笑い85%、涙15%-素晴らしかったタルオルムのマダン劇「ウトロ」
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9日の土曜日に東京朝鮮第4初中級学校(足立区)に行ってきました。
劇団タルオルムのマダン劇「ウトロ」を観るためです。4年前に同じ第4ハッキョでタルオルムの一人芝居「チマチョゴリ」を観ましたが、私がタルオルムの演劇を観るのはそれ以来です。
タイトルのとおり京都府宇治市にある朝鮮人集住地域「ウトロ」が物語の舞台です。
パンフレットに原案:ちゃんへん.と明記されています。ちゃんへん.さんの著書『ぼくは挑戦人』の内容などを原案にしてタルオルムの代表の金民樹さんが作・演出をしています。
観に行った目的は、代表の金民樹さん、そして出演した副団長の卞怜奈さん(怪演でした)に久しぶりに会いたかったということもありました。
さて、マダン劇ですが、笑いあり(85%)、涙あり(15%)の素晴らしい舞台でした。マダン劇ということで、途中途中で容赦なく観客が舞台に連れ出され、劇に参加させられます。それも楽しかった。
主人公のヨンチャンが中学で壮絶ないじめを受けたときオモニが学校に乗り込んでいく話。夢を実現するために渡米を決意しオモニがヨンチャンの国籍を「韓国」に変えることを認めてもらおうとしたときの祖父母とのエピソード。ウトロを守るための住民たちの闘いの姿…。
主人公の様々なエピソードとウトロの歴史が折り重なり、重厚でかつ、先ほど書いたように笑いあり涙ありで、観客も一緒になって素晴らしい空間を作り上げていました。
ウトロ地区は解放前、飛行場建設に駆り出された朝鮮人が解放後も住み着いて集落地を形成しました。しかし、水道も1988年までなく、大雨の時には浸水が頻繁に起こる劣悪な環境でした。
その後、1987年に所有していた日産車体が住民を無視して土地を売却したことで長い闘いが始まりました。裁判闘争では住民が敗訴しますが多くの支援の中で市営住宅が建てられるなど、同胞たちの生活はなんとか守られました。
2022年にはウトロ平和祈念館が開館しています。
この日は午前、14時、18時と3公演が行われましたが、午前の公演は東京の朝鮮学校中級部生徒たちを無料招待してのものでした。
ウトロは在日朝鮮人の歴史のなかの重要な部分の一つです。今回、生徒たちはマダン劇という形で多くのことを学んだのではないでしょうか。
マダン劇「ウトロ」は宇治市のウトロ地区でも上演されています。ウトロの住民たちの息づかいを感じながら観てみたいと思いました。(k)