも生かし、レベルアップをはかりたいという。
2部の文化芸術公演では、合唱「ハムケ(ともに)」、朝鮮舞踊「ホウセンカの花遊び」、4言語発表舞台「子どもたちよ、これがウリハッキョだ 2023」、寸劇「withUレンジャー」、男女混合舞踊「オンヘヤ」、演奏と歌「オルシグ チョンネ 大阪中高」、四季折々のチョゴリ披露など、笑いあり感動ありのステージが繰り広げられ、保護者や同胞たちが生徒たちに大きな拍手を送っていた。
4言語発表舞台では、12年前に同校生徒が作った詩をリライトした、「子どもたちよ、これがウリハッキョだ 2023」を披露。朝鮮学校が制度的な差別を受けるなかでも屈せずにふんばろうとする生徒たちの気持ちが素朴な言葉で綴られ、感動を呼んでいた。2023年度から選択科目となった中国語による発表や、中国のヒット曲の披露もあり新鮮な構成が目を引いた。
3部は文化祭。学年別のど自慢や漫才など、生徒たち手作りの舞台が繰り広げられるなか、同校のオモニ会、生徒たちが設けた売店がズラリと並ぶ―。
同校オモニ会は校舎移転時に新しい机と椅子をプレゼントしようと、募金活動を進めてきた。
梁淑子会長(45)は、「6月からお盆休み以外は同胞の集まりだけでなく、地域の祭りなどで販売を続けてきました。オモニ会ががんばっているからと女性同盟の顧問やオモニ会のOGが募金をしてくれ、胸が熱くなったことが一度や二度ではなかった。今こそ民族教育を守るための大衆運動が必要だと思います」と熱く語る。
学術文化祭「with U」は、晴天のなか、大阪中高の「今」を伝える楽しいイベントとなった。(瑛)